196 / 252
4カ月遅れの誕生日
3
しおりを挟む今でも信じられないけど、目覚めてからというもの、辺りの魔力に意識を集中すると、魔力が視覚で見えるようになっていた。
初めは人を取り巻く靄の正体がなんなのか分からなくて、お見舞いに来てくれていたメイに聞いてみたけど、何言ってるの?と首を傾げられただけだった。
これが魔力だと気付くまで、幻覚でも見えるようになったのかと不安に思ったものだ。
この目に映る魔力が本当に正しいのなら、ディオンの魔力は驚く程に強大だ。
どれくらい強大かというと、外を歩いているSクラスの生徒とは桁違いで、世に名が知れ渡っている学園長よりも断然多い。
でも、過去の言動を思い出すと、ディオンはその魔力を隠しているように思う。
だから、すぐにでも真相を知りたい所だけど、何か理由があるんだろうと思って聞いていない。だから見える事も話していない。
本当は、学園中でも頂点と言われる人たちでも、魔力を微かに感じるのが関の山なのに、こんなにハッキリと視覚で見えるのはどういう状況なのかも聞きたいんだけど……。ディオンなら知ってそうだし。
それに、私の魔力が安定しない時に、密《ひそ》かに私の魔力を整えてくれていた事にもお礼もちゃんと言いたい。
でも、ディオンの凄い魔力を知っていないフリをしないといけないから、しっかりお礼を言えないのがもどかしい。
「何さっきから険しい顔してんだよ」
そう言われて意識が戻ってくる。
「人生って難しいし、分からない事だらけだなぁ~って思って」
「は?なんだそれ」
謎だらけで気持ち悪いって言ってたディオンの気持ちが、今なら凄く分かる気がする。
「当たり前だろ。お前まだ17年しか生きてねぇんだから」
すぐに17という数字に違和感を感じて、目をパチクリとさせる。
「……17……?あっそうだった!私もう17歳だったんだね!」
誕生日直前に倒れて、そのまま17になったんだった。
「……しゃーねぇ、誕生日を祝ってやるか」
突然出て来たその言葉に数秒考えてから首を傾げる。
「誕生日って……ディオンの?」
「お前、聞いてたか?俺は祝ってやるか、って言ったんだよ」
「それは知ってるけど……。じゃあ誰の誕生日?」
「お前だろ。話の流れ読めよ」
「えっ……」
ディオンは、私の誕生日を勘違いしてるんだろうか。
「私の誕生日は12月だよ?そして今は4月で……」
「知ってる」
「えっ……」
その言葉で、余計分からなくなる。
「あんな事になったのは俺の読みが甘かったせいだ。そのせいでお前の誕生日をすっ飛ばしてしまったから、せめてもの償いをしてやるって言ってんだ」
償い……って、なんだかディオンらしかぬ言葉だなと思いながらも、続く言葉に耳を傾けた。
「やりたいことや、欲しい物、なんでも言え。俺ならだいたいの事は叶えてやれる」
なんでも……
叶えてくれる……?
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!
ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。
苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。
それでもなんとななれ始めたのだが、
目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。
そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。
義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。
仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。
「子供一人ぐらい楽勝だろ」
夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。
「家族なんだから助けてあげないと」
「家族なんだから助けあうべきだ」
夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。
「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」
「あの子は大変なんだ」
「母親ならできて当然よ」
シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。
その末に。
「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」
この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ
中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。
※ 作品
「男装バレてイケメンに~」
「灼熱の砂丘」
「イケメンはずんどうぽっちゃり…」
こちらの作品を先にお読みください。
各、作品のファン様へ。
こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。
故に、本作品のイメージが崩れた!とか。
あのキャラにこんなことさせないで!とか。
その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)
冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
◎途中でR15にするかもしれないので、ご注意を。
山登りの最中に異世界転移した話
(あ)から5行
BL
山登りの最中に異世界転移しちゃった主人公が奴隷を買ってその子と幸せに暮らす物語
主人公チート持ちだけど、あまりチートを活かせません。
どちらかと言うと奴隷の子の方がチートだと思います…
内容修正とか結構します!すみません!
初めて本を書きます!誤字脱字多いと思いますけどあたたかく見守ってくれると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる