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第4章:新たな日々

第153話:魔力放出

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え!?
いや、確かに接触を増やすのであればそれが一番か。別にキアラは女の子だし、むしろ役得感すらある。レーベルに確認したところ、別に裸で抱き合えというわけでもなかった。服の数枚程度の干渉はあってないようなものらしく、もし失敗したのなら脱いでやることになった。
別にキアラも嫌ではない、というか魔法を使えるようになりたいとの思いが強いみたいだし、気にすることもないか。

そしてキアラ自身は、魔力を自分で体外へ放出するのは難しいみたい。私は何度も無意識でやっていたし、イメージもできているが、いきなり全身から魔力を放出するといっても難しいのだろう。
というか、私が抱きしめながらオーラを解き放てばいいのだから、困ることではない。

ちなみにレーベルがこの症状に詳しいのは、昔召喚された際に、似たような症状のエルフの子どもを助けてほしいと頼まれたことがあったかららしい。どうやら依頼主が王族や貴族ではなかったらしく、レーベルが症状と対処法を調べたとのこと。


一応場所をお屋敷に移した。カイトたちには声を掛けて一緒に来ている。キアラの希望でハイエルフだったということは伝えてある。

私がオーラを全力で放つと、しばらく狩りが難しくなるかもしれないが、マーカス曰くしばらくは新たな騎士たちの訓練がメインらしいし、レーノ曰く貯蔵されている肉も多いらしいので問題ないだろう。それに領都の北側、つまりガッドの方角には最近はあまり魔獣がいない。魔道具によりガッドへ大量の魔獣がおびき寄せられ、成獣のグレイムラッドバイパーが現れたこともあり、魔獣があまり生息しない領域になったのだ。

「じゃあ、やるよ?」
「はい! お願いします」

キアラの覚悟が決まったような目を見て、少し苦笑いしながらキアラを抱きしめた。
私がやるのは、キアラの身体から魔力を抜くこと、そして流れてきた魔力を放出することだ。


「始めます!」

そう宣言し、魔力の流れに意識を集中する。キアラの魔力を感じそれを引き出す。引き出した魔力は私の魔力へ同調させる。それと同時に、私の身体に保有されている魔力を放出していく。放出するのは簡単だ。いつもは意図的に抑え込んでいるオーラを解放するだけ。何度か魔獣を遠ざけたいときに使ったことがあるが、とりあえずそれの数倍の量を放出するつもりで、全力で。

一気にキアラから魔力が流れ込んでくるのを感じる。さすがに魔力の量が多いため、かなりの魔力を感じる。それを変化させ、自分の体内に取り込みながら、オーラとして放出していく。

「・・・・・・コ、コトハさん、凄すぎます。もの凄いプレッシャーが・・・」
「うん、何度もお姉ちゃんのオーラは感じてるけど、これは・・・・・・、凄い」

フォブスの呟きにカイトが答えているのが聞こえるが、さすがに答える余裕はない。自分たちの友だちの、パーティメンバーの問題だからということで、2人が一緒に来たがり、それにポーラとノリスも便乗した形で4人がいるが、連れてくるべきではなかったかもしれない。
・・・まあ、今更だ。


そうしてオーラを全開で放出し始めて数分、レーベルから「待った」がかかった。
レーベルには、キアラの体内にある古い魔力が私を通して概ね放出できたのを確認できたら教えてくれるように頼んでいたのだ。

「コトハ様、もうよろしいかと」
「ふぅー。分かった。キアラ、大丈夫?」
「は、はい。少しクラクラしますけど・・・」
「一度に大量の魔力が体外へ出ましたので、魔力切れのような状態なのでしょう。それと同時に身体がもの凄い勢いで新しい魔力を生み出していますので、身体に負荷が掛かっているのかと。少しお休みされるとよろしいかと」
「うん、そうだね。キアラ、少し部屋で休憩してきたら?」
「・・・はい。そうします。コトハ様、ありがとうございます」

キアラはそう言って頭を下げると、心配そうにしていたカイトに連れられて部屋へと向かった。


 ♢ ♢ ♢



キアラの魔力抜きは1週間程度毎日行うことになった。「古い魔力を除去する」というのは今日で達成されたが、魔力を抜いて、新たに魔力を作ることを促すことで、魔力の循環路が拡張されるのを後押しするらしい。別に私にとっては負担でも何でもないので、問題ないだろう。

少し気になったのが私のオーラ、それも全開のオーラを至近距離で浴び続けることの弊害だ。別に悪いことではないのかもしれないが、カイトやポーラが『人龍族』に進化し、私の眷属となった原因の1つに、私のオーラを浴び続けていたからというものがある。

至近距離で、しかも全開のオーラを浴びていると同じようなことが起こるのではないかと思いレーベルに相談したが、

「それは問題ないと思われます。『人間』のように魔素への適応度が低い種族、それも身体が成熟していない子どもであればコトハ様に限らず強い魔力の放出、オーラを受けると身体への影響が大きいでしょう。しかしキアラ様はハイエルフです。まだ子どもであり成長途中でしょうが、コトハ様のオーラを受けて種族が変わるほどの影響を受けることはないと思われます。注意するとすれば、フォブス様とノリス様かと。お二人は『人間』の子どもですから」
「・・・・・・確かに。明日からは、2人・・・・・・、4人には別の場所にいてもらおうか。今日と同じことするだけだし、直ぐ終わるもんね」
「念のためそうするのがよろしいかと」

預かっている2人を勝手に進化させてしまったら大変だ。確かに強くなるというメリットはあるかもしれないけど、そういう話ではないだろうし。


それから私はドランドの工房へと向かった。
ゴーレムの改良に取り組もうとしているときに呼び出しがあったので、それについて話すためだ。一応ドランドには、ゴーレムの身体の芯となる部分を金属で作るように頼んでいたのだけど・・・

「ドランドー、いるー?」
「ん? 嬢ちゃんか。帰ってきたんだったな」
「うん。向こうでカイトたちの友だちも連れてきて、ベイズとノエル、それからフラメアともさっきまで一緒に訓練してたよ」
「そうかそうか。3人ともトラウマから抜け出しつつあるし、同年代の友だちが増えるのはいいことだな。それで嬢ちゃん、ゴーレムのことなんだがな」
「うん。その話をしに来たの」
「おう。とりあえず、頼まれていたゴーレムの身体の芯を作ってみたぞ。“魔鋼”でな」

魔鋼。鋼に魔石や魔獣の牙などの素材を混ぜ込み、鍛えたものだ。単に加工品や加工金属と呼ぶのは味気ないと主張するドランドによって命名されていた。私たちが作っている魔法武具はほとんどがこの魔鋼で作られている。

一口に魔鋼と言っても、牙を混ぜたものと魔石を混ぜたもので質は大きく変わるし、加えてドランドが鍛えている最中に私が魔力を流し込むことでより魔素を多く含むようになり、さらに良質な魔法武具へと至るものもある。だが便宜上、鋼と魔石などを混ぜて鍛えた金属のことを魔鋼と呼んでいた。


ドランドが作っていたのは、魔鋼で作られたゴーレムの身体の芯。棒状の芯が6本と、カプセル状の球体が1組だ。
私たちの計画では、カプセル状の球体の中に、命令式を書き込んだ魔石と、動力源となる魔力を溜めた魔石を設置し頭部に。そして2本の芯を十字型にして、十字の横棒のところからそれぞれ腕となる芯を、T字の下部に二股に分かれるように脚となる2本の芯を取り付ける予定だった。要するに棒人間を骨格に、ゴーレムを作ろうと考えたのだ。

もちろん、人間の様に多くの“骨”を金属で作り、肉付けしていけば強度は増すし、細かな動きもできるようになるだろう。しかし、それはさすがに効率が悪いし、修理が大変だ。それに人間と構造が異なっても、ある程度は自分で身体を作り替えて、命令式にある動きができるようになることは既に分かっている。
なので、強度と手間を考え、中心となる部分に強い芯を設置することにしたのだ。

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