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第2章 桜の導き
第5話
しおりを挟む「うん、その武士。なんか時空を超えちゃったみたいで、何故だか僕たちのうちに来てしまった。たぶん、地震のせいで、時空がゆがんだとか、そういうことなんだろうけどさ。当時は何もわからなかったけど、たぶん、その人、お偉いさんだったんだろうね、焦った武士は、問答無用で父さんと母さんを斬った」
時空を、超えて。
父さんと、母さんを、斬った?
時空を超えるのは、私も実際にしたことだから、もう、今は信じることができる。
と言うか、信じないわけにはいかない。
けれど、もう一つの言葉に、どっと体温が上がった気がした。
「待って、お父さんと、お母さんは、そんなので、……殺されてしまったの……?」
「うん。ねぇ、璃桜? そういうことって、この時代では、普通に起きていることなんだ」
「…………許せない……」
怒りでふつふつと躰が熱くなるのを感じる。
やり場のない憤りを感じて、目を吊り上げていれば、ぽん、と頭を叩かれた。
「そんなに、興奮しない。まだ、話は続くんだから」
「だって……、そうちゃんは、平気だったの?」
「…………そんな訳、無いじゃない。俺だって怖かったし、悲しかったし、いろいろごちゃまぜな感じがしたよ、その時は」
「………うん、」
私、馬鹿みたいだ。
宗次郎は、現場を見てしまって、すごく辛い思いをしたと思う。
私なんかよりも、ずっとずっと。
それでもこうして何でもないように話してくれている。
他でもない、私が頼んだから。
「……………ごめん」
「ふふ」
そんなことを思って、どうにかこうにか自分の怒りを押さえれば、苦笑気味で諭すように、いい子、と頭を撫でられた。
さああ、と春風が二人を撫でるように流れていく。
旧暦だから、1か月強季節が進んでいるのか、だから温かいのか、なんて他愛もないことが頭を掠めた。
その間も、ぽんぽん、と撫でられ続ける頭に、少しだけ膨れる。
「…………なんか、子ども扱い」
「璃桜は、俺の双子の妹でしょ」
「……そうだけど…、」
同い年なのに。
そう言いかけた私の言葉を遮って、宗次郎はにやりと笑った。
「で、俺のことに気が付いた武士は、勿論血濡れた刀を振りかざして俺に向かってきた。小さな俺が武士なんかにかなうわけないでしょ?死を覚悟した時、また揺れが来た。そしたら、廊下にいきなり光の穴が開いたんだ。俺と武士は、そこに落ちた、というか、吸い込まれた」
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