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分からない気持ち

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そして切れ長の瞳をわずかに細められると、
「馬鹿犬。知らねぇぞ」と言って前髪をかき上げたアキラはむせる程に色気が増した。


「誘ったのはお前だからな。今日は手加減してやんねぇからな」

その台詞セリフに、今までだって手加減してこなかったくせに!
と心の中で突っ込んだ時、色気のある眼差まなざしが刺さって、思わず息を飲んだ。

座席からギシッという音がして、それが薄暗い車内に響く。
急に二人の息遣いまで鼓膜を揺らし始め、心臓が高鳴る。

口元に添えてきた手が、やんわりと私を上向かせる。

目の前には、色気を垂れ流したようなアキラが鋭い瞳で私を見詰める。

それだけで期待に満ちてしまう私がスッと目を閉じると、唇を塞がれた感触が伝わった。


それだけで全身が栗立つ感覚に襲われる。

誘うように薄く開けた唇から舌が滑り込んでくる。
入ってきた舌を迎えるように絡めて、深く触れ合う。

薄暗い車内に2人の息遣いと、小さな水音がいやらしく響く。

この身体は、さらに欲情が高まって、キスより先に進みたいと悲鳴を上げ始める。
そんな欲張りな体に、私は翻弄される。

「……んっ」

早く。
キスよりもっとしたい。

全部薬のせい。

私の意思じゃない。
ただ、おかしくされているだけだから。


そんな思いが落ちてくると、急に咎めていた何かが吹っ切れた気がした。

私の頬にあった大きなアキラの手を握って捕まえると、そのまま私の体のラインを辿って下へとズラしていく。

そして自分の胸の膨らみの上で手を止めると、アキラがリップ音を鳴らして唇を離した。

その唇は私の耳元に軽く触れる。
吐息がかかるようにささやかれるとゾクゾクした何かが溢れてくる。

「馬鹿犬。ちゃんと。どうして欲しいか言えよ」

そう低い声で言われて、全身がビクンと震える。
もう、これだけででも下腹がズクンとうずいて、無意識に膝をこすり合わせてしまう。


「こんなに発情しやがって。言えよ、この手でどうして欲しいか」
ふっ、と何処どこか楽しげなアキラは悪戯いたずらに笑う。

「そんなの、言えるわけが……」

彰は胸の周りで円を描く。
ワザと私が触って欲しいところを避けるような指の動きに、全神経が集中して下半身が勝手に動いてしまう。


もどかしい。
避けられているのに、それさえも気持ちよくて、おかしくなってしまいそうだ。

そんな私の状況を知ってか知らずか、アキラは口に狐を描いて見下ろしてくる。
アキラの熱を帯びたような視線と私の視線が絡み合う。

ふいにアキラの指が一瞬だけ頂点をかすめた。
「……んあっ!」

背筋に走り抜けるとてつもない快感に、身体が弓のように跳ね上がった。
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