43 / 48
第五話 商人の追放者
3.
しおりを挟む
†
ロイド男爵は、牢から解放された瞬間、エリスに今売ることができる塩の量を聞いてきた。
その量がかなりものもであることを知ると、すぐに旅の許可を求めた。
「塩を高く買ってくれそうな人のあてがあります。彼らに売りに行きます」
「では、馬を用意させます」
「すぐに話をまとめてきますよ!」
ロイド男爵は意気揚々とそう言った。
戦争に負けて全てを失った40代の貴族――には全く見えなかった。
まるで、夢を追って旅する青年のようだった。
それを見てキバは、自らの仕えている人物は、やはり君主の器なのだと思った。
君主に必要なのは、知性でも、武才でも、内政を仕切る力でも、外交の能力でもない。
人を集め、動かす力だ。
エリスは、その君主としての器が誰よりも大きい。
――だが、そうなると一つの疑問が湧いてくる。これほど優秀な人物が、何故ラセックスから追放されたのか。
無能だから、政治闘争に破れたから、追放された――
なんて、そんなはずがないのだ。
なぜなら、ラセックス王は、国益を1番に考える男だ。
彼が、これほど優秀な人間を、意味もなく手放すわけがない。
なら、それには意味があるはずだ。
――そして、キバは、エリス本人に聞くことはないけれど、ラセックス王の真意を掴みかけていた。
第三王女で王位継承権がない彼女が、君主としての器を存分に発揮するため、
あえてエリスを追放したのではないか。
彼女であれば、アルザスという小国でも、いや、小国でこそ国を富ませて繁栄させることができると。
すでに優秀な人物が集まり体制が整っている大国ではなく、これから人を集めて発展していく必要がある小国でこそ、彼女の人を惹きつける力が役に立つ。
まさしく、王国の太祖に相応しい力が、彼女にはあるのだ。
それがキバの考察だった。
そしてその考察が正しければ――アルザスは七王国をも上回る国になるだろう。
†
ロイド男爵は、牢から解放された瞬間、エリスに今売ることができる塩の量を聞いてきた。
その量がかなりものもであることを知ると、すぐに旅の許可を求めた。
「塩を高く買ってくれそうな人のあてがあります。彼らに売りに行きます」
「では、馬を用意させます」
「すぐに話をまとめてきますよ!」
ロイド男爵は意気揚々とそう言った。
戦争に負けて全てを失った40代の貴族――には全く見えなかった。
まるで、夢を追って旅する青年のようだった。
それを見てキバは、自らの仕えている人物は、やはり君主の器なのだと思った。
君主に必要なのは、知性でも、武才でも、内政を仕切る力でも、外交の能力でもない。
人を集め、動かす力だ。
エリスは、その君主としての器が誰よりも大きい。
――だが、そうなると一つの疑問が湧いてくる。これほど優秀な人物が、何故ラセックスから追放されたのか。
無能だから、政治闘争に破れたから、追放された――
なんて、そんなはずがないのだ。
なぜなら、ラセックス王は、国益を1番に考える男だ。
彼が、これほど優秀な人間を、意味もなく手放すわけがない。
なら、それには意味があるはずだ。
――そして、キバは、エリス本人に聞くことはないけれど、ラセックス王の真意を掴みかけていた。
第三王女で王位継承権がない彼女が、君主としての器を存分に発揮するため、
あえてエリスを追放したのではないか。
彼女であれば、アルザスという小国でも、いや、小国でこそ国を富ませて繁栄させることができると。
すでに優秀な人物が集まり体制が整っている大国ではなく、これから人を集めて発展していく必要がある小国でこそ、彼女の人を惹きつける力が役に立つ。
まさしく、王国の太祖に相応しい力が、彼女にはあるのだ。
それがキバの考察だった。
そしてその考察が正しければ――アルザスは七王国をも上回る国になるだろう。
†
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)
SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。
しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。
相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。
そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。
無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。
しかし、ある日――
「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」
父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。
「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」
ライルは必死にそうすがりつく。
「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」
弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。
失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。
「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」
ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。
だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。
【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい
斑目 ごたく
ファンタジー
「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。
さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。
失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。
彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。
そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。
彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。
そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。
やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。
これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。
火・木・土曜日20:10、定期更新中。
この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる