28 / 30
私たちの春~朝比奈杏編~
4 陽介が卒業して半年後の夏、杏は陽介のいる京都へと向かう
しおりを挟む
夏休み、彼とのつらい別れから半年になろうとしている。その間はメールでお互いの近況をやり取りし、さほど寂しさは感じなかった。私は生徒会の仕事や受験勉強に忙しく、夏休みはあっという間にやって来た。
両親には櫻子と花純3人で、1泊2日で大学を見学に行くと伝えてあった。もちろん、その前に二人には相談していた。
「やったね!杏の行動力に感服するわ。協力するよ。」と櫻子が言った。
「えー!1泊って、どこに泊まるの?柴嵜さんとそういう事なの?」と花純は、大きな目を見開いて驚いていた。私は心に決めていた。そして、京都に向かう新幹線の中で、考えていた。
彼とキスをしたのは通算4回、少ないと思うけど回数の問題ではない。
今日、彼の元に行くという事は、彼を受け入れるという事だ。私には未知
の領域だが、恋愛関係において越えなければならない一線だと思う。それ
ばかりでなく、とかく経験が重視される世の中で、女子にとっては男性経
験があるとかないとか言われ、面倒臭い思いをするのは嫌だ。櫻子は本人
の意思で行動しているが、芹菜や真莉愛、花純まで、女であるがために嫌
な思いをしている。女が男の欲に翻弄されるのはごめんだ。男の勝手で、
嫌な思いをするなら、好きな男性と初めてを経験したい。その先はどうな
るのかは分からないが、処女という厄介なものを早く捨てたいというのが、
私の本心だった。
京都駅で彼と再会し、その喜びを交わし合い、京都御所や金閣寺など古都を案内してくれた。彼の通う大学にも案内され、京都で学生生活を送っている彼がうらやましかった。駅に預けていた荷物を出し、夕食は錦市場のおばんざいの店で、京都の家庭料理を堪能した。彼と一緒に食べている事が、格別な味わいとなった。食事後は、京極通りから四条通りに掛けて腕を組んで歩いた。片手にはキャリーバッグを引きずりながら、まるで家出少女のようだと思った。昼間は二人とも照れがあって、時々手をつないで歩くぐらいだったが、こうして腕を組んでいる事が信じられなくて、京都の夜の魔法にかかったようだった。四条大橋に差し掛かると、鴨川沿いに多くのカップルが見られた。
「あれは俗に『鴨っぷる』と言って、恋人同士が河川敷に等間隔に座っているので有名になってるんだよ。どう?下へ行ってみようか。」
彼に付いて河川敷に下りると、こちらが恥ずかしくて目を背けたくなるような光景が広がっていた。私達も空いている場所に肩を並べて座ったが、周りが気になって仕方がなかった。その内に彼がキスをしてきたので、周りが見えなくなり、二人だけの世界に入っていった。
ロマンチックな京都の夜を満喫しているところに、彼が訊ねてきた。
「杏は、今日は何処に泊まるの?送って行くよ。」
誠実な彼は、狼にはなれないらしい。このまま今日は別れるつもりだ。
「陽介さんの、部屋は駄目ですか?ホテルは取ってないので、泊めて下さい。」
恥ずかしそうに言うと、彼はやっと気付いたようであわてていた。
「良いけど、僕の部屋は狭いし、布団も一組しかないから…。」
「それでも、部屋に行ってみたい。夏だから、布団はいらないし!」
私は押しかけ女房状態だと、自分で自分が可笑しかった。四条からバスに乗って、30分ぐらいで着くという。バスの中で彼は無口で、何かを一生懸命考えているようだった。私も外の景色を眺めながら、不安と期待の入り混じった気持ちで無口だった。最寄りの停留所に着き、コンビニに寄って行くというので後を付いて行った。飲み物やお菓子を買ったが、レジで彼が手に隠し持っている物に気付いた。彼もその気でいるんだと思い、恥ずかしさと同時に安心感を抱いていた。
両親には櫻子と花純3人で、1泊2日で大学を見学に行くと伝えてあった。もちろん、その前に二人には相談していた。
「やったね!杏の行動力に感服するわ。協力するよ。」と櫻子が言った。
「えー!1泊って、どこに泊まるの?柴嵜さんとそういう事なの?」と花純は、大きな目を見開いて驚いていた。私は心に決めていた。そして、京都に向かう新幹線の中で、考えていた。
彼とキスをしたのは通算4回、少ないと思うけど回数の問題ではない。
今日、彼の元に行くという事は、彼を受け入れるという事だ。私には未知
の領域だが、恋愛関係において越えなければならない一線だと思う。それ
ばかりでなく、とかく経験が重視される世の中で、女子にとっては男性経
験があるとかないとか言われ、面倒臭い思いをするのは嫌だ。櫻子は本人
の意思で行動しているが、芹菜や真莉愛、花純まで、女であるがために嫌
な思いをしている。女が男の欲に翻弄されるのはごめんだ。男の勝手で、
嫌な思いをするなら、好きな男性と初めてを経験したい。その先はどうな
るのかは分からないが、処女という厄介なものを早く捨てたいというのが、
私の本心だった。
