ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第3章 ひとびと

第17話

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何人かどころじゃない。小中高、合わせて10人弱だ。

大学に入ってからは、流石にそこまで考えなしに動けるほど馬鹿ではなかったから、彼氏はいなかった。


「……そうか」


それっきり黙って目を閉じた歳三を見つめる。

………酷いな、私。
そうちゃんが居なくなって、両親は殺されて、その非日常から抜け出したかった。

普通の人になろうとして、その時付き合っていなければ、告白してくる男の子みんなと付き合ってた。
期間は、最長半年、最短1か月、平均3か月。

だからキスをした相手は、1人だけだった。
容姿は、それなりにそれなりだという自覚はある。多分、上の中くらい。

そのお蔭で、剣道をやっている変わり者の私に、告白してくれる人が割と多かったと思う。

相手のことが好きでもないのに、付き合って、結局みんな私との間にかなりの温度差を感じて別れるということの繰り返しだった。


それを知ったら、歳三は、どう思うんだろう。
そんなことを思いながら、下ろされた髪がさらさらと布団に零れるのを見れば、不思議と懐かしい気持ちが心に溢れる。

それを奇妙に感じながらも、何故だか懐かしさを受け入れている自分がいた。


「……歳三は?」

「おめぇ、未来から来たんだろ。俺の女関係聞かなくても知ってんじゃねぇのか」


懐かしい気持ちを終わらせたくなくて、会話を続けようとすれば、ばさり、と一刀両断する答えに、どうせ、御贔屓の女が沢山いるんでしょうと、そう思った。


「……この変態。女の敵」

「あ?襲うぞコラ。……俺は何もしてねぇよ。女たちが勝手に、何だかんだ騒いでるだけだ」


…………そう言うのが女の敵だっていうのよ。
じっと黙って膨れていれば、くすりと声が降ってきて。


「いつかてめぇも、島原に連れてってやるよ」

「そんなの要りません」


誰が、歳三が持て囃されているところを見たいと思うのか。
笑い声と共に発せられた言葉に、拒否の返事を返して、ふん、と寝返りを打った。


「……まぁ、そんな暇があればだがな」

「……あるわよ、それくらい。だって、」


漸くとろとろと眠気を感じてあくびをしながら、歳三の言葉に答えれば、途中で遮られた。


「それ以上話すなよ、俺は未来が知りたいわけでもなんでもねぇ。むしろ、敷かれた道の上を歩いていくなんざまっぴら御免だ」


そのまま黙っていれば、何とも男気を感じる言葉が返ってきた。
…………そう言うとこも、土方歳三だなぁ…、なんて、馬鹿なことを考えて、もう一度、くぁ、とあくびをし、目を瞑った。


「……御休み、璃桜」


どうしてだか歳三らしくなく、優しげに、艶やかに落とされたおやすみを最後に、私は眠りにのまれていった。



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