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第10章 梅枝七海(20歳)=大田黒駿(22歳)
§2新たな恋の予感
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七海が駿と知り合ったのは、父親の紹介がきっかけだったが、その時は交際する事になるとは思っていなかった。出会って3か月後の6月、彼から呼出しがあった。
「久し振り!急に呼び出したりして、ごめん!彼氏とデートだったんじゃない?」
「3月に会ってから、3カ月ぶりですね。彼氏はいないですから、お構いなく。それより、私なんかで良いんですか?誘うべき人が、別にいるんじゃないんですか?」
「今は女の子と遊んでいる暇はないから、4年生になって別れた。梅枝さんとは、もう一度会って話したかったんだ。君こそ、ずっと彼氏がいないの?」と訊かれ、恋愛経験はあるとだけ告げ、詳しい事は語らなかった。私たちは、彼の運転する車で江の島に向かっていた。父親の車らしいが、初めて乗る外車だった。
「実はさ、予備試験の第1段階に合格したんで、息抜きのドライブに梅枝さんを誘ってみた。予備試験って、分かる?」と訊かれ、分からないと素直に答えた。司法試験を受けるための試験で、第1段階の短答式試験が終わり、7月に論文、それに受かると10月の口述試験を受けるという事だった。
「すごいですね!大学生で受かるのは、難しいんでしょ!」
「まあね、普通に勉強していれば、難しくはないよ。それで終わりでなくて、来年の司法試験が本番で、それに受からなければ何にもならないからね。」という彼の自信満々の言葉には、なぜか嫌味はなかった。
車の中では駿が主にしゃべり、七海はたまに質問に答えていたが聞き役に徹していた。将来の方針や家族の事、大学生活や友人の話をしている内に江の島に到着した。海沿いのレストランでランチを食べながら、話は途切れる事はなかった。
「梅枝さん、いや、七海って呼んで良いかな?僕は駿で良いよ!」
「何か、2回しか会ってないのに、恋人みたいじゃないですか!」
「恋人になってもいいよ!七海はあの時僕と初めて会ったと思っているみたいだけど、違うんだよね。子供の頃、僕が小学生だった時に、一緒に遊んだんだよ!」
「えー?そうなんですか?わたしが幼稚園とか?覚えていないです!」
「男の子みたいに活発で、僕の事を追いかけ回していた。」
私は子供の頃の話が苦手で、それ以上は思い出してくれるなと願っていた。
「それが、こんなに可愛らしくて素敵な女性になるんだね。驚きだよ!中学生の時も知ってるよ。父に来た年賀状の写真で、成長した君を見たんだ。」
「恥ずかしいから、その話はもういいです!この後、水族館に行きたいな!」
「うん、いいよ!でね、その中学生の君を街で見掛けた事があって、男の子と仲良さそうに歩いていたから、声を掛けそびれたんだ。」としつこい彼をそのままに、席を立った。千宙との事を言っているのだと思い、彼の顔をまともに見られなかった。
二人は水族館を観て廻り、帰路に着いた。七海は駿の思惑が理解できずに、また久し振りのデートに疲れていた。寮まで送って来た駿は、「また、会ってくれるかな」と彼女に求め、七海は断る理由もなく同意していた。
「久し振り!急に呼び出したりして、ごめん!彼氏とデートだったんじゃない?」
「3月に会ってから、3カ月ぶりですね。彼氏はいないですから、お構いなく。それより、私なんかで良いんですか?誘うべき人が、別にいるんじゃないんですか?」
「今は女の子と遊んでいる暇はないから、4年生になって別れた。梅枝さんとは、もう一度会って話したかったんだ。君こそ、ずっと彼氏がいないの?」と訊かれ、恋愛経験はあるとだけ告げ、詳しい事は語らなかった。私たちは、彼の運転する車で江の島に向かっていた。父親の車らしいが、初めて乗る外車だった。
「実はさ、予備試験の第1段階に合格したんで、息抜きのドライブに梅枝さんを誘ってみた。予備試験って、分かる?」と訊かれ、分からないと素直に答えた。司法試験を受けるための試験で、第1段階の短答式試験が終わり、7月に論文、それに受かると10月の口述試験を受けるという事だった。
「すごいですね!大学生で受かるのは、難しいんでしょ!」
「まあね、普通に勉強していれば、難しくはないよ。それで終わりでなくて、来年の司法試験が本番で、それに受からなければ何にもならないからね。」という彼の自信満々の言葉には、なぜか嫌味はなかった。
車の中では駿が主にしゃべり、七海はたまに質問に答えていたが聞き役に徹していた。将来の方針や家族の事、大学生活や友人の話をしている内に江の島に到着した。海沿いのレストランでランチを食べながら、話は途切れる事はなかった。
「梅枝さん、いや、七海って呼んで良いかな?僕は駿で良いよ!」
「何か、2回しか会ってないのに、恋人みたいじゃないですか!」
「恋人になってもいいよ!七海はあの時僕と初めて会ったと思っているみたいだけど、違うんだよね。子供の頃、僕が小学生だった時に、一緒に遊んだんだよ!」
「えー?そうなんですか?わたしが幼稚園とか?覚えていないです!」
「男の子みたいに活発で、僕の事を追いかけ回していた。」
私は子供の頃の話が苦手で、それ以上は思い出してくれるなと願っていた。
「それが、こんなに可愛らしくて素敵な女性になるんだね。驚きだよ!中学生の時も知ってるよ。父に来た年賀状の写真で、成長した君を見たんだ。」
「恥ずかしいから、その話はもういいです!この後、水族館に行きたいな!」
「うん、いいよ!でね、その中学生の君を街で見掛けた事があって、男の子と仲良さそうに歩いていたから、声を掛けそびれたんだ。」としつこい彼をそのままに、席を立った。千宙との事を言っているのだと思い、彼の顔をまともに見られなかった。
二人は水族館を観て廻り、帰路に着いた。七海は駿の思惑が理解できずに、また久し振りのデートに疲れていた。寮まで送って来た駿は、「また、会ってくれるかな」と彼女に求め、七海は断る理由もなく同意していた。
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