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11年越しの告白

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ふと見上げると、さっき一瞬見た顔が幻かのように、いつもの顔に戻っていた。

何故かその事にホッしてしまう。

そんな私の背中に、タカシお兄ちゃんの腕が回ってくるのが感じると、今度はキツく抱きしめられた。

「タカシ……お兄ちゃん……?」
なんでこんな事をしているのか理解できない私は、タカシお兄ちゃんのガウンに顔を埋まったままの思考が停止する。

大人になったタカシお兄ちゃんは変な冗談も言ってくるし、女慣れも凄そうなのに、頬に伝わってくる鼓動の速さがあまりにも早くて、余計に訳が分からなくなった。

体がダルいのもあって、異様な程にチャイムが鳴り続く室内で暫《しばら》くそのまま抱きしめられていた。


「……どうして、出ないんですか?」

「いいよ、いくらでも待たせておけば。こんなボロボロになるまで放置していたあいつが悪い……」
低い声でそう言うと、私の頭をかき抱く。


その時、ドアからかすかに聞き慣れた声が聞こえた気がした。

一瞬、飛び跳ねた心臓に手を当ててドアの方をじっと見詰める。



え……そのドアの向こうにいる人物って……まさか……。

「あ、気付いた?」

気のせいかと思っていたけど、タカシお兄ちゃんの返事からすると、多分私が思い浮かんだ人物で間違いないんだろう。

でも、なんでこんな所に?どうして?

そう思っていると、
ドーン!とドアを蹴る音が響き、驚きのあまり体が飛び跳ねた。

でも、タカシお兄ちゃんはその音に驚くどころか、頭を掻いてため息をつく。

「ほんと、野蛮だな。いくらなんでもやり過ぎだよ」

妙に冷静に立ち上がったタカシお兄ちゃんをハラハラした気持ちで見上げると、私に唇に人差し指を当てた。

「遥ちゃん。少しの間、静かにしといてくれる?
上手くいくかは保証出来ないけど、俺がなんとかしてあげるから」

意味が分からなかったけど、それどころでは無さそうな雰囲気に、とりあえずこくりと頷いた。


そんな私にニッコリと目を細めると、うるさいドアに向かった。

「分かった分かった。すぐ開けるから暴れるな」

そう言ってドアを開けた瞬間――



ドアの隙間からまぶしい廊下の光と一緒に、目にも止まらぬ速さで何かが飛び出してきた。

タカシお兄ちゃんはそれを避けるように首を傾げながら手のひらでそれを受け止めると、バシっと軽快な音が鳴った。

その動きは、まるでこうなる事を予想していたかのようだった。

「兄に向っていきなり殴りかかるなんて、酷いんじゃないか」
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