1 / 20
第1話(プロローグ)
しおりを挟む
「その子どもは俺の子だろう!返せ!」
私はぎゅっと抱きしめる。絶対に離さない。
「私もこの子も必要ない!いらない!といって追い出し、捨てたのはあなたでしょう!?」
庶民には絶対手が届かない立派な服を着ている身なりの良い金髪の青年はハッと小ばかにしたように笑った。
「あの時はあの時だ。今は子どもが必要なんだ」
この国の騎士達に取り囲まれている私は体が震える。剣や槍で体を貫かれるかもしれない。そうだ。騎士達を従えているということは、目の前の男はこの国の王子であり、私の元旦那様だった。
「まだですの?オースティン殿下に歯向かうのは愚かなことですわ」
待ちきれず、豪奢なピカピカに塗られた馬車から降りてきたのは、王子の寵愛を受けているイザベラだった。私を追い出した原因を作ったのも彼女だった。
「ほら!こっちへこい。おまえの大事なお母様が、このままでは串刺しになるぞ!」
「そうなったとしても渡しません!」
母様だめです!と私の腕の中で叫ぶ子を私は絶対に離さず、抱きしめる。騎士達の剣が抜かれて、切っ先を当てられる。私の体は震える。目を閉じる。
もうダメ。だけど、神様、お願いします。この子だけは助けたいんです。こんなクズ王子やバカな女のところにだけはやりたくありません!考えるだけで、不幸しか待っていないもの!
子どもができないという理由から、捨てた子を私から取り上げにきたのだ。王宮で育てると言っている。だけどそこで、この子が幸せになれるわけがなかった。冷たいイザベラの視線は、人ではなく、物として品定めしている。
「わたくしはオースティン殿下だけでいいのに、しかたありませんわ。毎日、毎日、後継者ができないのかと言われては、わたくし、もう憂鬱になっちゃいますの。しかたないから引き取って、育ててあげますわ」
「そんな理由であげたくはなっ……!!」
私の喉元に剣が当てられた。何も話せなくなった。母様!と腕の中の子が叫ぶ。
「30秒やる。子どもをこちらへ寄こせ」
30秒だったらどうなるか私はわかった。ぎゅっと目をつぶる。強情だなとあきれた声と騎士が剣を高く振り上げた音がした。終わった……。
そう思った時だった。
「人の領地を血を流すつもりですか?このバカオーステ………じゃなかった。オースティン殿下?」
唐突に間に割り込んできた声で、場の空気が変った。公爵という位を持つ彼は王子の前でも余裕の表情をしていた。私は安心すればいいのか、それとも……。
「現れたな!この嘘つき公爵が!」
オースティン殿下にそう言われると、何が嘘つきなんだ?と首を傾げる彼。
「女嫌いだとういうことは知っているぞ!この結婚は偽装結婚だろう!おまえは手も握れないだろう!!」
そんなことはないと言って、白い手袋をとって、私に触れようと手を伸ばす彼。
「やめて!そんなことをしたら……」
無理をしようとしている!必死で私は止めた、それなのに、余裕の笑みで、私に触れようとした。
だめ!倒れちゃう!!
女嫌いで女アレルギーの公爵様じゃ無理なのよーー!やめてー!
そう私は心の中で叫んだのだった。
私はぎゅっと抱きしめる。絶対に離さない。
「私もこの子も必要ない!いらない!といって追い出し、捨てたのはあなたでしょう!?」
庶民には絶対手が届かない立派な服を着ている身なりの良い金髪の青年はハッと小ばかにしたように笑った。
「あの時はあの時だ。今は子どもが必要なんだ」
この国の騎士達に取り囲まれている私は体が震える。剣や槍で体を貫かれるかもしれない。そうだ。騎士達を従えているということは、目の前の男はこの国の王子であり、私の元旦那様だった。
「まだですの?オースティン殿下に歯向かうのは愚かなことですわ」
待ちきれず、豪奢なピカピカに塗られた馬車から降りてきたのは、王子の寵愛を受けているイザベラだった。私を追い出した原因を作ったのも彼女だった。
「ほら!こっちへこい。おまえの大事なお母様が、このままでは串刺しになるぞ!」
「そうなったとしても渡しません!」
母様だめです!と私の腕の中で叫ぶ子を私は絶対に離さず、抱きしめる。騎士達の剣が抜かれて、切っ先を当てられる。私の体は震える。目を閉じる。
もうダメ。だけど、神様、お願いします。この子だけは助けたいんです。こんなクズ王子やバカな女のところにだけはやりたくありません!考えるだけで、不幸しか待っていないもの!
