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殺人鬼と呼ばれる子

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「しかも今回の事件で、あの子が塔から出所する日が2か月も延期になったらしいし……怖ぇよ。俺、絶対に総看守みたいになりたくねぇよ」
「馬鹿野郎!俺もだよ。あんな酷い火傷……見たことねぇよ。
これなら上層の方がマシだよ」
「ほんと怖いよな。あんな小さいのにもう既に何十人って殺してんだもんな」
「噂通りのマジの殺人鬼って感じだよな」
「なのになんで副看守はあの子を庇うんだろうな」
「ああ、なんかいつも気にしてるよなぁ。って、もう昨日付けで自主退職したから副看守だけどな」
「そうだったな」
「副看守は優しかったのになぁ~なんで退職したんだろ」
「さぁ?昨日の総看守の姿にショック受けてたけど……。あっ、後、この仕事が向いてないって言ってたらしいぜ」
「ふーん」

それからは、僕に怯え震える下っ端の看守が僕の世話をしていたおかげで、何の問題もなく2か月余りの塔での謹慎を終え――

僕は学園に戻った。




「カミヅキ・ディオンくん。卒業確約おめでとう!」
呼ばれた学園長室に入ると、パーン!と大きな音とカラフルな紙吹雪が飛んだ。

一瞬驚いてからニコニコ笑顔の白髭白眉の学園長の手元を見ると、クラッカーがあって紙吹雪の正体を知る。

「さぁ、入ってそこに掛けてくれたまえ」
機嫌よく言われて小さく頭を下げ、学園長が座った椅子の向かい側にある長椅子に腰を掛ける。


すると学園長はポンッとリンゴを出し、次にガラスのコップを出した。

コップは机の上にコトッと置かれる。
そして宙に浮いているリンゴはコップの真上に移動し、ゆっくりと丸みが無くなって細長くなっていく。

リンゴから垂れる汁は綺麗にコップに注ぎこまれ、落ちる汁が無くなったところで自分の前までスライドして来た。
それを見て、僕は首を傾げる。

「確か、リンゴジュースが好きだったと記憶してるが……違ったかな?」
「……合ってる」
そう言ってコップに手を伸ばすと、新鮮なリンゴの酸味とほのかに甘い香りが鼻を突いた。

「いやぁ~、それにしても7歳で卒業とは……初めて君を見た時に凄いと確信していたが想像以上だったよ!
このワシでも9歳で卒業だったのにの~。
3歳から始まって全て飛び級なんて、歴史の長い国立日本魔法学園始まって以来の新記録じゃ!」
学園長はそう話しながら、いや~めでたいめだたい、とシワを深めて自慢の長く白いひげを上から下へとでた。
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