犬、やめました。【コミカライズ企画進行中作品】

一瞬の再会-東十条彰Side-

12

「はい」
だるさをなんとか隠してインターホンに出ると、画面には張り切った様子の女が画面いっぱいに映ってうんざりさが増す。

「今日呼ばれてる美羽みうです」
語尾にハートが付きそうなトーンの声に、心の中で深いため息をつく。

「はい。開けます」
インターホンにある解錠ボタンを押してから、皆が囲ってる机におろしたての酒を置いて腰掛けた。
すると、すぐにまたインターホンが鳴る。

「俺出てくる」と頭が花畑になってる亮介が飛んで立ち上がった。
そしてスキップでもしそうな足取りで玄関に向かう後ろ姿を、ダルい気持ちで見届ける。

すると一分もしないうちに、リビングのすりガラスのドアが開くとテンション高い亮介の声が部屋に響いた。

「彰！凄い美女が来たぞ！」
おいおい、他に女がいるのにその発言は無いだろ。
と思いながらドアの方に目を向けた俺は一瞬で固まった。


開いた口が塞がらないとは、この事を言うんだと思う。

「え……………………遥？」

そう言うと、友達の影で嫌そうに俯いていた遥の顔がゆっくり持ち上がって、大きな目が更に見開いた。

「……嘘っ」


……どうして。

せっかく忘れかけていたのに。






「こんなに綺麗なのに彼氏いないのー？」
「じゃお俺とかはー？」
「あははー」

遥、両サイド男に挟まれてめちゃくちゃ口説かれてんじゃん。
しかも満更でもなさそうだし。何ヘラヘラと笑ってんだよ。
そんな様子に何故か物凄くイライラした。

遥は他の奴とは話すくせに、あれから一度も俺を見ようともしないし、
他の奴に俺との関係を聞かれても知らないの一点張りだし。
一体なんなんだよ、あいつ。

あんなに否定したら逆に変に思われるだろ。
別に、ただの幼なじみなのに。
なんで他人のフリしたがるんだ？


それにしても……なんだよあの服。
体のライン出過ぎだろ。
胸だって、膨らんでる所まで見えてんじゃん。
男がいるの分かってたのなら、もっとマシな服着てこいよ。


「東十条くーん、さっきから白藤さんばっか見てない？」
そう言って腕に抱きついて来るから、全身にゾワゾワと鳥肌が立つ。
ふと見ると、その言葉に反応したのか一瞬だけ遥と目が合う。

「そんなわけないだろ！」
外面を取り繕うのを忘れてイライラした口調で返事をしてしまった俺は勢いよく立つ。

「あ、ごめん機嫌悪くしちゃったかな。実は私、東十条さんが気になってて……」
悲しそうな顔をして言う甘えた声に、更に気分が悪くなる。

「あれ？どこ行くの？」
「トイレ」


…………

……

「はぁー」
アメリカで女付き合いに疲れたというのもあるけど、ああいう媚びる系の女は昔っから苦手なんだよな。
なのに、ああいう奴が大半だから困る。

気を取り直してリビングに戻ると、キッチンの換気扇の下で楽しそうに会話をする遥と亮介がいた。

なんでこんな所に2人で居るんだろう、と思って見ると……


「おい！何してんだよ！」