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お初にお目に掛かります
しおりを挟むあれから1年がたった。私は10歳になり幼いながらに実力は中々のもので団員と同じ訓練をするようになってからは任務を一緒に行うようになった。そう、私は9歳ながらにして騎士団に所属したのだ。危険な場面にも何度も遭遇したが、団員が誰も掛けることなく今まで来れている。
だが、今ほど身の危険を感じたことはない。
周りにいるのは虎視眈々と獲物を狙う捕食者の眼をした令嬢からの視線があちらこちらから突き刺さる。
「ナオ、任務の時より緊張してないか?肩の力を抜くと良い。あくまで学園へ入学する前の親睦会のようなものだから、誰も取って食ったりはしないだろう…居たとしても俺が始末するから気にせず過ごすと良い。」
そうなのだ、私は今お茶会とやらに来ているのだ。煌びやかな衣装で着飾った男女が楽しそうに談笑しているのを横目で見ながら私は考える。
なんで私がこんな所に…本当だったら今日は前々から考えていた魔法をロマンさんと試してみる予定だったのに。
「うん、クレマさんありがとう。でも、その前に挨拶しに行かないとだよね。皇后様に。」
詳しいお茶会のルールは知らないが、一応主催者にあたる人には一番初めに挨拶している人が多い。
騎士団長のクレマンさんがどれほどの地位にあたるかは考えたこともなかったが、学園に入学できる子供と親の集まり、つまりは貴族が多いと考えられるこの場での先の発言から考えるに上から数えた方が早いのだろう。
「挨拶など別にしなくても…そうだな、ナオに響いても嫌だし一応しておこうか。」
そう言ってクレマさんは私の手を引くとひと際人口密度の多いところへ、そのままダイブする。
するとモーゼのように人が左右に掃けていく。おぉ、ストレスフリー。
そしてそこの中心人物であろう人に対して、礼もせずフランクに話しかけるクレマさん。
「久しいな。子どものだめに一応挨拶をと思ってな。」
「挨拶をと思っているならちゃんと挨拶したらどうなの。まぁ、あなたに何か言ったところで意味なわよね。それで?今日こそあの騎士団の天使と名高いあなたの息子を紹介してくれるのよね。」
恐らく皇后様だと思われる美女はクレマさんの態度に呆れこそすれ、咎めるようなことはなかった。
「あぁ、不本意だがな。非常に不本意だが仕方がない。息子のナオだ。」
「お初にお目にかかります。ナオ=デシャンです。」
左胸に手をあて、左足を後ろに下げ、顎を少し引き挨拶をする。ロマンさんに正式な挨拶を習ってて良かった。
「まぁ、可愛らしい。しっかりとした子ね。私はミュリエル・デ=ガバリアよ。会えて嬉しいわ。いつもお父さんにはお世話になっているの。ぜひこれからもよろしくね。」
そう言って皇后様は綺麗に微笑んだ。
「これからもそんなによろしくすることはないでしょう。では、これにて失礼します。」
「あら、お待ちになって。折角だからうちの息子も紹介させてちょうだい。ジルいらっしゃい。」
「あ、おい。皇子に紹介するなんて言ってないぞ。」
「はい、ジル・アンドレ=ガバリアです。以後お見知りおきを。」
クレマさんの反抗も虚しく、皇后に呼ばれた金髪蒼眼これまた美少年の皇子はこちへ近づき真っ直ぐ私を見ながら自己紹介をした。
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