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第四話 六万の侵略者
13.
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†
「キバ殿、来ました!」
アルバートが叫ぶ。
日が沈みかけたころ、ついにロイド男爵軍が動き始めたのだ。
全軍が突撃体制を作り、丘に向かって駆け上がってきた。
「全軍、迎え撃て!」
アルザスたちは丘の上から、魔法攻撃で迎撃する。
しかし、一万の軍勢が一斉に攻め込んできては、焼け石に水だった。
あっという間に、敵は丘をかけ上がって、目の前に迫って来る。
「撤退だ!」
キバはすぐさま命令を下した。
アルザス軍は高地を放棄して、後方に撤退し始める。
その様子を見て、ロイド男爵は拍子抜けした。
そのままロイド男爵軍は丘の頂上にたどり着き、占拠する。
アルザス軍たちはほとんど戦うことなく、丘から逃げていった。
「高地を取ったぞ!」
ロイド男爵の言葉に、配下の兵たちは一気に鼓舞される。
腰抜けにもほどがあるな。ロイド男爵は逃げるアルザス軍の背後を見ながら鼻で笑った。
「どうしますか、殿下。奴らを追撃しますか」
「いや、もう夜になる。一旦は様子見だ」
「承知しました」
その後、ロイド男爵は、丘から逃げるアルザス軍を注意深く観察していたが、結局彼らは丘の下で布陣した。というより布陣せざるを得なかった。
というのも、彼らが降りて行った丘の先には、大きな川が流れていたからだ。川を渡ろうとすれば、それなりに時間がかかる。その間に背後から男爵軍に攻撃されているのが目に見えているので、迂闊に進むことができなかったのだ。
「バカな奴らめ。丘の向こうが行き止まりとも知らずに。袋の鼠だ。よほど混乱していたと見える」
と、男爵の部下の将軍が敵の様子を伝えてきた。
「殿下、敵の右翼はかなり薄くなっています」
確かに、アルザス軍は、おおよそ右翼に千、左翼に二千人の合計三千。左翼が薄くなっている。
そこで、ロイド男爵は圧勝するための作戦を考えた。
本陣であるこの高地に、五千の兵士を残す。
敵の左翼には二千を送り、互角の戦いをさせる。
そして、残りの三千を、薄くなっている敵の右翼に集中させる。
左翼が互角に戦っている間に、薄くなっている右翼を3倍以上の軍勢で圧倒し、撃破。そのまま敵の左翼を挟み撃ちにする。
リッテル辺境伯の軍は、側面から攻撃されて敗北した。
ロイド男爵は同じことを自分たちがしてやろうと思ったのだ。
「明日は祭りだ……」
ロイド男爵は笑いながら呟く。
もちろん祭りは現実のものになった。
――勝者は思い描いていたのと違ってしまったのだが。
「キバ殿、来ました!」
アルバートが叫ぶ。
日が沈みかけたころ、ついにロイド男爵軍が動き始めたのだ。
全軍が突撃体制を作り、丘に向かって駆け上がってきた。
「全軍、迎え撃て!」
アルザスたちは丘の上から、魔法攻撃で迎撃する。
しかし、一万の軍勢が一斉に攻め込んできては、焼け石に水だった。
あっという間に、敵は丘をかけ上がって、目の前に迫って来る。
「撤退だ!」
キバはすぐさま命令を下した。
アルザス軍は高地を放棄して、後方に撤退し始める。
その様子を見て、ロイド男爵は拍子抜けした。
そのままロイド男爵軍は丘の頂上にたどり着き、占拠する。
アルザス軍たちはほとんど戦うことなく、丘から逃げていった。
「高地を取ったぞ!」
ロイド男爵の言葉に、配下の兵たちは一気に鼓舞される。
腰抜けにもほどがあるな。ロイド男爵は逃げるアルザス軍の背後を見ながら鼻で笑った。
「どうしますか、殿下。奴らを追撃しますか」
「いや、もう夜になる。一旦は様子見だ」
「承知しました」
その後、ロイド男爵は、丘から逃げるアルザス軍を注意深く観察していたが、結局彼らは丘の下で布陣した。というより布陣せざるを得なかった。
というのも、彼らが降りて行った丘の先には、大きな川が流れていたからだ。川を渡ろうとすれば、それなりに時間がかかる。その間に背後から男爵軍に攻撃されているのが目に見えているので、迂闊に進むことができなかったのだ。
「バカな奴らめ。丘の向こうが行き止まりとも知らずに。袋の鼠だ。よほど混乱していたと見える」
と、男爵の部下の将軍が敵の様子を伝えてきた。
「殿下、敵の右翼はかなり薄くなっています」
確かに、アルザス軍は、おおよそ右翼に千、左翼に二千人の合計三千。左翼が薄くなっている。
そこで、ロイド男爵は圧勝するための作戦を考えた。
本陣であるこの高地に、五千の兵士を残す。
敵の左翼には二千を送り、互角の戦いをさせる。
そして、残りの三千を、薄くなっている敵の右翼に集中させる。
左翼が互角に戦っている間に、薄くなっている右翼を3倍以上の軍勢で圧倒し、撃破。そのまま敵の左翼を挟み撃ちにする。
リッテル辺境伯の軍は、側面から攻撃されて敗北した。
ロイド男爵は同じことを自分たちがしてやろうと思ったのだ。
「明日は祭りだ……」
ロイド男爵は笑いながら呟く。
もちろん祭りは現実のものになった。
――勝者は思い描いていたのと違ってしまったのだが。
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