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この想いの正体

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鼻をすすってしまったからか、そう言われて焦る。
泣いているという事実を知られたくない私は、電話を勝手に切る事も出来ずに黙り込む以外、今のところ方法が浮かばない。

「大丈夫?いま外なのかな?今からそっちに行こうか?ちょうど俺も外にいるんだ。俺でよかったら……」
こんな時に、そんな優しい言葉を掛けられると、甘えてしまいそうになる。

だから……
「ごめん……なさい」
身を切る思いで通話を切った。

ずっと握りしめていたスマホの電源を切ってバックにしまおうとした時、お気に入りの高級バックが変色している事に気付いた。


「高かったのに……雨で変色してるじゃん……」
こんな事なら、安くてもいいからあの時質屋で売るかフリマアプリとか売ればよかった。

「あっ……」
その時、大事な事を思い出した。

マサ君が買ってくれたバックが、この場に無いという事を。


……アキラの家に忘れてきたんだ。



「…………あはっ」
その瞬間、なんか人生が馬鹿らしく思えてきて笑いが出た。


気が動転してたからって、普通忘れてくる?
ほんと、何のために昨日アフターしたのよ。
普段した事もないし、結果危険まで犯して。

「あーあ……。今日、授業料の納期期限なのにな……。
あれ無しで一体どうやって支払ったらいいのよ」

私の人生って、どうしてこんなのばっかなのかな。
こんなに努力してるのに。

私は、いつになったら楽になれるの?
どうして私にばっかこんな試練与えてくるの?

ねぇ、私が何したって言うの……。


「……もう……やだ」


歪んだ目から終わりを知らない涙が再び溢れ出す。

そんな涙は、頭皮を伝った雨が次々と流していく。

私の泣き叫ぶ声は、アスファルトに叩きつけられる雨の音がかき消す。


……もう、どうでもいい。



何も考えたくない。

頑張る事に……疲れたよ。



「あれー?こんな所で何してるの?」
「傘無いんすか?寒くないんすか?今日大寒波ですよ」
傘を差したチャラそうな男2人が私を覗き込む。

「えっ!?この子めちゃくちゃ可愛い!」
「ほんとだマジ可愛い!しかも泣いてる?
どうしたんすか?こんな所にいてると風邪ひいちまいますよ」
そう言って私に半分傘をかける。

「そーだよ。俺んちすぐそこだから行こう」

いかにも親切心から出たと思わせるような、上辺うわべだけの言葉をかけられる。

「話せないんすか?てか無反応過ぎないっすか?でも可愛いからいいっすけど」

そう言うと私の両脇を無遠慮に抱えて無理やり立ち上がらせる2人。

「歩けるっすか?」

いつもなら抵抗したり、無視してその場から消えたりするのに、もう……


それすら面倒くさい。
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