【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか？

不安定な魔力

11

「……呪いだよ。呪い」
面倒くさそうに口を歪ゆがめながら言うディオンに驚く。

「えっ！？呪い！？」
「じゃなきゃ、こんな所までくるかよ。下手したら一生戻れないかもしれないんだぞ？別に生《せい》に未練もねぇけど」
やっぱり、そういう場所なんだ。

「呪い……って、ディオン！誰かに呪われてるの！？」
「多分な」
「大丈夫なの！？」

ディオンに変な所が無いか、ここから見える所は全部見てみたけど、何もおかしな所は無いように見える。

「大丈夫じゃねぇよ」
と言ったディオンは、見透かすような目に変わる。
「……ねぇとは思うけど、お前がこの呪いを掛けたわけじゃねぇよな？」

「へっ！？わ、私が！？そんな事するわけないじゃない。っていうか呪いをかける方法さえ知らないわよ」

「だよなぁ……。誰なんだよ。こんな変な呪いかけたの」
見つけたら絶対に倍返し……いや、１００倍返しにしてやる！と、口を歪《ゆが》めて意気込むディオンを覗のぞき込む。


「それって、どんな呪いなの？」
「え、それはお前が……」
話の途中で急に固まったディオンは、ゆっくりと視線を上に移動すると渋い顔をした。


「私……？」
と言いながら視線の先を追いかけてみる。
でも、そこにあるのは真っ暗な空間だけ。

「ディオン、どうしたの？」
ディオンに向き直してから首を傾げると、どこか不機嫌な口調で言われる。
「煩うるせぇ。集中出来ねぇから黙っとけ！」

そんな偉そうな言い方をしてくるくせに、手から伝わるディオンの体温はとても暖かくて、心地いい。
そして、凄くドキドキする。

呪いのせいであっても、ディオンがこんな所まで迎えに来てくれたという事が、凄く嬉しい。
早くここから抜け出した方がいいって分かっているのに、1秒でも長くひっついていたくて、まだ着かないで欲しいって願ってしまうワガママな自分が顔を出す。


ディオンの横顔を見ると……
胸がギュっと苦しくなる。


これは、もしかして……
『意識』というやつなんだろうか？


…………

……



「……ル……」

「……シエル……」

そんな声にだんだん意識が戻ってくる。


「シエル！」


瞼まぶたを開けた私の視界に、自分の部屋の天井とメイの泣き顔が映った。