ヒロインと呼ばないで2nd

キャロル

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1 誰か嘘だと言ってください。

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_お嬢様。お嬢様_

「ん、んん?」
なんか声が聞こえたんだけど、あれ?またVRヘッドつけっぱなしで寝ちゃった?ん?あれ?ついてないじゃない。
もう、流石に5日連続徹夜ゲームのやり過ぎで幻聴聞こえたかも、ハハハハ~やばいやばい!シャワー浴びてボケた頭スッキリさせなくちゃ!

「もう、お嬢様、やっと起きましたね。早く支度しないと、学園に送れますよ」

「………は?」

誰?なんで私の部屋に?家政婦さん?あれ?今日だっけ?

「えーっと家政婦さん?ですか?自室の掃除は頼んでませんが?なぜ、あなたはここにいるのでしょう?」

なせかこの服装、この顔…既視感が…どこかで見た事あるけど、…あれ、ゲームの侍女キャラ?もしかして…私はまだ夢の中なかな?ゲームのやり過ぎもここまでくると重症かも、とりあえず夢が覚めるまで楽しむ?

「何寝ぼけたこと言ってるんですか?さぁ、さっさと湯浴みしてお着替えいたしますよ」

「ゆ、あ、み?シャワーじゃなくて?」

「お嬢様、一体どうされたんです?早く起きてください!」

………間違いない…ここ連日装着しっぱなしの18禁VRゲーム“あなた色にして欲しい“の……夢だわ…5人の王子達とのあれこれを楽しむ、ユルゲーでヌルゲーの夢だ…。

5人の王子を2周攻略した所で解禁となる裏ルート、ヒロインである侯爵令嬢の専属執事ルート(最推し)

実はこの執事、隣国の第2皇子、(ルーク=コンウォール)これまたよくある設定の自国で命狙われ幼い頃に従者に逃してもらったが、路上で倒れていたところ、ヒロインであるジャスミンお嬢様に助けられ、身を隠す為に都合が良かったので、侯爵家で執事として働くことになったが、そこは皇族、優秀なためジャスミンの専属として仕えることになる。

とまぁ、あるある簡単設定なのです。

要するにバーチャルで恋愛を楽しむゲームで立体映像プラス、イケボを楽しむ世の中の私のような独身女性で3次元男子に興味のない喪女のためのゲームなんですよ。これ、丁度、裏ルート解放された瞬間に睡魔が襲い寝てしまったんだけど、夢にまで見るなんて、…ま、いっか。

「さぁ、お嬢様、出来ましたよ。今日もお綺麗ですね。」

「え、ええ、ありがとう。」

ほんと、流石ヒロイン、シャンパンゴールドのサラサラヘアーに深青の瞳睫毛バサバサ、大きいんだけど、ちょっと垂れ気味の色気ある目、文句なしに綺麗だし流石18禁ゲーム、プロポーション抜群ね!私の記憶力も素晴らしいわね、詳部まで再現できてるわ、おまけに質感もリアルー、これ、目が覚めたら相当ガッカリするわね!

_コンコン_

「お嬢様、お迎えにあがりました。」

「ええ、今行くわ、」

ドアを開けると、そこには……(きゃー)目が潰れるかと思うほどの超絶イケメンが…まずい鼻血出そう、…つやのあるサラサラの黒髪を後ろで結え、エメラルドのような美しいグリーンの瞳、見上げるほどの長身、すらりとした体躯鍛えてるから、きっと細マッチョよーよだれでそう。

はぁ、これ程リアルな夢、ルーク最高!もう少し堪能させてね~

「お嬢様、お手をどうぞ、」

ウヒョ!エスコート、…夢なのに妙に緊張する~。

「…ありがとう」

手が…暖かい、暖かい?……

馬車に乗り、学園に向かった。乗ってすぐお尻が痛いと呟いたら、ひょいと私を軽々膝の上に……、え?思わずルークの顔を見上げると、蕩けるような眼差しで見つめられ、ふにゅっと唇に……!!なぜ??あ!これは私の願望か、ルークルートはまだこれからだったから、やだ、私ったら~なんて、ボヘっとしてたら、顎クイされ啄むように何度も唇をハムハムされ、流石に妄想でも恥ずかしい。

「ちょ、ルーク、や、ん、はぁ」

やめてと言おうと口を開けたら、口内にヌルリと侵入し学園につく頃にはヘロヘロになっていた。

「お嬢様、歩けますか?抱いて教室まで行きますか?」

抱いてって、いくらなんでもそれは無い気合いと根性で校内を堪能しなくては、いつ目覚めるかわからないしね。

「だ、大丈夫よ!これくらい。」

小鹿のように震える脚を気取られ無いように歩き出した。

門から校舎まで軽い坂になっていて校舎入り口にある大きな桜?の木、あれ?映像では桜だったはず、これはもっと濃いピンク色似てるけど、桜じゃないわ。

少しずつ違和感を感じながら、校内をキョロキョロにながら、もうすぐ教室が見えると思った瞬間に“ドン“と後ろから押され床に膝をつくように転んでしまった。

「い、痛い、痛い?なんで?」

「お嬢様大丈夫ですか?」

痛みで、立てない私を抱き上げて、ぶつかってきた令嬢にルークは苦言を呈した。

「あなた、今、わざとぶつかりましたね。どういうつもりですか?ヨーク男爵令嬢、しかもあなたの学年は一つ下階ですよ…ここでは無いはずですが?」

「ルーク様~私の事知ってるんですね~嬉しいです~」

でた!ピンクの髪にピンクの瞳、目がチカチカするこの空気読めない感は…?ラノベではよくいるヒロインだけど、このゲームにこんなキャラいたかしら?

「まずは謝罪では無いですか?」

「え~ローズ、わざとじゃ無いし~ローズも痛かったし~ルーク様~一緒に保健室まで行ってください~」

これは、キャラとしてやばい系?バグ?というよりこれ夢よね、もしかしてバーチャルの中?ルークルート進行中?なの?
裏ルートだから?なんかへん。夢かゲーム内か確認しなくちゃ!

私はピンクローズの記憶に無いキャラが妙にリアルで気になってきた。

とにかく1人になって“ステイタス“を確認しなくちゃ。

「はぁ、話が通じませんね…お嬢様、膝の治療しなくてはいけませんね、こんなのほっといて保健室に行きましょう」

私を抱いたままスタスタ歩き出した。

「あ、あのルーク?重いでしょ?私は歩いて行くから、大丈夫よ。おろしてくれないかしら?1人でも歩けるから(多分)ルークは授業が始まってしまうから教室に戻って」

「……却下です。」

「………。」

途端に得体の知れない不安と脚の痛みが相まって涙が溢れてきた。

「う、ヒック、うう、」
溢れてしまった涙は止まらなかった。

「おじよ、…ジャスミン?痛むんですね?もうすぐですから、泣かないで…ずっと私がついていますから、」

目元に優しくキスを落としぎゅっと抱きしめ、歩く速度を早めた。私はルークの首に腕を回し胸に顔を埋め縋り付くようにして結局ルークに抱かれたまま保健室に連れて行ってもらった。

保健室に着いたら、保険医は不在だった為ルークが手当してくれた。

「後にはならないと思うますが、…2、3日で歩けるようになると思います、今日はもう帰りましょう。…こんな怪我させやがってあのくそビッチが!」

後半、不穏な言葉が聞こえたが、聞こえないふりをした。

「私は帰るけど、ルークは授業受けて。侯爵家の馬車で帰るから、大丈夫だし、ね!」

「……却下です。」

結局、自力で歩けない私をルークが私を抱き抱えようとしたら、バン!っと扉が開きこの国の王太子マクミラン=グローリが息を切らせながら入ってきた。
見事な金色の髪に青い瞳のザ!王子って風貌のイケメンです。

「ジャスミン嬢が怪我をしたと聞いたんだが、…今日は保険医は不在だったはずだが……手当は…済んだようだな…」

「ええ。私が手当いたしました。ご心配には及びません。殿下、私たちはこれから、帰宅しますので失礼いたします。」

「殿下、わざわざご足労いただきありがとうございます。2、3日休めば問題ありませんので、これで失礼いたします。」

「そうか、そうだな、教師には私から伝えておこう。ゆっくり休んで早く治せ!」

そう言って私の手を取り指にキスをした。思わず、ヒッ!っと声が出そうになったのを我慢した自分を褒めたい。
殿下の“指にキス“は好感度がかなりアップすると起きるイベントだけど…確か場所は噴水のあるベンチでだから…関係ないか!

なぜだろう?ゲーム中なのに妙に疲れるのは、…疲労感は感じないはずなんだけど、…それに…痛みも…やっぱり夢の中かなぁ…。

殿下が教室に戻ってから、ルークは私を抱え馬車に乗り侯爵邸へと向かった。

私は馬車でもルークの膝の上で揺られ、そのまま眠ってしまい次に目覚めたのはジャスミンの部屋のベットの中だった。



_パチ_

目が覚めてVRヘッドを外そうと頭に、……無い…ふぅ、…落ち着いて…目を閉じて…開ける…あるはずのない、天蓋が見える
起きようと体を動かしたら、膝が痛い!…よし!落ち着いてー“ウインドオープン“……

_シーン_

“ステイタスオープン“

_シーン_

嘘でしょ、そんなバカな、ありえない、あるはずない!この体は私じゃない!私の本体は?まさか、…死んだ?
もしかして、意識不明で入院した?とか?ないな、自宅ワークで気づく人居ない…あー家政婦さんが居るはず、でも次は7日後だ!となると、ここは何?やっぱり妄想?
も、もう少しだけ、様子見よう。

うん、ちょっとだけ、長めの夢なんだよきっと、外見はヒロインだけど中身はモブです、いえ、モブ以下です。このままではこのゲームのイメージが壊れてしまう。お願い誰か夢だと言って欲しい。

あー携帯アラームセットしておけばよかったのかな~。誰か、VRヘッドを付けたまま寝ている本体わたしを起こしてくれませんか?






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