ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第2章 桜の導き

第12話

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「えええ?! 土方さんの小姓?! ダメダメダメ!! 璃桜、襲われちゃう!!」

「は?何言ってんだ莫迦、こんな餓鬼襲うわけないだろ。」


餓鬼、って言われた。
私、これでも19歳なんだけどな。宗次郎と同い年なんだけどな。


と言うか。
さっきから気になっていたことがある。


「あのぅ、」

「あ?」

「何、璃桜」


若干つかみ合いに発展していた二人が、同時にこちらを向いた。


「…………宗次郎のこと、そうじ、って呼んでますよね?何で?」


至極簡単に、土方さんが答える。


「ああ、こいつは、総司だ」

「あ、ごめん璃桜、言ってなかったよね」


え、待ってよ。


「そうじ、って………、」


嫌だ、嘘。

そんなの、あるはずないじゃない。


ここに来て、新撰組について勉強していた自分も、自分の知識も、呪いたくなる。


「うん、俺、ここに来てから名前変わったんだよ。今の名前は、」


止めて、聞きたくない。
聞いてしまったら、もう、平穏に暮らせる微かな望みさえなくなってしまう。

私の願い虚しく、宗次郎が、口を開く。
落とされた、言葉は。





「………………沖田、総司だよ」



今、最も聞きたくなかった、その名だった。



嫌だ、そんなの嫌だよ。
そうちゃんが、私の双子の兄が、沖田総司?

ぐらりと、今日最大の眩暈が私を襲う。


「そんなの、嘘………………」

「え、璃桜?!」

「おい、どうした?!!」


焦る二人がぼやけていく。


「…………っ、」


受け止めきれない真実に覆いかぶさられ、闇に吸い込まれていった。




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