子どもができないという理由から、捨てた子を私から取り上げにきたのだ。王宮で育てると言っている。だけどそこで、この子が幸せになれるわけがなかった。冷たいイザベラの視線は、人ではなく、物として品定めしている。
「わたくしはオースティン殿下だけでいいのに、しかたありませんわ。毎日、毎日、後継者ができないのかと言われては、わたくし、もう憂鬱になっちゃいますの。しかたないから引き取って、育ててあげますわ」
「そんな理由であげたくはなっ……!!」
私の喉元に剣が当てられた。何も話せなくなった。母様!と腕の中の子が叫ぶ。
「30秒やる。子どもをこちらへ寄こせ」
30秒だったらどうなるか私はわかった。ぎゅっと目をつぶる。強情だなとあきれた声と騎士が剣を高く振り上げた音がした。終わった……。
そう思った時だった。
「人の領地を血を流すつもりですか?このバカオーステ………じゃなかった。オースティン殿下?」
唐突に間に割り込んできた声で、場の空気が変った。公爵という位を持つ彼は王子の前でも余裕の表情をしていた。私は安心すればいいのか、それとも……。
「現れたな!この嘘つき公爵が!」
オースティン殿下にそう言われると、何が嘘つきなんだ?と首を傾げる彼。
「女嫌いだとういうことは知っているぞ!この結婚は偽装結婚だろう!おまえは手も握れないだろう!!」
そんなことはないと言って、白い手袋をとって、私に触れようと手を伸ばす彼。
「やめて!そんなことをしたら……」
無理をしようとしている!必死で私は止めた、それなのに、余裕の笑みで、私に触れようとした。
だめ!倒れちゃう!!
女嫌いで女アレルギーの公爵様じゃ無理なのよーー!やめてー!
そう私は心の中で叫んだのだった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。
和泉鷹央
恋愛
アイリスは国母候補として長年にわたる教育を受けてきた、王太子アズライルの許嫁。
自分を正室として考えてくれるなら、十歳年上の殿下の浮気にも目を瞑ろう。
だって、殿下にはすでに非公式ながら側妃ダイアナがいるのだし。
しかし、素知らぬふりをして見逃せるのも、結婚式前夜までだった。
結婚式前夜には互いに床を共にするという習慣があるのに――彼は深夜になっても戻ってこない。
炎の女神の司祭という側面を持つアイリスの怒りが、静かに爆発する‥‥‥
2021年9月2日。
完結しました。
応援、ありがとうございます。
他の投稿サイトにも掲載しています。
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
旦那様、愛人を作ってもいいですか?
ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。
「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」
これ、旦那様から、初夜での言葉です。
んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと?
’18/10/21…おまけ小話追加
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
子供の言い分 大人の領分
ひおむし
恋愛
第二王子は、苛立っていた。身分を超えて絆を結んだ、元平民の子爵令嬢を苛む悪辣な婚約者に。気持ちを同じくする宰相子息、騎士団長子息は、ともに正義の鉄槌をくださんと立ち上がろうーーーとしたら、何故か即効で生徒指導室に放り込まれた。
「はーい、全員揃ってるかなー」
王道婚約破棄VSダウナー系教師。
いつも学園モノの婚約破棄見るたびに『いや教師何やってんの、学校なのに』と思っていた作者の鬱憤をつめた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる