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第5章 本当の気持ち
第15話
しおりを挟むその夜。ついに決戦の時がやって来た。
「んで、話って何だ?」
布団の上に胡坐を掻きながら煙管を口に咥えた歳三は、頬杖をつきながら私にそう尋ねる。
ぎゅっと両膝の上の手のひらを握りしめる。
ともすれば震えそうな唇を、そっと開いて言葉を落とす。
「二つ、あるんだけど、」
「勿体つけんなよ、どうした?」
勇気が持てない臆病者の私は、まず初めに、報告しなくてはならないことから口にのせる。
「……私が、未来から来た事……芹沢さんに、気が付かれた」
「はぁ!?」
驚いたように大きな声を上げた歳三に、「しーっ!」と唇に指を立てる。
歳三は、自分でもハッとしたように煙管を置き、その口を塞ぐ。
「……何でんなことになってんだよ」
「……バレたのは、あの、焼き討ちの日」
ごうごうと火の粉を飛ばす屋根の上で、尋ねられた事、尋ねた事。それに対する答え。
ぽつりぽつりと私が落とす言葉に、じっと黙ったまま、歳三は耳を傾ける。
「……クッソ、あの野郎、無駄なとこだけ頭回しやがって……」
チッと小さく舌打ちをして、腕を組み直した歳三に、そっと目を伏せたまま私は言葉を続ける。
「……芹沢さんは、お梅さんの事が如何しても欲しかったんだって」
「そうかよ」
そう言って、もう一度煙管を加えた歳三の視線は、何処か遠くを見ているようで。
一体、その瞳に映る人は、誰なのだろうか。
何度も決意をしたというのに、どんどん私の中の臆病な部分がむくむくと頭をもたげて膨らんでいく。
「これから、如何すんだよ、バレちまったんだろ?」
「……でも、あの後別に何も言ってこなかったよ、芹沢さん」
そうなのだ。
あの傍若無人な筆頭局長は、未来を知っている私を使わない手は無いだろうに、あの日から私に何も言ってこない。
絶対に色々と質問攻めにされると思っていたのに。
「……奇妙だな、アイツが何も言わないってのも」
「だよね……」
「他の奴らには何も言われないのか?」
そう尋ねてきた歳三に、そう言えば、と思う。
芹沢さんの事だから、直ぐに新見さんや平山さんなどに言ってもおかしくは無いのに、誰も私の事を気にする素振りはない。
「あ、」
「あ?」
「……片付けしてる時、新見さんに一回だけ会ったけど……」
でも、その時も別に何も聞いたりしては来なかった。
「……知ってるとしたら、新見さん、かな」
「そうか、……にしても変だな、黙ってても芹沢の得になる事なんてねぇのに」
「そうだよねぇ……」
2人してその理由を考えたけれど、特に浮かんでくる考えもなく、しん、と布団の間に沈黙が落ちる。
じっと考え込んでいた私に、歳三が言葉をかけた。
「……考えてても埒が明かねぇから、何かあったら報告しろ」
「……うん……分かった」
「で?」
「え?」
「……二つあるって言ったろ」
じっとその漆黒の双眸に捕まった私の視線。
緊張を飲み込むように、ごくり、と喉が鳴った。
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