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最悪のエンカウント

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今日は一人でショッピングモールに来ていた。父さんと母さんは家でゆっくりしている。帰りにお土産としてケーキでも買って帰ろう。

家の近くのショッピングモールはかなり大きいもので、中高生など若者が多い。夏休みだからか心なしかいつもより賑わっているように感じる。

一目も気にせず、気ままに行きたいところ、見たいものを回っていく。
特に買いたいものもなかったから収穫もなく、お昼時になってしまった。

「どうしよう…どこも混んでるしなぁ。」

お腹が空いているけどどこもいっぱいで入るのには時間がかかりそうだ。

「あれ?栄人?」

途方に暮れていると俺の名前を呼ぶ声がして振り返ると………

「宗也!?どうしてここに…」

そう我らが生徒会庶務が仁王立ちしていた。ちょっと盛ったわ、そこにいた。

「ここ、家の分家の家から近くてちょうど買い出しに来てたんだ。」

分家って…かなりのお家柄だと改めて思う。忘れがちであるが、あの王道学園はお坊ちゃま学園とも言われているほどお金持ちの家の子供が多い。宗也もそうだけど多分他の生徒会のメンバーも相当なのだろう。風紀もしかり。

「そ、そっか。お疲れ。」

「栄人は?どうしたんだ、1人で。」

「あぁ、俺は帰省したから気分転換でもしようかと思って来てたんだ。お昼時でご飯どうしようか迷ってた感じなんだけど…」

「俺も……良かったら一緒に食べるか?」

「え、いいのか?誰かご家族の方とかは…」

「別に気にしなくていい。さ、行くぞ。」

そのまま促されるがまま宗也の歩く後ろを金魚の糞の様について歩いていると…

「あれ?栄人じゃね?」
「うっわ!マジじゃん!」
「やべぇ、萎えるわぁ。」

そんな声が聞こえてきたが無視をする。今は宗也といるし気にするほどのものでもない。

「え、無視?ガン無視じゃん、ウケる!」
「マジ何様だよな。」
「まぁ、仕方なくね?そういう奴じゃん。自分の立場が悪くなったら無視する的な。」

今の俺は何を言われても気にしない。あんな奴らは関係ないし。

「栄人……」

宗也に呼ばれて顔を見上げると、何て声を掛けたらいいか分からないとでもいうような顔をして心配げにこちらを見ていた。

「あ~気になるよな?ごめん、変なこと聞かせて。取りあえずどっか食べれるとこ入ろう。」

頑固として雑音が聞こえる方は振り返らず話す。

「あれぇ~?こいついっちょ前に友達連れてんじゃん、ウケる!」

なんもウケねぇわ。そんなにウケるならずっと笑っとけ。

「こいつに友達とかなんかの間違いじゃね?どうせケツでも売ったんじゃねぇの?」

今の言葉を聞いて宗也が何を思ったのかは分からないけど、軽蔑とかされるんかな。
 
 ダンっ

思わぬ音に振り向くと、宗也が今話していた野郎の横に足蹴りをしていた。所謂、足で壁ドン的な?

「耳障りだ、失せろ。」

いつもより何オクターブも低い声でそう告げた宗也を見て、謎の絡みをしてきていた3人衆はそそくさと去っていった。


すると、宗也はクルッと回って俺の方を見て「来い。」とだけ言って歩き出す。


え、なになに?怖いんだが、これ逃げたらマズいか?




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