ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第2章 大坂出張

第3話

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だから、とそのまま言葉を続ける。



「……歳三に、ちゃんと謝ってね?」

「………っ」



瞬間、そうちゃんは子どもみたいに頬を膨らませてそっぽを向く。



「嫌だ」



そう、私が芹沢さんに殴られた日から、二人は口をきいていない。

そうちゃんが意地になったように、歳三のことを無視していて。

何でかは聞いても二人は絶対に教えてくれないけれど、その状態が続くのは絶対に良く無い事で。

どちらかが謝らない限り、きっと意地を張り続けてしまうだろうから。

それ以前に、そんな状態の二人を見ているのは私が辛かった。

だから、おちゃらけながらだけれども、言葉にのせてみた。



「……私とも約束してよ?」

「何で? 何で俺が謝んなきゃいけないの」



一気に不機嫌になったそうちゃんは、その瞳を眇めて、屁理屈を言う。



「だって、殴ったでしょう? しかもまだ謝ってないでしょう」

「だって、あれは土方さんが悪いんだよ」

「歳三が悪かったとしても、人を殴るのは良くないでしょ?」

「……むう」



そうだけど、そう言いながらもそっぽを向いてるその端整な横顔を、ぴんっと指ではじく。



「いて」

「ほーら。そうちゃんも私と約束。私が返ってくるまでには、歳三に謝って、仲直りして?」



そう頼み込めば、数秒の間があいて。

にまりと笑ったそうちゃんが、人差し指をピンと立てて。



「じゃあ璃桜、俺の言うこと一つ聞いて」

「は?」



何を言い出すのかと思えば。

とんとん、と己の頬を叩くそうちゃん。



「ちゅーして?」

「へ」

「ほら、土方さんと仲直りしてほしいんでしょ? 早く」

「……いや、あの」

「昔はよくしてたじゃん。ほっぺにちゅー」

「いやいやいや、今はほらもう、」

「何? 聞こえないなぁ? じゃないと俺、謝んないよ?」



ああもう。
これでも兄貴か。



「もう、仕方ないなぁ……」



少しだけ首をあげて。

昔から変わらない艶やかな頬に、唇を軽く触れさせた。



その頬が、一刷毛朱に染まっていたことには、全く気付かずに。




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