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第二話 大軍侵攻

4.

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 †

 二日後。

 キバは、アルザスの地を離れ――ラセックスの王宮へと来ていた。

「キバ! もう、心が固まったか!」

 そう言って、キバを熱烈に迎え入れたのは、――ラセックス王国の第一王女、ルイーズだった。

 本来、いきなり小国の人間が会いたいと思っても簡単に会えるような人間ではないのだが、キバだけは特別だった。
 王女は先の戦いで自分をあしらうように負かしたキバに、すっかり惚れ込んでいるからだ。

「……今日はお願いがあって来たんですが」

「なんだ? なんでも申してみよ」

 ルイーズはワクワクという言葉が聞こえて来そうな表情でキバを見た。

 ああ、これを言ったら、絶対勘違いされるな、とキバは思いながらも、今日の要件を伝える。

「父上にお会いしたい」

 キバが言うと、ルイーズは「そうかそうか!」と、はち切れんばかりの笑みを浮かべた。

「ふふっ。意外なほどに、時が来るのは早かったな……」

 ああ、これ絶対誤解したやつだ。
 キバは事が大きくならないうちにと、誤解を解こうとする。

「ごめん、あの……えっと、アルザスの軍師として、ラセックス国王と話したいんですが」

 キバがそう付け足すと、ルイーズはぽかんとした。

「それは……?」

「つまり……ドラゴニアから、俺たちアルザスを守ってほしい、って言うお願いなんだけど」

 キバが考えた、ドラゴニアからアルザスを守る手段。
 それは、別の有力七王国であるラセックスの庇護を受けることだった。

 最初から自力で国を守ろうなどとは考えていなかった。
 アルザスの国力では、どんな奇策を用いたとしても、ドラゴニアに勝てるわけがないと言うことは、戦略家でなくともわかることだ。
 だから、大国の庇護を受けるというのが、唯一現実的な路線だった。

 そこでツテがあり、頼みを聞いてくれそうなルイーズのいるラセックスに白羽の矢がたったのだ。

「……む、私との結婚の話ではなかったのか」

「ご、ごめんなさい……」

「……まぁよい。自国が危機的状況にあっては、婚約のことが後回しになるのも致し方がない。軍人としては当然のことだ」

 意外なことに、ルイーズはあっさり引き下がった。

 だが同時に、こうも言う。

「…しかし、ラセックスの力添えは期待するな」

「やっぱりダメですか」
 
「もちろん、交渉はさせてやるが……国王は損得にはうるさい。得がなければ、一兵たりとも兵士を動かすことはないぞ」

「……一応、ダメもとで聞くけど、ルイーズのお願いでも聞いてくれないですかね」

「無理だろう……と、私は思うが、しかし本人に聞くのが手っ取り早いな」

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