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月夜
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しおりを挟む私は恐怖のあまり、すぐに叫んだ
……はずなのに、何故か自分の声が耳に入ってこない。
その事に驚き口に手を当てるも、何の異常もない。
「お前の行動、ほんと代り映えしねぇな。叫ぶのなんて読めてんだよ」
その言葉に、頭の上に浮かんだハテナマークが小さくなった。
まさか、私、魔法で声が消されてる!?
確かそんな魔法があるって、本で読んだ事がある。
奴は華麗に床にトンと音を立てて足を下ろした。
ふわりと髪が揺れ、長い白銀の前髪の隙間から鋭い視線が飛んで来る。
月明りで逆光に照らされた男は異様過ぎる程に美しくて、心底嫌いなのに、意思と反して見とれてしまう。
今日は3つの月が出る日。
だから夜なのにとても明るい。
そんな月たちが、限りなく白に近い銀の髪を縁取るように輝かせ、ふわりと光を放たせている。
長いまつ毛に陶器のような綺麗な肌。
すっと通った鼻筋に、形のいい唇……そして、切れ長の綺麗な目。
初めて見た時から思っていた。
認めるのは死ぬほど悔しいけど、やっぱり顔だけは驚くほどにいい。
「今日はよくも逃げやがったな。しかも学園長を俺になすりつけやがって」
吐き捨てるように言った男は、一歩こちらに足を向けた。
その瞬間、シャワー室からずっと握っていたお守りの石を、バレないようにサっとパジャマの中に隠した。
奴は静かに一歩、そしてまた一歩と近付いて来るから、その分だけ後ずさる。
今度は、何?
声を出せないようにして暗殺でもしに来たわけ?
学園長の事なら、なすりつけてないわ。冤罪よ。
たまたま通った学園長が『何してるんだ』と話しかけて来たけど、既に授業に出遅れていたから慌てて教室に向かっただけなんだから。
ああ!でも今はそんな過去の事はどうでもいい!
それより、この緊急事態をどうにかしないと。
こいつと完全個室で二人っきりなんて、死へのカウントダウンを取ってるのと同じだ。
せめて人目につくところに行かないと……本当にヤバイ。
後ずさりをしていた私は、背にドアが当たってある事に気付いた。
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