23 / 24
23.
しおりを挟む俺とティオは二日かけて王都へとやってきた。
「すごい人です……」
ティオは、王都の人通りの多さに驚く。
俺は王都にくるのは初めてではなかったが、それでもやはり人の多さには圧倒される。
説明されなくても、ここがこの大陸の中心地なのだとよくわかる。
「さて、ギルドに行くか」
王都は広い。それゆえ、大小いくつかのギルドがあるが、俺たちが目指すのは一番大きく歴史がある王立ギルドだった。
俺たちは、地図を頼りにギルドへと向かった。そして、その建物には10分ほどでたどり着いた。
「――で、でかいな……」
王立ギルドは、他のギルドとは比べ物にならない大きさだった。
建物は3階建で、武器を携えた冒険者たちが吸い込まれるように入っていく。
俺たちは、一度顔を見合わせてから、恐る恐る中に入っていく。
――さすが国一番のギルドだ。
そこにいる冒険者たちは、どこか顔つきが他とは違う。明らかにツワモノが集まっていると直感でわかった。
俺たちはキョロキョロ辺りを見渡して、登録の受付窓口を見つける。
――事務手続き専用の受付があること自体、驚きだ。
育った街のギルドは、受付は一つで、全ての事務をそこで一人のお姉さんがこなしていた。
王立ギルドがいかに栄えているかよくわかる。
「すみません、冒険者登録をしたいんですが……」
俺が言うと、受付のお姉さんが笑顔で対応してくれる。
「それでは、こちらの書類に必要事項をご記載ください。そのあと、試験会場にご案内しますね。今日は他にも新規の方がいらっしゃるので、その方の後に試験を受けていただきます」
「わかりました」
俺は書類に必要事項を記載して、お姉さんに渡す。
「それでは、あちらにお進みください」
受付のお姉さんに、ギルドの建物の奥に向かうように指示される。
建物の裏は、かなり広い中庭のようになっていた。
おそらくここで実技試験や実技講習を行うのだろう。
――と。
そこには、先ほどお姉さんが言っていた「他の新規の方」がいた。
その顔を見て、俺は驚く。
そして、それは相手も同じだったようである。
「マルコム……!」
「レイ……!」
異母弟であるマルコム。
俺が家から追い出された今、レノックス公爵家の跡継ぎとなった男である。
後ろには、マルコムのパーティメンバーの二人がいた。
一人は、元々は神託の日に公爵が俺のためにと購入した黒エルフのアラベラ。
もう一人は、見知らぬ槍使いの男だった。
「なんでお前がここに」
マルコムが俺にそう聞いてくる。
「何って、試験を受けに来たんだが」
俺が言うと、マルコムは高笑いした。
「はは! 悪い冗談だな。<外れスキル>しか持ってないお前が、王立ギルドに? よしとけって」
俺は、マルコムの言葉に、もはや反論したいとも思わなかった。
もうあの家とは縁を切ったのだ。
別に気にしてやる必要はない。
――と、横から一人の男が声をかけてくる。
「新規登録希望のみなさま、今日はよろしくお願いします」
剣を携えた男。
中肉中背の男で、もし遠くから外見だけ見たら、特別強そうには見えないだろう。
しかし近くで見るとその強さはすぐにわかった。
立ち振る舞いに全く隙がない。
「初めまして。私が皆様の試験官を勤めさせていただきます、クロノと申します」
クロノと名乗った男は、冒険者登録のために集まった俺たちに軽く会釈をした。
「それでは、早速ですが、お一人づつ、手合わせをさせていただきます。それで、私が実力を測らせていただきます。それでは、まず先着のマルコム様から」
そう言うと、マルコムが一歩前に出る。
「手加減するけど、無理だったら怪我させちまうぞ? 大丈夫か?」
胸を張ってそう言うマルコム。
だが、クロノは特に表情を崩さず「ええ、問題ないです」とだけ答えた。
横から、ギルドの職員が説明する。
「クロノ様は、当ギルドの冒険者の中でも最強の一人でして、当然ランクはAランクです。相手にとって不足はないかと」
