上 下
27 / 35
1章 巡りあい

26 招かれざる人

しおりを挟む
「ティア?おい!ティア?どうした?」

体を揺さぶられるまで、脳内整理の追いつかない私はザックが声をかけていた事に気がつかなかった。

正直驚いた!あり得なくはないが初めての体験とでもいうのだろうか? 初めて見た!
確かに古代魔法にはそれがあったが、実際それをするにはかなり大きな代償イノチを伴うので今までそれを試した者はいないと記憶していたが、私たちがいない2000年の間にいたのだろうか?
確かめる術はないけど……一体なんの為に……。

鑑定結果を伝えるために私はザックとアズモンド殿下を防音結界で包み他の者達を離れたところで控えさせた。

「簡単に結果からいうと異世界人。死んで転生ではなく、一応生きてる間に何者かにこちらの世界に呼ばれた。つまり召喚されたってこと。」

「「はっ!召喚?」」

「そう、私も言い伝えしか知らない話だったんだけど、“召喚魔法“遥か昔、大魔法使いが興味本位で作り出した魔法。生まれ変わる転生と違い生きている状態で全く異なる世界の人間を本人の意思とは関係なく呼び出す魔法で、大魔法使いがその時呼び出した者がかなり高度な文明と知識を持っている世界の者だった為、それを利用し傀儡として国を混乱に陥れたことにより、処刑され、この魔法は禁忌となったそうよ。
でも、欲深い者はいつの世も生まれてしまうもので、処刑される前に召喚に関する文献を残していたらしく、再び禁忌を破り呼び出した魔法使いが居た。その時召喚されたのはわずか13歳の少女。少女は知識はさほどないが、その身に魔法を付与することが出来たらしいの、魔法石に付与するように簡単に、好きな魔法を3つ。頭でイメージするだけでね!」

「好きなまほう?イメージ?オイオイ、そんな事出来たら簡単に世界を滅ぼせるじゃないか?」
流石ね、ザックはすぐにこの恐ろしさに気がついた。

「そうね、おそらく、でもそうならなかったの。召喚された少女は幼すぎた。ずっと怯えるだけで魔法使いの思い通りにはならなくて、自己防衛で無意識に強力な結界を作ってしまい誰にも壊すことができず、そこから出ることもなく短い命を終えてしまったのその魂が召される時に時間トキの神が現れどの世界においても異世界からの召喚を禁忌とする、破ったものは輪廻の輪から外し寿命を削ると告げた後、召喚魔法を使った魔法使いは1年後に突然亡くなったと言われ、それから召喚魔法は使われていなかったはず、それに使うには古代魔法という特殊な魔法が使えないと出来ないから、おとぎ話のように語られていたんだけど」


………2人とも暫し沈黙の後、ザックが口を開く。
「ティア、あの異世界人の詳細わかるか?」

「ええ、」



_鑑定結果_
*名前 工藤 ことみ
*種族 人間 異世界人(第7アース)
*性別 女
*年齢 30
*レベル 0
*属性 なし
*魔力 0
*付与 魅了 
*状態 幻影魔石移植(無力化) 光魔石移植(無力化)魔力の器(無力化)第7アースでの残命7秒
*装備 魅了ノロイアーティファクト(指輪)ーアイザックにより破壊され現在無効
*称号 招かれざる悪意 


以上_


一通り鑑定に関する話が終わったので結界を加除した。

結果を聞いて、ザックは

「魔石って人間に移植できるのか?そんなことできるやついるのか?」

「うーんいるんだろうね、実際3つも移植されてるから、もしかして異世界人だから?かな?」


とにかく、疑問は尽きないが、召喚された者だということがわかり、できれば召喚魔法使った者の情報が欲しい。それを踏まえて私が尋問することにした。

なんせ、アズモンド殿下だと話が進まないので私の側にマイとミミを控えさせ尋問を始めた。

理由は見ての通り、彼女はイケメン男子を見ると見境なく発情して興奮状態から、戻ってこないから、不本意ですが女性陣で尋問することにした。



牢の前に立つと先ほどとはうって変わり、不機嫌丸出しでこちらを見た。

「初めまして、工藤ことみさん、これからいくつか質問させていただきますね。キチンと質問に答えていただけたら、大好きなアズモンド殿下に合わせて差し上げます」

「まじ!」

視界から外れたところにいるアズモンド殿下の『なっ!冗談じゃな、モゴッ、ウーウー』と抗議の言葉をザックに遮られている雑音が聞こえるが、こういうタイプは餌を与えた方が話はスムースなので無視します。

「ところで、あんた誰?なんで私の名前知ってんの?あいつの仲間?」
ん?あいつ?あらら~いきなりヒットしたわね。

「あいつとは?どなたですか?」

「私を呼んだって言ってたやつよ」

「どんなかたでしたか?お名前は聞いてますか?」
多分名前は教えてないと思うけど、特徴ぐらい聞けるといいんだけど、

「名前は知らない。フードで髪の色はわかんないけど、目が緑だったから私はグリーンって呼んでたけど、親切な人だった。色んな魔法くれて希望通りの美女にしてくれた私はこの世界のヒロインだから呼んだんだって、ヒロインはたくさんのイケメンに愛されるのよ。私の世界の逆ハー小説みたいにね。」

「??ギャクハー?」
なんだそれ?

「キャハハ、知らないの?ハーレムの逆よ王様がたくさんの美女を侍らしてるでしょ、その逆で私が女王になってたくさんのイケメン侍らすのよ。ヒロインは多くのイケメンに愛されるのよ。アンバルの次はアズ様だったのになぜかアンバルの攻略失敗しちゃった。」

「……それでアズモンド様を攻略?した後は?」

「決まってるじゃない皇妃になってクリスタ王国のアイザックを愛人するのよ、最高のハーレム完成でしょ、ふふふ…」
ピキっ!落ち着け~私こんな雑魚にキレちゃいけない…

「実際それは難しいのでは?アズモンド殿下は独身だけど、アイザック大公殿下は奥さんがいるし愛妻家よ」
よし!穏やかに言えた!えらい!。

「あーそれは大丈夫、グリーンが私がアイザックに呪いかければ大丈夫って言ってたし、その間に奥さんの方はグリーンが連れてくって言ってたから」

ビキ!ビキ! 

壁に亀裂が……ま、まずい!ザックの魔力が漏れてる建物壊す気か?この辺で切り上げよう

「お話ししてくれて、ありがとう、じゃあ、アズモンド殿下呼んでくるから、じゃあね」

すぐザックにもとに向かい抱きしめて落ち着かせた。セーフ?セーフだよね…。

「アズモンド殿下、ほんのすこーしお相手してあげて~私を嘘つきにしないでね~お・ね・が・い・ね」
必殺祈りポーズに上目使いでどうだ!

「…うぐっ!…」

「じゃ~ね~」

「あ!ま、待て置いてくな」
聞こえないふりしてさっさと地下牢を後にした。
最優先はザックの怒りを鎮めること、これ重要案件です。魔王を怒らすと怖いんだぞ!




___________


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

前世変態学生が転生し美麗令嬢に~4人の王族兄弟に淫乱メス化させられる

KUMA
恋愛
変態学生の立花律は交通事故にあい気付くと幼女になっていた。 城からは逃げ出せず次々と自分の事が好きだと言う王太子と王子達の4人兄弟に襲われ続け次第に男だった律は女の子の快感にはまる。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~

一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、 快楽漬けの日々を過ごすことになる! そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!? ※この物語はフィクションです。 R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

処理中です...