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しおりを挟む翌朝、改めて村長がやってきてお礼を言ってくれた。
そして昼から村人全員を集めて宴を催してくれる。
子供から大人まで、順番に俺にお礼を言いきてくれた。
「本当に、レイ様のおかげでこの村は救われました。この事実は、永遠に語り継いで参ります」
俺は少し恐縮しながら「いえ、そんな……」と頭を下げる。
「本当は、金品でお礼をしたいところですが、残念ながらこの村は貧しく、大したものは用意できません。本当に申し訳ありません」
そう言って村長はさらに深々と頭を下げてきた。
「いえいえ、そんな。全然いいんですよ」
「たったこれだけしかできず、心苦しいばかりです」
「寝床を貸してくれて、ご飯まで用意していただいて、本当に助かりました」
貧しい村では、この宴だって決して楽に行われているわけではないだろう。それでも、そんな表情一つ見せず、俺を歓待してくれることがありがたかった。
だから、逆に何か力になれればいいのだが……
「……ところで、村長。村に何か壊れたものとかありませんか? それをちょっと貸して欲しいのですが」
俺は村長にそう尋ねた。
「壊れた……ものですか?」
「ええ、ちょっと“ゴミの強化”が得意技でして……。もしかしたら直せるかなと思いまして」
俺は、神から与えられたユニークスキル“ゴミ強化”の力を、改めて試してみたくなったのだ。
おそらく、俺の考えが間違いでなければ、ゴミ強化のスキルにゴミ強化のステータス強化がかかって、ゴミのステータスを100倍にできる力になっているはずだ。
ただの凡人だった俺が、いきなり高レベルモンスターを瞬殺できたのだから、同じようにただのゴミでも、普通のアイテムくらいにはなるかもしれない。
「それでしたら、錆びたくわなどでしょうか……」
そう言うと、村長は若い者に指示をして、錆びたくわを持ってこさせた。
一面茶色に錆びついて、刃はかけており、到底使えたものではないだろう。確かに、まごうことなきゴミだ。
それを俺は受け取って、スキルを使ってみる。
「――“ゴミ強化”」
すると、くわが光り輝く。
――見た目は、さほど変わらない。
だが。
「ちょっと、あの辺でこれを使って見てもらえますか?」
俺は錆びたクワを持って来てくれた若者に、そうお願いした。彼は素直に少し離れたところに行き、くわを地面に向かって軽く突き刺した。
すると、
――ドカンッ!!
爆音がして、地面に穴が空いた。
「こ、これは!?」
村人たちが驚きの声をあげる。
スキルを使った張本人である俺も驚いた。
――クワが、まるで魔道具のように強力なアイテムに変わってしまったようだ。
やはり、ゴミであれば、ステータスを100倍に強化できるようだ。
「い、一体、何をされたんですか。あの者は魔法など使えませんが……」
村長が腰を抜かしたという声で聞いてきた。
「いや……まぁただのステータス強化……ですかね? ……多分これだと畑は耕せないでしょうから、モンスターに襲われたら使ってみてください」
あまりに強力になりすぎて、武器になってしまった。
だがまぁ、モンスターを撃退できると思えば、結果オーライだろう。
「――ありがとうございます。これは村の宝にいたします」
……ゴミが宝になってしまった。
そして俺は気がつく。
もしかして、“ゴミ強化”って結構使い道あるのか?
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