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遅すぎる自覚

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嬉しい。
アキラが私を求めてくれている事が。

「誰にも渡さない……絶対に」

そんな、また勘違いしてしまいそうな言葉を吐くと、再び熱いキスしてきた。

やっぱり……今日はキスが多い。
そんな単純な事が酷く嬉しく感じた。

でも、やっぱり男にとって『ただの都合のいい女』が出来上がっただけじゃないか。
そんな思いが落ちて来た瞬間、私は意識を手放した。

…………

……




久しぶりにアキラの腕枕で目覚めた。
私は朝まで抱き潰され、いつも通り、いつ寝たのかなんて覚えていない。

そして寝返るのさえ億劫おっくうになりそうな程に、相変わらずのなまりのような身体させられている。

そんな事に心の中で溜め息をついて、目の前の本当に綺麗な寝顔を眺める。

毛穴どなんて存在してないかのような綺麗な肌。
すっと通った鼻筋に、長いまつ毛……そして、ぷるんとした……唇……

いたっ!」
いきなり噛みつかれて飛び跳ねそうな程に驚く。

「なに朝から人の顔をベタベタ触ってんだよ」
「おっ、起きてたの!?」
「お前が起こしたんだろ」
「ごめ……。でも、そんな理由で噛む!?」
噛まれた指先を見るとあとなんてほとんど無いくらいだったけど。

昨日といい、私よりアキラの方が犬みたい。

膨れる私に、目を細めてクスクスと笑うアキラ。


……やだ。
なに。その顔。
めちゃくちゃ胸がキュンとした。

胸を押さえると心配そうにのぞき込まれる。


アキラの寝ぐせ付きの黒髪がサラリと揺れる。

アキラでも寝癖が付くんだ。
なんか可愛い。

そんな事でさえ再びキュンときてしまう。

「どうした。さっきから心臓なんて押さえて。どこか痛むか?」
そう言われて頭を振る。

少し前まで恨んでさえいたのに、寝癖にさえキュンときてしまうなんて、恋愛感情ってめちゃくちゃ怖い。

「大丈夫。……それよりアキラは?」
「何が」
「口の端……とか」
「あぁ、しつけのなってない馬鹿犬が噛みついてきたやつな。でも、もうなんとも無いよ。ほら」
と指さす部分を顔を近付けて口元を見てみたけど、本当に何ともなっていない。

「ほんとだ……良かった」
そう呟いてから、すぐにその場で正座をした。

「アキラ」
「なんだよ」

「ごめんなさい。叩いてしまって」
そう言って頭を下げると、頭にポンっと大きな手が乗った。

「次あんな事したら、ただじゃおかないからな」
アキラは驚く程優しい口調で、目を細めてそう言った。

先は不安しかないし『ビッチ認定』受けそうな程の行動をしているけど、やっぱりこの選択で間違いなかったのかもしれない。

「うん」
うなずくと、久しぶりに星形にも見える変わった形の痣が私の目に飛び込んで来た。

「あっ……」
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