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殺人鬼と呼ばれる子

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何度か看守同士が雑談している話を耳にしていたけど、何やらここの看守は1人で行動してはいけないというルールがあるらしい。理由は知らないけど。


そんな事を考えている僕の目の前に、ガンッという音を立てて雑にお皿が置かれた。
そのお皿の中にはゴミのようなものが乗っていて、嫌な予感がして看守を見上げる。
すると歪んだ笑みが浮かんでいた。

「ほら、えさだぜ?」


器も汚く、不衛生なのが一瞬で見て取れた。

「食えよ」

そう言われて顔を背けると、頭を押さえつけて無理やりこうべを垂れさせられ、その皿に顔を押し付けられる。

完全に腐ってる、なんなのか分からないゴミのようなものに、一瞬で吐き気をもよおす。

「ほらほら、食え!」

…………

……

結局、無理やり得体の知れない物を食わされた僕は、すぐに酷い腹痛に身よじった。

「うっ……」
すると総看守は、脂汗を出して痛みに耐える僕を見ながらケラケラと笑った。

「ゴミを食うなんて汚ねぇやつだな」

これは、れっきとした体罰じゃないのか?
塔の下層は体罰禁止だったはずなのに……

「おい殺人鬼。俺決めたんだ。お前があの学園を卒業したら……お前を、どんな方法を使ってでも拉致監禁してやるって」

見開き憎悪に満ちた目に息が詰まった。
ずっと飲み込めずに口の端に隠していたゴミも、そのせいで思わずゴクリと飲み込んでしまう。

「でな。俺に殺してほしいと土下座したくなるほどの苦痛を味あわせ続けてから、お前が動かなくなったらそこで初めて跡形もなく、この世から消してやるんだ。そしたら妻も子供も初めて報われるはずだ」


魔力は辿たどれる。魔力が多ければ多い程、辿るのは簡単だ。
だから僕を拉致なんてしても、すぐに捕まるのに。そういう事を知らないんだろうか?


でも……
そんな事、この人にはどうでもいいのかもしれない。

自分の身がどうなってもいい程に、僕を殺したいんだ。
それ程に恨まれているんだ。

「うっ……」
お腹がギュルルと鳴り、痛みで身をよじる。


「お前が生きてる事を許さない奴が山のようにいるのは知ってるだろ?俺はそいつらの代表となってお前を殺してやるんだよ。今からでも待ち遠しいなぁ~首洗って待っておけ……」

僕の髪を掴むと髪で持ち上げるようにして膝立ちさせた。
すると、「よっ!!」と言いながら勢いよく腹を膝でりあげられた。

「うっ……」
そのせいで、さっき食わされたものが勢いよく口から飛び出て、辺りに吐き散らかす。

すると僕の目の前にしゃがみ込んだ総看守は顔を歪めて笑った。

「くくっ。ほんと、お前は何されてもひと言も話さねぇな。
こんな話も出来ない出来損ないの殺人鬼を産み落とした母親はさっさと楽に死んでさぁ~。どうせならちゃんと自分の責任を全うしてから死ねよな。親として終わってるぜ」

その言葉を聞いて、とてつもない怒りが一瞬にして吹き上がるのを感じた。
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