京都駅で彼と再会し、その喜びを交わし合い、京都御所や金閣寺など古都を案内してくれた。彼の通う大学にも案内され、京都で学生生活を送っている彼がうらやましかった。駅に預けていた荷物を出し、夕食は錦市場のおばんざいの店で、京都の家庭料理を堪能した。彼と一緒に食べている事が、格別な味わいとなった。食事後は、京極通りから四条通りに掛けて腕を組んで歩いた。片手にはキャリーバッグを引きずりながら、まるで家出少女のようだと思った。昼間は二人とも照れがあって、時々手をつないで歩くぐらいだったが、こうして腕を組んでいる事が信じられなくて、京都の夜の魔法にかかったようだった。四条大橋に差し掛かると、鴨川沿いに多くのカップルが見られた。
「あれは俗に『鴨っぷる』と言って、恋人同士が河川敷に等間隔に座っているので有名になってるんだよ。どう?下へ行ってみようか。」
彼に付いて河川敷に下りると、こちらが恥ずかしくて目を背けたくなるような光景が広がっていた。私達も空いている場所に肩を並べて座ったが、周りが気になって仕方がなかった。その内に彼がキスをしてきたので、周りが見えなくなり、二人だけの世界に入っていった。
ロマンチックな京都の夜を満喫しているところに、彼が訊ねてきた。
「杏は、今日は何処に泊まるの?送って行くよ。」
誠実な彼は、狼にはなれないらしい。このまま今日は別れるつもりだ。
「陽介さんの、部屋は駄目ですか?ホテルは取ってないので、泊めて下さい。」
恥ずかしそうに言うと、彼はやっと気付いたようであわてていた。
「良いけど、僕の部屋は狭いし、布団も一組しかないから…。」
「それでも、部屋に行ってみたい。夏だから、布団はいらないし!」
私は押しかけ女房状態だと、自分で自分が可笑しかった。四条からバスに乗って、30分ぐらいで着くという。バスの中で彼は無口で、何かを一生懸命考えているようだった。私も外の景色を眺めながら、不安と期待の入り混じった気持ちで無口だった。最寄りの停留所に着き、コンビニに寄って行くというので後を付いて行った。飲み物やお菓子を買ったが、レジで彼が手に隠し持っている物に気付いた。彼もその気でいるんだと思い、恥ずかしさと同時に安心感を抱いていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
火花 ~ハラカラ五分の四~
hakusuya
青春
両親を知らず母方祖父と叔父一家に育てられた鮎沢火花は、高校一年生の終わり、父方一族の存在を知らされる。余命が短い父方祖父の後継として離れ離れになっていたきょうだいと共同生活をすることになった火花は、恋焦がれた女子たちとの関係を清算して。生まれ育った地に別れを告げた。(故郷 佐原編)
裕福な子女が通う私立高校に転校し、地味で目立たない男子として学園デビューを果たした火花は、姉妹との関係を公にしないまま未知の学園生活に身を置いた。(御堂藤学園二年生編)
機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。
光属性陽キャ美少女の朝日さんが何故か俺の部屋に入り浸るようになった件について
新人
青春
朝日 光(あさひ ひかる)は才色兼備で天真爛漫な学内一の人気を誇る光属性完璧美少女。
学外でもテニス界期待の若手選手でモデルとしても活躍中と、まさに天から二物も三物も与えられた存在。
一方、同じクラスの影山 黎也(かげやま れいや)は平凡な学業成績に、平凡未満の運動神経。
学校では居ても居なくても誰も気にしないゲーム好きの闇属性陰キャオタク。
陽と陰、あるいは光と闇。
二人は本来なら決して交わることのない対極の存在のはずだった。
しかし高校二年の春に、同じバスに偶然乗り合わせた黎也は光が同じゲーマーだと知る。
それをきっかけに、光は週末に黎也の部屋へと入り浸るようになった。
他の何も気にせずに、ただゲームに興じるだけの不健康で不健全な……でも最高に楽しい時間を過ごす内に、二人の心の距離は近づいていく。
『サボリたくなったら、またいつでもうちに来てくれていいから』
『じゃあ、今度はゲーミングクッションの座り心地を確かめに行こうかな』
これは誰にも言えない疵を抱えていた光属性の少女が、闇属性の少年の呪いによって立ち直り……虹色に輝く初恋をする物語。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』でも公開しています。
https://kakuyomu.jp/works/16817330667865915671
https://ncode.syosetu.com/n1708ip/
隣の席の美少女お嬢様の彼氏のフリをした日から、何故かお嬢様が甘々に
月姫乃 映月
青春
放課後、周りの生徒は、友達とショッピングモールやゲームセンターに出掛けようと話し合っている。
けれど俺――八神遥翔(やがみ はると)は未だにクラスに馴染めずにいるせいか、お誘い何てないと思ったが――
「ちょっと今から付き合ってほしい所があるのだけれど……」
隣の席のお嬢様、桜咲愛菜(おうさか まな)が俺にそう話しかけてきた。
「付き合ってほしいところ?」
「近くのカフェに一緒に行ってほしいの」
そして愛菜は俺にとあるパフェに写真を見せてきた。
「これが食べたいのか?」
「そうなの、でもこれカップル限定なの。だから私の彼氏のフリをしてほしいの」
「……は? 彼氏のフリ? 俺が?」
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる