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第4章:新たな日々

閑話:ラムスの報告2

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~アーマス・フォン・バイズ視点~

ラムスから語られた、古代火炎竜というドラゴンがコトハ殿に忠誠を誓ったという話。
さすがに私もハールも、長いこと貴族として政治に関わっており、その重大性を理解できた。

「このことが知れ渡れば・・・」
「コトハ殿に忠誠を誓うドラゴンによって、領土拡大を狙えると喚く者が多くでる、な」
「はい。もちろんコトハ殿はそんなことに興味は無いだろうがな。むしろ、そんな愚かなことをコトハ殿に頼んだ時点で、カーラルド王国が見限られかねない。そうすれば・・・」
「それこそ、ドラゴンたちが敵に回りかねない。いや、そもそも・・・・・・。コトハ殿にカイト、ポーラ、そして従魔たちだけで、とんでもない戦力だからな・・・」
「アーマス、ラムス。言いたくはないが王として命じる。ドラゴンがコトハ殿に忠誠を誓ったこと、決して他言するな。コトハ殿が王都へ到着し次第、コトハ殿にも事情を説明せよ」
「「はっ!」」


にしてもとんでもない話だな。古代火炎竜というドラゴンがどれだけの数いるのか不明だが、それを配下にするなど。ホムラ、という族長の娘が従魔となってコトハ殿に直接仕え、それ以外は住処に戻ったそうだが・・・・・・
どこに住んでいるのかは知っておく必要がある、か。

「それでは、次の話に行きますね」

私が悩んでいると、ラムスがそんなことを言い出した。
そういえば、「軽めの話から」とか言っていたか・・・

「目に見えるインパクトとしては、コトハ殿に従魔ができた、という先ほどの話よりもこちらの方が上でしょうから。クルセイル大公領の騎士団には、騎士よりも多くのゴーレムがいます」

・・・・・・・・・・・・ご、ゴーレム、だと?

「ゴーレム、そう言ったか?」
「はい。ハールおじさん。それも稀に遺跡から発見されるような不格好なものではなく、『騎士』と言っても違和感のない、そんなゴーレムです」
「・・・・・・な、なんだと。少し前にクルセイル大公領で魔法武具が売り出されているとは聞いていたが、次はゴーレムを・・・」
「ああ。ゴーレムは販売してはいないようです。この前お伝えした砦にて、魔法武具の展示や販売は行っていました。私もあるだけ購入致しましたが、ゴーレムの方は売ってはいただけませんでした」
「はぁー・・・・・・。ラムス。もう少し詳しく話せ」
「はい、父上」


 ♢ ♢ ♢


「つまり、クルセイル大公領の騎士ゴーレムの戦闘能力は、うちの騎士団随一の戦闘能力を誇るカーシャスに勝る、と?」
「はい。それも1対1で、です。クルセイル大公領の騎士団では、騎士1人と騎士ゴーレム2体からなる騎士隊という単位が、活動の基本単位となっているようです。この騎士隊であれば、ファングラヴィットに対処可能。複数個集まればフォレストタイガーとも渡り合えると・・・」
「その騎士ゴーレムは、どれだけいるのだ?」
「正確な数は不明ですが、かなりの数。というか、ゴーレムはコトハ殿が作るわけですし、その材料も入手は簡単。時間さえあれば、どれだけでも量産できるようですね」
「・・・・・・はぁー。つまり、簡単に言ってしまえばコトハ殿、クルセイル大公領は圧倒的な戦力を有しているわけだな。それも、いくらでも替えが利き、量産できる兵力をもって」
「はい、父上」
「ラムスよ。その騎士ゴーレムは売る予定は無いのか?」
「はい、ハールおじさん。もちろん私も交渉しましたが、無理そうです。そもそも売る気が無いようでしたし、領外での運用には難点が」
「難点?」
「これはコトハ殿も曖昧なようでしたが、魔素濃度の高いクライスの大森林やその周辺ならともかく、魔素濃度の低い場所で、どれだけの時間騎士ゴーレムが活動できるかは分からないそうです。エネルギー切れに備えて予備の魔石を準備しておく必要がありますが、その魔石とは・・・」
「最低でもファングラヴィットの魔石。それを軍規模でとなると・・・」
「いったいどれだけの費用が必要か、想像もできんな」
「はい。今回、王都に来る際には騎士ゴーレムも連れてくるそうですから、その辺りの実験も兼ねているのでしょうが。私としては、良好な関係を築きつつ、魔法武具や良質な素材を仕入れるのが、適切な関係だと判断致しました」
「うむ。それは、妥当な判断だろうな。領主として、その判断を支持しよう」
「ありがとうございます、父上」

本当に毎回毎回、報告を聞くのが怖すぎるな。
森の外に砦を作ったと聞いたときも驚いたが、理由を聞けば納得できた。しかし、そこで商売し始めたのが、自領で作った魔法武具と聞いたときは倒れかけた覚えがある。
そして今回はゴーレムか。興味は尽きないが、どう考えてもクルセイル大公領の秘匿技術であるし、下手に首を突っ込めば痛い目を見ることになる。

「しかし、魔法武具が売られ、珍しい素材や食材が売られ、ゴーレムまでいる砦は、いろいろな意味で注目を浴びそうだな」

ハールがそんな懸念を口にした。
それはそうだと思うが、正直、先ほど聞いたクルセイル大公領の騎士団や従魔たちのことを考えると、心配するのも烏滸がましいと思えてしまう。
いや、唯一懸念があるとすれば・・・

「それは心配なさそうですよ」
「と、言うと?」
「確かに、砦を設置し魔法武具などの販売を始めて以降、多くの商人や貴族の使者、冒険者が訪れているようです。その中には、まあバカも混じっているわけですが、なんということもなく、騎士団によって制圧されているようです。大きな事件としては、魔法武具を盗もうと砦の倉庫の方に侵入を試みた冒険者・・・、盗賊がいたようですが」
「ほう。それで、どうなった?」
「当然のことながら、あっけなく制圧されました。盗賊は5人。1人は制圧時に殺害されました。残り4人のうち、2人は新人冒険者。2人のクズなベテラン冒険者に巻き込まれたようでした」
「・・・魔法武具は、おそらく領の財産であろう。それを盗もうとした、ということは、4人とも処刑されたか?」
「いえ。クズ2人は処刑。新人2人は、どうやら罰金刑になったようですね。それも分割支払いを認められたそうです」
「それは・・・」
「ええ。新人冒険者たちの事情を考慮したのでしょう。結果、ガッドの冒険者を中心にコトハ殿やクルセイル大公領の評判はうなぎ登り。加えて、クズ2人はきちんと処刑していますので、なめてかかるバカも減ったようですね」
「なるほど。その時点における、最善策であったようだな」
「はい。そう思います」

ハールとラムスの会話を聞いていて、唯一の懸念点も払拭できた。
コトハ殿は我々とは異なる価値観の上にある。そのため、我々の常識から外れた決断をするか可能性がある。それ自体はしかたがないにしても、その結果、コトハ殿やクルセイル大公領がなめられたり、悪評が広まったりする可能性があった。
しかし今の話を聞くかぎり、ある程度の厳しさを兼ね備え、かつ、平民への感覚も許容範囲内だ。そして先程までの圧倒的な戦力、魔法武具や森の恵み、魔獣の素材といった財産。領どころか国としてもやっていけるレベルだ。
後は領民が少ないことがネックか? いや、それは自然と増えるのだろうな・・・


「重ね重ね、コトハ殿に大公位を受けてもらってよかったな」
「そうだな、アーマス。爵位も、自治国としても問題ない大公にしておいてよかった。後は・・・」
「バカな貴族、ですかね」
「ラムスの言うとおりだな。建国式典で出会う多くの貴族。その中には、まあ残念なヤツもいる。ただ、まぁ・・・」
「コトハ殿たちに万が一はあり得ないだろう。バカなことをした貴族を、おそらくコトハ殿たちが返り討ちにするであろうから、その後に処理すればいい。むしろ、1回くらいは騒動が起きた方が、今後の抑止にもなる」

私とラムスはハールの言うことに納得し、コトハ殿の振る舞い、判断を見守ることにした。まあ、なるようになるだろう・・・
消えたら困る貴族には、コトハ殿のことを正確に伝えてあるしな。

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