【完結】腐女子の私が美少年⁉

呪いは?⑴

あのキスの事件から、私は心を無にしてジルの護衛をしている。クレマさんとのキスとはわけが違うのだ。
ジルは何事もなかったかのように接してくるから、若干拍子抜けする。

こんなに心の中が荒れてるのは私だけなんだ。

でもでも、顔見たら恥ずかしくなっちゃうのは仕方ないよね。慣れてないことだもん、思い出したら恥ずかしくなるに決まってる！


悶々としながら後ろに控えていることに、目の前の皇子は気づいているのだろうか。気づかれててもなんかヤダな。
矛盾した考えをグルグルと頭の中で回しながら、周囲を警戒しているあたり、私って結構すごいのではと自画自賛してみる。

今は休み時間で次の移動教室の授業のため、廊下に出てる。帝国唯一の皇子であることから、ジルはかなり有名だし人気も高い。ひとたび廊下を歩けば黄色い視線が飛び交い、人の波が押し寄せる。学生と言うこともあり、敵意を持って近づく者はいないため警戒を緩めているが、行き過ぎた行為は時には敵意にもなり得る。学生と言えども、侮ることなかれ。って感じなのだ。

「ジル様、今日は私とお昼をご一緒しませんか？」

「では、私とお茶を…」

「今度私の開くお茶会に是非ご招待させていただきたいのですが。」

まぁ、見てのとおりご令嬢が大半を占める。綺麗に着飾った見た目とは裏腹に、その眼は獲物をロックオンした捕食者の目をしている。私には、暗殺者とかよりこっちの方がよっぽど怖いんだけど。

もちろんジルだけでなく、バルもまた例にもれずロックオンの対象なのだ。私は美少年顔すぎるのか、話しかけてきてくれる人はほとんどいないため、二人の背後に仕えて目を光らせているのだ。これが学園生活の日常。

「ほら、皆さん早くしないと授業に遅れますよ。」

ふと艶のある重低音ヴォイスが聞こえてくる。あ、この声はシャーライ先生。

「はーい。」

シャーライ先生のその言葉に対して、生徒はみな口々に返事をすると各々の教室へ戻って行く。

「？」

そこでふと疑問に思う。普通の生徒と先生の間柄ならよく見かける光景だと思う。でも、シャーライ先生はその普通からはかけ離れているはずだった。そう、愛されし子と言う呪いのステータスがあるから。

今までだったら、すぐさま生徒達に絡まれていたのに、どうしてか今日は生徒に囲まれることもなく教室へ誘導出来ている。




何があったんだろう？呪いが解かれることってあるのかな？