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18.
しおりを挟む俺とティオは、Dランクのダンジョンへやってくる。
すでに攻略済のダンジョンで、弱いモンスターしか出てこない。
冒険初心者のティオが訓練するにはうってつけの場所だ。
ちなみに、武器屋のおじさんに、そのままだと俺のステータスが高すぎて、ティオが倒せるくらいのモンスターが現れないというアドバイスをもらった。
確かに、前にダンジョンに入ったときあまりモンスターが現れなかったので納得だ。
なので、対策としてステータスを隠すお守りを売ってもらった。
これで、下級モンスターとも遭遇できるはずだ。
「最初は怖いと思うけど、服に防御魔法がかかってるから、よほど連続で攻撃を受け続けないと痛くもかゆくもないから安心して」
「は、はい!」
と、ダンジョンの中に入って入り口でそんな風に話していると、早速廊下の向こうからモンスターが現れた。
低級モンスターの代表格とも言える、スライム。
あれならほとんど無害なので最初の相手にはちょうどいいだろう。
「よし、まずはあれを斬ってみよう」
「はい!」
そう言うとティオは、向かってくるスライムをむかえうち、剣を斜め後ろに引いて、おお振りの一撃を食らわせる。
「――はッ!!!」
脇が甘い一撃だったが、“ゴミ強化”で強化された剣の威力は凄まじく、スライムは一刀両断されて、そのまま四散した。
「やったぁ!」
――自画自賛になってしまうが、“ゴミ強化”で100倍に強化された剣はやはりかなりの力があるようだ。
これは武器屋に頼んで自分用にも一本磨いてもらおう。
「よくやった。筋がいいな」
俺が言うと、ティオは破顔して喜ぶ。
「ほんとですか!?」
もちろんティオの戦闘能力は皆無に等しく、スライムを一撃で倒せたのは剣の力によるところなのだが、それをわざわざ指摘することに意味はない。
それよりも「できる」という自信をつけてもらう方が有意義だ。
「じゃぁ次行こうか」
「はいっ!」
と言うわけでさらにダンジョンを進むと、今度はゴブリンと出くわす。
人型で武器を持っており、しかもスライムより大きいので、初心者にはかなり怖い敵だろう。
しかし、ティオはスライムで自信をつけたのか、恐れることなくまっすぐ斬りかかっていく。
「はぁぁ!!!!」
再び、ティオの一撃がゴブリンに命中し、一撃で倒す。
「やりました!」
とティオは満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
その様子は、まるでフリスビーを持って帰ってくる犬のようで、可愛い。
俺はちょうどいい高さにあったので、その頭を撫でてあげる。
すると、急にティオの表情は真っ赤になった。
「ご、ご主人様……わ、私なんかの頭を……」
そう言われて、俺はすぐに手を引っ込める。
「あ、ごめん。嫌だったか」
「い、いやじゃないです。でも、ご主人様の手が汚れてしまいます」
俺はようやく理解した。そうか、世間にはキメラを野蛮なものとみなして、汚いだ、臭いだと差別する人間がいる。
彼女が生きてきたのは、そんな世界なのだ。
だけど、そんな考えは間違っている。
「絶対にそんなことはない」
俺はそう断言した。
「……ほんとですか?」
ティオは上目遣いに見てくる。
「ああ、もちろん」
それで俺はもう一度頭の後ろに手を置いてそっと撫でた。
ティオは、目を細めて、心なしかツノをシナっと前に傾けさせた。
「よし、もう少し先に行こうか」
「はい!」
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