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15 不覚にも

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帰ってきました。我が家に帰ってきた。

ふ、不覚にもトーヤさんの顔見たらホッと気が抜けて号泣しちゃった。張り詰めていた心がガラスが割れるようにパリンと割れた。

また、逃げてしまった。向きあう勇気と自身がなくて、心地いい空間にいては気がしてどうしようもなく逃げたくて、大人気なく逃げた。結局成長してないんだな、後ろばかり見てるから、成長する筈もないか、…ハハハ

私だって、前を見て心が求めるままに素直になりたいが、何かが、…それに…ブレーキをかける…何かが引っかかり気持ち悪い。それが、何かわからないが時間が経つほどに寂しさと虚しさが押し寄せてくる。それを忘れようと、仕事に没頭することにした。


__カラン__

「リリィはおるか?リリィを呼んでくれ!」

「……、入ってくるなり、一体なんの冗談ですか?目の前にいるじゃ無いですか?それともちょっと合わない間に耄碌もうろくしましたか?」

「お?其方が、リリィか?本物か?我の知っておるリリィは大層綺麗な顔しとったが、……今、目の前におるのは……なんとも目の下の隈が酷い……お世辞にも綺麗とはいえぬオナゴがおるが……クククク、アハハハハ、_街で噂になるほどに、ほんに酷い顔じゃ、」

「………、(しばくぞジジィ)」

「久しぶりの挨拶がそれですか?他に言うことないんですか?私はこの腕が売りで顔が売りじゃないんでブサイクでもいいんです~。全く、私が帰るの待ち侘びていたんでしょ、ちゃっかり私がここに居ないにも関わらず無茶オーダーしていったみたいですし、面倒でしたが、作っておきましたよ!たんまり請求させてもらいますからね…」

「どれどれ、出来を確認せねば払えぬぞ!流石に今回のは難しいかと思っておるからな。」

「ご心配なく、完璧です!姿や風景を記憶する魔道具だったのでかなり苦労しましたが、透度の高い水晶と4色の魔石を使って完成させてますから、それなりにお値段は高いですけど渾身の作品ですよ。もう少し小型化できればいいんですが今はこれが限界ですね。」

「おお、これは素晴らしい、口は悪いが腕は流石よのう。ほんに其方の魔道具は他に類を見ないほど良い出来じゃ!我があと300歳ほど若ければ口説き落とすとこじゃが、そうじゃ我の孫の嫁にならんか?おそらく、皆が言う所のイケメンとやらになるぞ!」

「……寝言は寝て言ってください…国王様のお孫さんはまだ2歳じゃないですか?面白すぎて笑いも出てきませんよ~」

「問題ないぞ!我の一族は長寿だから400年はいけるぞ!18歳差なんて微々たるものではないか?」

えーこの話まだ続くの~全く暇じゃないんだろうから商品受け取ったら城に帰ればいいのに…。

「……20年後にイケメンになってたらまた話持ってきてください。請求は後日執事さんを通してさせていただきますね。」

「久しぶりに会ったのに、つれないのう、おお、そうだ!リリィに渡すものがあった。ほれ!」

真っ白い……もふもふ…もふもふ…!!

「フェンリルの子供じゃ、いつもの礼じゃ色々役に立つぞ!じゃぁな、次に会う時は美人に出迎えられたいからのう」

__カラン__

やっと帰った……。

やばい!もふもふ。もふもふ。いや~ん可愛い~癒される~柔らかい~もふもふ~
名前、なんにしよう?男の子かな女の子かな?ちょっと失礼……よくわからない……目が赤いから…ルビー(安易だけど)

「ルビーって呼んでいい?」
ぺろぺろ、すりすり、くぅ~ん

「ふふ、いいってことよねルビーよろしくね!今日はもう疲れたから、店じまい。一緒に食事して一緒に寝るのよ!行きましょう、」

そうだ!フェンリルってことは神獣なのよね、魔力持ってるから、念話できないかしら?意識を繋げれば意思疎通ができるんじゃない?

「ねぇ、ルビー、私と魔力繋いでみない?意思疎通ができると便利じゃない?もし嫌なら拒絶していいからね」

私はルビーのおでこに私の額をつけて魔力を流し意識を繋いでみた。拒絶は感じられない、よかった。

『初めまして、私はリリアンナ、リリィって呼んでね』

『…ルビー…リリィ……ワガ…アルジ…リリィ…ウレシイ』

『私も嬉しいわ。これからずっと一緒よ!よろしくね!』

『リリィ…イッショ…。ズットイル』

『さぁ、私たちの部屋に行きましょう』

その日私はルビーのもふもふを堪能して同じベットで一緒に眠りについた。

東国に帰ってきてから2ヶ月ずっと浅い眠りで万年寝不足だった私が久しぶりに朝まで一度も目覚めることなく爆睡できた夜でした。
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