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追憶
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しおりを挟む「ああ、どういたしまして」
目を逸らし、無表情ながらもどこか恥ずかしそうに頭を掻く彰に、つい綻びが出てしまう。
その時、スーツの男が来て頭を下げた。
「お坊ちゃま、とりあえず先ほどの男は拘束しておきました」
お坊ちゃま……って事は、この人は世話役か。
「そうか、一応逃げ出さないかしっかり見張っといてくれ」
「はい」
そう言って再び頭を下げた世話役は、また和君の所に戻って行く。
その時、ふと素朴な疑問が浮き上がる。
「そういえば、どうして彰がここに……?」
「ああ、それは……」
そう言うと一瞬表情が固まって、なんとも形容できない表情で口を開いた。
「どうしても話したい事があって……でも前もって連絡してたら会えないんだろうと思って、あっちで待ち伏せしてた」
そう指を返した先は、あの長くて黒い車。
「俺、あいつとやってる事変わんねぇな。それに、時差ボケが無かったら、もっと早くに助けれたかもしんねぇのに……」
そう言うと、前髪をくしゃっと掴んで悔しそうに口を歪める。
「時差ボケ?」
「ああ。俺今日、日本に帰って来たところなんだ」
「そうなんだ」
崇お兄ちゃんが言ってたもんね。あれって今日の事だったんだ。
教えてよね。今日なら今日って。
知ってたのかは分からないけど。
「ファーストクラスだったけど、前のおっさんのイビキが煩くて飛行機の中で全然寝れなくて、そんな中、日本に着いたら真っ暗だし。
その後、車に揺らされてここに到着したら、もう限界来てさ。
だから『遥が帰ってきたら起こせ』とだけ言って寝てたら、見張ってた世話役に『なんかヤバそうだ』って叩き起こされたんだよ」
「そうなんだ。状況は分かったけど、私に話したいことって……何?」
そんな眠い中、帰国してすぐに待ち伏せまでして話したい事って、なんなのか検討が付かな⋯⋯……あれ?
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