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淑女の鏡
しおりを挟むお茶の時間が終わったアミリアス達はその場で別れる。
アミリアスは、この頃忙しくなってきた王妃教育と実家の手伝いで疲労が蓄積されていることを感じる。
「早く帰った方がいいわよね。」
そう呟き足を進めようとすると、クラリと目まいが起き思わず校舎の壁に手をつき身体を支えるように体勢を保つ。だんだん息苦しさや頭重感も出てきて、立ったままの体勢を保つことさえ難しくなってきた。
その様子をちょうど後ろを歩いていたキートリアは、アミリアスの異変を感じる。
キートリアは次期宰相候補であり、現宰相を父にもつ侯爵家嫡男である。透き通った水色の髪と目を持つ美男子である。
公務や実家の手伝いをしているアミリアスとは財政のことや国のことで話し合う機会が多く、謂わばビジネスパートナーのようなものだ。キートリアは才女と謳われるアミリアスのことを理解力や仕事が早いことから、よきビジネスパートナーだと思っている。
そして、どんな時でも淑女に姿勢を崩さないため前を歩いていたアミリアスが壁に手をつき、猫背になっていく様子に異常事態だと気づく。急いで手を貸し保健室へ連れて行こうと思い、声を掛けようとすると、先を越される。
「アミリアス様じゃありませんか。ご機嫌麗しゅう。確かロイド殿下の婚約者様でしたっけ?」
そう巷で話題のローゼ男爵令嬢である。ワインレッドのような髪と瞳を持ち、ロイドに向かって上目遣いをしている。ロイドは金髪碧眼でそんなローゼに向かって何を考えているか分からない表情で見ている。
キートリアはロイドに向かって誰もが知っている周知の事実をわざわざ確認するローゼになんとなく不快感を感じる。
キートリアはハッと思い出したようにアミリアスの方を見ると、先ほどの様子とは打って変わっていつも通りの背筋がピンッと伸びた美しい姿勢をしていた。さっきの異変は何だったのだろうかと困惑するキートリアをよそに3人の会話は進んでいく。
「あぁ、そうだが…それがどうした?」
ロイドはローゼの質問の意図に気づかず首を傾げる。
「いえ、一応確認ですわ。ロイド殿下、少しアミリアス様と二人でお話しがしたいので先に行っていただいてもよろしいでしょうか?」
「構わないが…いや、何でもない。では先に行っておく。」
ロイドはそれだけ残してその場を後にした。
ローゼはロイドがいなくなったことを確認すると、アミリアスに向かって話始める。
キートリアはアミリアスの様子が気になるがその場を見守る。
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