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涙の決断
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ブランドスーツが整った目鼻立ちをさらに引き立たせていて、今日もとても眩しくて麗しい姿。
「あれ?遥ちゃん、なんでここに?」
驚いた顔の崇お兄ちゃんの質問に、質問で返す。
「崇お兄ちゃん!?海外出張じゃなかったんですか!?」
「ちょうど昨夜戻ってきたところだよ。今夜あたりにでも遥ちゃんに連絡しようと思ってたんだけど、まさかこんな所で会うなんて」
と話す崇お兄ちゃんの背景には、頬を染めて熱い視線を送るOLさん達の姿。
それに美人な受付嬢さんの頬も更に血色が増してるような……。
さすが崇お兄ちゃん、おモテになっている。
「入口を入った時、後ろ姿から遥ちゃんっぽいなって思ってたんだけど、まさか本人だったなんてビックリだよ。それよりこんな所で何してるの?」
「それが。実は……」
…………
……
鮮やかな緑の芝生の周りを縁取るように咲く赤や黄色の可憐な花々。
所々植えられている木々にとまる小鳥。
そんな、寒い季節のビルの屋上なんて事は全く感じさせない、まるで都会のオアシスのような場所に連れて来られた。
まぁ、でも風は冷たいですけど。
ベンチは沢山あるけど、周りを見渡しても就業時間だからか誰もいなく、私達だけの貸切状態のよう。
…………
……
「はい、持って。屋上、少し冷えるから」
そう言って暖かなペットボトルのミルクティーを手渡してすぐ隣に座った。
「ありがとうございます」
「さっきの話だけど、借りてしまったお金を返すにしても、いきなりだと父さんは捕まらないよ」
「そうなんですね」
「俺でもなかなか会えない人だしね。
今はたまたま日本にいるけど、普段は世界中を飛び回ってる人なんだ」
そんなに忙しい人なんだ。
なのに私に、その貴重な時間を使って。
よっぽど私と彰を引き離したかったんだな。
「俺に相談してくれたら良かったのに。海外にいてても電話くらいは出来るし、父さんとの間つぎ位なら出来るよ。もっと、俺を頼って欲しいな」
崇お兄ちゃんは昔から優しい。
その優しさが、今は酷く傷心に染みる。
「なんか、少し痩せた?」
そう言って、いきなり頬に触れてくる指先にドキッとした。
心配そうな目で覗かれて、まるで心の中まで暴かれそうで不安になる。
そんな目を向けられると、酷く傷付いて疲れてしまった心の中の私が、甘えてしまいたいって顔を出してしまいそうだ。
私はそんな私を、頭を振って振り落とす。
「ごめんね、父さんが酷い事でも言ったのかな。あの人、早く服部興産と組んで事業拡大をしたいみたいでさ。結構必死なんだよね」
そんな言葉にギリギリの笑顔で返す。
「いいえ、大丈夫です。彰と別れて欲しいって言った事は、全部この会社や彰を守って行くために言った事だって分かっているので」
「父さんは別れてって言ったんだ。まぁ、言いそうだけど。
でも、遥ちゃんはいいの?言われるまま別れる事になって」
あっ……
崇お兄ちゃんも、私と彰が付き合ってるって思ってるんだ。
付き合ってないのに、なんでみんなそんな風に思っちゃうんだろう?