と、職員の説明にマルコムはふん、と鼻息を鳴らした。
――マルコムは、男の強さに気がついてはいない。
果たしてどうなるか。
「それでは、早速テストを開始しましょう」
0
お気に入りに追加
1,395
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
チートスキルで無自覚無双 ~ゴミスキルばかり入手したと思ってましたが実は最強でした~
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
北野悠人は世界に突如現れたスキルガチャを引いたが、外れスキルしか手に入らなかった……と思っていた。
が、実は彼が引いていたのは世界最強のスキルばかりだった。
災厄級魔物の討伐、その素材を用いてチートアイテムを作る錬金術、アイテムを更に規格外なものに昇華させる付与術。
何でも全て自分でできてしまう彼は、自分でも気づかないうちに圧倒的存在に成り上がってしまう。
※小説家になろうでも連載してます(最高ジャンル別1位)
その無能、実は世界最強の魔法使い 〜無能と蔑まれ、貴族家から追い出されたが、ギフト《転生者》が覚醒して前世の能力が蘇った〜
蒼乃白兎
ファンタジー
15歳になると、人々は女神様からギフトを授かる。
しかし、アルマはギフトを何も授かることは出来ず、実家の伯爵家から無能と蔑まれ、追い出されてしまう。
だが実はアルマはギフトを授からなかった訳では無かった。
アルマは既にギフト《転生者》を所持していたのだ──。
実家から追い出された直後にギフト《転生者》が発動し、アルマは前世の能力を取り戻す。
その能力はあまりにも大きく、アルマは一瞬にして世界最強の魔法使いになってしまった。
なにせアルマはギフト《転生者》の能力を最大限に発揮するために、一度目の人生を全て魔法の探究に捧げていたのだから。
無能と蔑まれた男の大逆転が今、始まる。
アルマは前世で極めた魔法を利用し、実家を超える大貴族へと成り上がっていくのだった。
勇者に恋人寝取られ、悪評付きでパーティーを追放された俺、燃えた実家の道具屋を世界一にして勇者共を見下す
大小判
ファンタジー
平民同然の男爵家嫡子にして魔道具職人のローランは、旅に不慣れな勇者と四人の聖女を支えるべく勇者パーティーに加入するが、いけ好かない勇者アレンに義妹である治癒の聖女は心を奪われ、恋人であり、魔術の聖女である幼馴染を寝取られてしまう。
その上、何の非もなくパーティーに貢献していたローランを追放するために、勇者たちによって役立たずで勇者の恋人を寝取る最低男の悪評を世間に流されてしまった。
地元以外の冒険者ギルドからの信頼を失い、怒りと失望、悲しみで頭の整理が追い付かず、抜け殻状態で帰郷した彼に更なる追い打ちとして、将来継ぐはずだった実家の道具屋が、爵位証明書と両親もろとも炎上。
失意のどん底に立たされたローランだったが、 両親の葬式の日に義妹と幼馴染が王都で呑気に勇者との結婚披露宴パレードなるものを開催していたと知って怒りが爆発。
「勇者パーティ―全員、俺に泣いて土下座するくらい成り上がってやる!!」
そんな決意を固めてから一年ちょっと。成人を迎えた日に希少な鉱物や植物が無限に湧き出る不思議な土地の権利書と、現在の魔道具製造技術を根底から覆す神秘の合成釜が父の遺産としてローランに継承されることとなる。
この二つを使って世界一の道具屋になってやると意気込むローラン。しかし、彼の自分自身も自覚していなかった能力と父の遺産は世界各地で目を付けられ、勇者に大国、魔王に女神と、ローランを引き込んだり排除したりする動きに巻き込まれる羽目に
これは世界一の道具屋を目指す青年が、爽快な生産チートで主に勇者とか聖女とかを嘲笑いながら邪魔する者を薙ぎ払い、栄光を掴む痛快な物語。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる