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二十八話 木刀を構える。
しおりを挟む俺はアリアの住んでいる屋敷の端にある修練場のような建物に居た。
そして、その建物の真ん中でリナリーと向き合っていた。
リナリーは木刀を構えている。
状況が全く飲み込めないが……。
戦闘モードのリナリーを前にして、俺の眠気はどこかに吹き飛んでいた。
そして、なぜかリナリーの指に【ハーネットの指輪】が付けられていて、リナリーの声が俺の頭の中に流れてくる。
『ふー……いきますよ【肉体強化】』
リナリーは大きく息を吐いて【肉体強化】と呟く。
恐らくだが……リナリーは【肉体強化】というスキルを使っている。
スキルの名前を呟いた瞬間に全身の筋肉が不自然に盛り上がったように見えた。
あぁ……もしかして、これは……昨日話していたスキルを見せてくれるというヤツだろうか? 見せてくれるだけにしてはなんだか不穏な気配が……。
『あ、あの……』
リナリーがなんの合図なく一気に間合いを詰めて、持っていた木刀振るってきた。
俺はその木刀を間一髪のところで躱すことができたが。
アレ? 見せてくれるだけじゃなかったの!?
普通にいきなり切りかかってきた!!
『いや、まっ』
それからリナリーと俺は十分ほど戦った。
前に戦った時に癖でも盗まれていたのか、リナリーに打ち込まれる場面が多く、最後には木刀の先を首元に付きつけられた。
『スキルを実際にどう使っているのか。戦闘を通して見てください』
やはり、昨日言っていた通り、スキルを見せようとしてくれているようだ。
だが、やっぱり戦う必要はないと思う。
『あの……戦う必要ある?』
『もちろん、ありますよ。戦闘系のスキルは戦いの中で上達するものです。私が使って見せるので……見て学んでください』
リナリーは命がけで学べと言うのか……。
ただ、俺に考える余裕を与えてくれないようで、リナリーが距離をとって、再び木刀を構えた。
俺も気を引き締して、体を低くして臨戦態勢に入る。
不意にリナリーが木刀を振り上げた。咄嗟に何かしてくること察した俺は一歩下がる。
『いきますよ【斬撃】』
リナリーが【斬撃】と呟いて木刀を斜めに振り下ろした。
すると、木刀の剣先から薄い空気の刃が生み出されて、一直線にすごい勢いで俺の方に飛んできた。
今度は【斬撃】というスキルの実践のようだ。
俺は飛び退いて斬撃を躱す。
しかし、飛び退いた場所に斬撃が放たれ……襲いきた。
どうやら、リナリーが木刀を振り上げて再び斬撃を放ったようだ。
俺はその斬撃を何とか爪先で受けようとしたが……。
斬撃の勢いで弾かれるように床へ吹き飛ばされた。
何とか床に着地した俺に対して、間合いを詰めていたリナリーが小さく笑う。
そして木刀の先を俺の首元に突き立てた。
『ふ、よく受けたものです。しかし、前に戦った時の方が強くなかったでしたか? いや、まぁいいです。もう一回やりましょう』
『ぐ……』
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