4 / 8
元男爵令嬢からの手紙
しおりを挟む
親愛なるお父様へ
お父様、助けて!
今、貴族牢の中からこれを書いています。
王太子妃の私が、何でこんなところに閉じこめられなきゃならないの!
私、ちゃんとお父様の言うとおりにしたのよ。
アレクシス様に近づいて、彼に気に入られるように。彼の願いは何でも聞いたわ。愚痴も聞いてあげて、身体だって捧げた。その甲斐あってようやく王太子妃になれたのに。
結婚してから、アレクシス様は変わってしまった。
いっつも不機嫌な顔をして、相手をしてくれないの。それに、私に毎日十時間も講義を受けろっていうのよ?
そんな長い時間椅子に座っていたら、腰が痛くなっちゃうわ。それに先生たちはとっても厳しくて、すぐに私を叱るの。
あの人たちの話は難しくてぜんぜん分からないんだもの。自分たちが教えるのが下手なだけじゃない?だからクビにしてやったら、陛下から怒られちゃった。アレクシス様も庇ってくれないし……。
それもこれも、あの女のせいよ。
先生たちはみんな、クリスティーネ様ならこのくらい余裕で出来ましたよなんて言うの。ムカつく!
しかもあいつ、女のくせに執務を手伝っていたんですって。
アレクシス様が、執務が溜まって困るとグチっていたから、あの女を呼び戻したらと提案してみたのよ。田舎領主に嫁がされて後悔してるだろうから、今ならホイホイ戻って来るんじゃないかって。
なのに。戻ってきた手紙を読んだアレクシス殿下は怒り出して、「だまされた!」と叫んで私を殴ったの。ひどくない?
訳が分からなくて泣いてるのに慰めるどころか、私を引っ張って貴族牢に押し込めたの。
きっとあの女が、何か告げ口をしたに違いないわ。
こんなことなら、ディンケル侯爵の令息か、アルトナー伯爵令息へ嫁いだ方が良かった。
ううん、今からでも遅くないわ。あの人たち、私を熱心に口説いていたもの!
だからお父様、助けに来て。
お父様はいつも私だけが可愛い、愛してるって言ってくれたわよね。お義母様は不細工、お姉様もお義母様にそっくりで可愛くないって。
ここはとても寒いし、侍女もいなくて寂しいの。
なるべく早くしてね!私、待ってるから。
貴方の可愛い娘、グレーテより
お父様、助けて!
今、貴族牢の中からこれを書いています。
王太子妃の私が、何でこんなところに閉じこめられなきゃならないの!
私、ちゃんとお父様の言うとおりにしたのよ。
アレクシス様に近づいて、彼に気に入られるように。彼の願いは何でも聞いたわ。愚痴も聞いてあげて、身体だって捧げた。その甲斐あってようやく王太子妃になれたのに。
結婚してから、アレクシス様は変わってしまった。
いっつも不機嫌な顔をして、相手をしてくれないの。それに、私に毎日十時間も講義を受けろっていうのよ?
そんな長い時間椅子に座っていたら、腰が痛くなっちゃうわ。それに先生たちはとっても厳しくて、すぐに私を叱るの。
あの人たちの話は難しくてぜんぜん分からないんだもの。自分たちが教えるのが下手なだけじゃない?だからクビにしてやったら、陛下から怒られちゃった。アレクシス様も庇ってくれないし……。
それもこれも、あの女のせいよ。
先生たちはみんな、クリスティーネ様ならこのくらい余裕で出来ましたよなんて言うの。ムカつく!
しかもあいつ、女のくせに執務を手伝っていたんですって。
アレクシス様が、執務が溜まって困るとグチっていたから、あの女を呼び戻したらと提案してみたのよ。田舎領主に嫁がされて後悔してるだろうから、今ならホイホイ戻って来るんじゃないかって。
なのに。戻ってきた手紙を読んだアレクシス殿下は怒り出して、「だまされた!」と叫んで私を殴ったの。ひどくない?
訳が分からなくて泣いてるのに慰めるどころか、私を引っ張って貴族牢に押し込めたの。
きっとあの女が、何か告げ口をしたに違いないわ。
こんなことなら、ディンケル侯爵の令息か、アルトナー伯爵令息へ嫁いだ方が良かった。
ううん、今からでも遅くないわ。あの人たち、私を熱心に口説いていたもの!
だからお父様、助けに来て。
お父様はいつも私だけが可愛い、愛してるって言ってくれたわよね。お義母様は不細工、お姉様もお義母様にそっくりで可愛くないって。
ここはとても寒いし、侍女もいなくて寂しいの。
なるべく早くしてね!私、待ってるから。
貴方の可愛い娘、グレーテより
558
お気に入りに追加
369
あなたにおすすめの小説
久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました
れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた
留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて
なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ
こんな国、捨てて差し上げますわ
藍田ひびき
恋愛
「ユリアーナ!本日をもって、お前との婚約を破棄する!」
『豊穣の聖女』ユリアーナは婚約者である王太子アルベリクから、突然に婚約破棄を言い渡された。しかもアルベリクは妹のフランシーヌと新たに婚約すると言う。
聖女を掲げる神殿側はそれを不服とし、ユリアーナとフランシーヌのどちらが聖女に相応しいか、試験をするように助言するが…?
※ 4/27 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
【完結】「婚約者は妹のことが好きなようです。妹に婚約者を譲ったら元婚約者と妹の様子がおかしいのですが」
まほりろ
恋愛
※小説家になろうにて日間総合ランキング6位まで上がった作品です!2022/07/10
私の婚約者のエドワード様は私のことを「アリーシア」と呼び、私の妹のクラウディアのことを「ディア」と愛称で呼ぶ。
エドワード様は当家を訪ねて来るたびに私には黄色い薔薇を十五本、妹のクラウディアにはピンクの薔薇を七本渡す。
エドワード様は薔薇の花言葉が色と本数によって違うことをご存知ないのかしら?
それにピンクはエドワード様の髪と瞳の色。自分の髪や瞳の色の花を異性に贈る意味をエドワード様が知らないはずがないわ。
エドワード様はクラウディアを愛しているのね。二人が愛し合っているなら私は身を引くわ。
そう思って私はエドワード様との婚約を解消した。
なのに婚約を解消したはずのエドワード様が先触れもなく当家を訪れ、私のことを「シア」と呼び迫ってきて……。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します。
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる