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戦いの火蓋は切って落とされる
しおりを挟む睨み合っていたジルとバル。なんか名前も似てるし兄弟みたい。
「是非バルとお呼びください。ナオとお呼びしても?」
「もちろん。呼びやすい呼び方で大丈夫ですよ。」
バルに言われる前から名前が長くてもう愛称で呼んじゃってたのは秘密。ジルとの睨み合いがなければ物腰柔らかそうな好青年に見えていた。でも、私は騙されない。と言うより、この国の皇太子にあんな見下した顔をする人が好青年なわけがない。
今日はバルも含めて三人で遊ぶらしい。皇太子に次期宰相、騎士団長の息子という錚々たる顔ぶれで遊ぶ内容は何なのか、遊ぶ私自身も気になるわ。
「じゃあナオ、今日は何をしようか?」
あ、それを私に振るんですね。私も気になってたんだけど。
「ん~三人で遊べるもの…かぁ…あ、ひたすら死んだふりが上手い人が勝ちのゲームはどう?」
私は訓練の時以外はひたすら寝たいんだ。物理的に寝られるゲームを提案するも……
「それ、ナオが寝たいだけだよね?バルにナオの寝顔なんて見せられない。却下。」
私の下心もバレてるし、よく分からない理由で却下される。でも、ジルだって私の寝顔見たことないよね?
「では、これはどうでしょう。」
「お前には聞いてないかな、バル。」
「そうですか。でもナオが困っていらっしゃるので僭越ながら私がご提案をと思いまして…」
何やらバチバチしている二人。これ、私お邪魔じゃない?だってこんな喧嘩ップルがいるなんて。まぁ美味しいから真近で見させてもらうけど!
それで、この喧嘩はいつまで続くんだろうか…もうさすがの私も飽きたよ…
気配を決してそろりと部屋からの脱出を試みる。まぁこの年で気配を感じられる子なんてそうそういないでしょ。これもクレマさんに鍛えて貰った賜物だ。
誰にも気づかれないまま、喧嘩ップルを置いて王城を後にする。騒ぎになったら大変だから置手紙を残して…
「ナオ!やはり私も一緒に考えます。この輩は置いておいて、二人で決めましょう…って、え…?」
「ナオ、やっぱり今日は予定通り二人で遊ぼう!…ナオ?ナオ…ナオ!!どこ行ったんだ?」
因縁の対決とばかりに火花を散らしていた二人は、やっとそれぞれがそれぞれの解決策に落ち着いて、ナオがいたであろう場所を振り向くと……残り香すらないほどに忽然と姿を消している。
そしてその床には――――――
『二人が楽しそうだから、先に帰らせてもらうね。また今度遊ぼう! Byナオ』
と認められた置手紙が一枚。
彼の見た目からも伺える、繊細かつ儚げな美しさを持つ文字の羅列。その置手紙が、またしても戦いの火蓋を切る代物になるとは思いもしないナオだった。
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