……でも『犬』は所詮『犬』。
残念ながら『彼女』なんて地位に昇格なんて出来なかったよ。
「いいとか、それ以前に……私と彰はずっと付き合って無いんで」
崇お兄ちゃんはきっと、この話を聞いて私の事を『馬鹿なセフレ』だと思ったんだろう。
せっかく好意を寄せた相手は、とんでもなく軽いビッチだって、ドン引きするんだと思う。
ユイユイはそれくらい普通だって言ってくれているけど、付き合ってもない相手と何度もしてしまうなんて、良くない事だと思うから。
「え?それ本当?まだ付き合ってないの?」
「?……はい?」
その直後、
「…………あいつ、つくづく馬鹿だな」
「あれ?遥ちゃん、なんでここに?」
驚いた顔の崇お兄ちゃんの質問に、質問で返す。
「崇お兄ちゃん!?海外出張じゃなかったんですか!?」
「ちょうど昨夜戻ってきたところだよ。今夜あたりにでも遥ちゃんに連絡しようと思ってたんだけど、まさかこんな所で会うなんて」
と話す崇お兄ちゃんの背景には、頬を染めて熱い視線を送るOLさん達の姿。
それに美人な受付嬢さんの頬も更に血色が増してるような……。
さすが崇お兄ちゃん、おモテになっている。
「入口を入った時、後ろ姿から遥ちゃんっぽいなって思ってたんだけど、まさか本人だったなんてビックリだよ。それよりこんな所で何してるの?」
「それが。実は……」
…………
……
鮮やかな緑の芝生の周りを縁取るように咲く赤や黄色の可憐な花々。
所々植えられている木々にとまる小鳥。
そんな、寒い季節のビルの屋上なんて事は全く感じさせない、まるで都会のオアシスのような場所に連れて来られた。
まぁ、でも風は冷たいですけど。
ベンチは沢山あるけど、周りを見渡しても就業時間だからか誰もいなく、私達だけの貸切状態のよう。
…………
……
「はい、持って。屋上、少し冷えるから」
そう言って暖かなペットボトルのミルクティーを手渡してすぐ隣に座った。
「ありがとうございます」
「さっきの話だけど、借りてしまったお金を返すにしても、いきなりだと父さんは捕まらないよ」
「そうなんですね」
「俺でもなかなか会えない人だしね。
今はたまたま日本にいるけど、普段は世界中を飛び回ってる人なんだ」
そんなに忙しい人なんだ。
なのに私に、その貴重な時間を使って。
よっぽど私と彰を引き離したかったんだな。
「俺に相談してくれたら良かったのに。海外にいてても電話くらいは出来るし、父さんとの間つぎ位なら出来るよ。もっと、俺を頼って欲しいな」
崇お兄ちゃんは昔から優しい。
その優しさが、今は酷く傷心に染みる。
「なんか、少し痩せた?」
そう言って、いきなり頬に触れてくる指先にドキッとした。
心配そうな目で覗かれて、まるで心の中まで暴かれそうで不安になる。
そんな目を向けられると、酷く傷付いて疲れてしまった心の中の私が、甘えてしまいたいって顔を出してしまいそうだ。
私はそんな私を、頭を振って振り落とす。
「ごめんね、父さんが酷い事でも言ったのかな。あの人、早く服部興産と組んで事業拡大をしたいみたいでさ。結構必死なんだよね」
そんな言葉にギリギリの笑顔で返す。
「いいえ、大丈夫です。彰と別れて欲しいって言った事は、全部この会社や彰を守って行くために言った事だって分かっているので」
「父さんは別れてって言ったんだ。まぁ、言いそうだけど。
でも、遥ちゃんはいいの?言われるまま別れる事になって」
あっ……
崇お兄ちゃんも、私と彰が付き合ってるって思ってるんだ。
付き合ってないのに、なんでみんなそんな風に思っちゃうんだろう?
……でも『犬』は所詮『犬』。
残念ながら『彼女』なんて地位に昇格なんて出来なかったよ。
「いいとか、それ以前に……私と彰はずっと付き合って無いんで」
崇お兄ちゃんはきっと、この話を聞いて私の事を『馬鹿なセフレ』だと思ったんだろう。
せっかく好意を寄せた相手は、とんでもなく軽いビッチだって、ドン引きするんだと思う。
ユイユイはそれくらい普通だって言ってくれているけど、付き合ってもない相手と何度もしてしまうなんて、良くない事だと思うから。
「え?それ本当?まだ付き合ってないの?」
「?……はい?」
その直後、
「…………あいつ、つくづく馬鹿だな」
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