【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか？

屋上でのひと時

3

瞬時にそう思ってしまった私は、もぐもぐと動く綺麗な形の唇をガン見してしまう。

「ん？」
なんだよ、と言うと長い白銀のまつ毛がスッと持ち上がってこちらに目が向く。
切れ長の目と目が合って、思わずドキっとしてしてから大きく首を振った。

「な、なんでもない！！」
手元にある半円にくり抜かれたサンドイッチに視線を落とす。

「んだよ、味見しただけだろ。お前って本当にみみっちぃな。ってか我ながら上手い出来栄えだな」

玉子サンドを食べられた事を悔しがってると思っているようだ。
私はただ、今のが間接キスになるんじゃないかと戸惑ってるだけなのに。

うっ……
この玉子サンドを食べたら、間接キス……になる？……よね？

これを一体どうしたらいいのかと微動だにできなくなった私は、脳内で酷ひどい葛藤を繰り広げ始める。


食べる？
食べない？

でも食べなかったら、変に意識してるみたいに思われる。
それに正直、美味しすぎて全部食べてしまいたいくらいなのに……

じゃあ、どうすればっ！！
と悩む私の口に、またサンドイッチが飛びこんで来た。

「んん！！？」
「食うのおせぇよ。この後、俺の授業だってこと忘れてんじゃねぇだろうな」

そう言われて、少し急いで食べて、息をついてから答えた

「覚えてるわよ」
忘れてるわけないじゃん。
世界一会いたくないあんたの顔を拝まないといけない日なんだから！


あぁ、でも……、それにしても美味しいっ！
口に残る旨味だけで幸せを感じてしまう。


あれ？でも結局これは間接キスになってしまったんだろうか？
前世を含めてもキスした事がないんだし、こんなのをカウントに入れないで欲しい。


「ふぅん、ならいいけど」
普段と変わらないディオンが映って、なんかムカついた。

だってこれじゃ、私だけが勝手に意識しちゃってるみたいで……

…………ん？
意識っ！？

いやいや、ないない！

こんな奴に『意識』なんてもの、絶対ないし！一生無い！