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第3章 塩漬系主人公
暇そうなのは主人公じゃない
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朝になると、夜のうちに干しておいた睡眠薬が完成したいた。干からびると棘のようになり、ルベルから受け取った袋に容易に収まった。これで明日から夜に眠ることができる…。
俺が無事に隠し終わった時、扉がノックされる。
「ルベル。」
レイが誰が来たのかを教えてくれる。起きていることを怪しまれるだろうか?まあベッドに向かって物音立てた方が怪しいか。
「…どうぞ。」
「おはよう、死刑囚君。」
俺が起きていることを特に疑問に思っていないようだ。そんなことより、ルベルの服装がいつもよりもしっかりしていて驚いてしまう。
「ああ、これか。今からこの家を出るつもりなんだ。だからお別れをと思って。」
お別れなど大げさに言うのは、また冗談だろうか?いつも通りの笑顔からは何一つヒントをもらえない。
「そう。」
「短い間だったね。君たちには感謝するよ。それじゃあね。」
君たち?ワンのことであり、レイのことではないよな…?あっさりした挨拶の後、そそくさと部屋を出ていってしまった。それだけを言いに来たのか。
「ああ、また会おう。」
聞こえたとは思うが反応を見せることなく廊下を歩いて行く音だけがする。しばらくルベルが閉めた扉を眺めた後、レイと顔を見合わせる。レイは肩をすくめるとゆっくりと壁を通り抜けて部屋の外へ向かっていった。
そういえばワンはどうしたのだろうか。結局、薪割りの後から顔を合わせていない。ルベルからも何もなかったが、もしかして既にこの家にはいなかったりするのだろうか。あるいは、ルベルと一緒に出掛けていたりするのだろうか。
俺がぼーっとしていると、レイが床からゆっくりと出てきた。
「本棚の本がない。研究室にも入れたけど何もなくなってる。」
「本当にでていったのか。」
家を探すとすぐにワンが見つかった。まあ顔を洗いに行く途中で椅子で寝ているのを見つけただけなのだが。結局ルベルはここで何をしていたのだろうか。俺を掘り返した理由も結局うやむやにされてしまった。
「おはよう。」
どうやら起こしてしまったようで、俺が部屋に戻る途中でワンが目をこすりながら声をかけてきた。俺は手を上げて反応し、そのまま部屋に戻る。
途中でルベルの部屋に入りクローゼットを開けると、服が何着か畳んであった。おいて行ってくれたようだ。ありがたい。部屋には他に何もなく、ルベルがいなくなったことを実感させてくる。
俺は部屋に戻りベッドに身を投げると、レイは天井からどこかへ飛んで行ってしまった。
「…。」
今後どうするか。もともとの目的は何だったか。名も知らぬ女を探す旅。もし続けるならば、目撃情報を集めるため聞いて回らなければならない。手近なところだとビークだが、脱獄囚として捕まりかねないな。
リルレットからお願いされたブライの件も何とかしたいな。それにレイ。幽霊について、もう少し理解を深めてこいつが成仏する方法を知っておいてもいいかもしれない。あとはワンの記憶を戻すでもいい。
思ったよりも目的はあるようだが、何をするにしても今からどう行動を起こすべきか全く思い浮かばない。どうせならルベルと行動してもよかったのかもしれないな。
無理矢理渡されて放置していた教本を手に取る。本人が知っているか、そもそも事実なのかすら怪しい内容の本。こんなもの持っていたら信者だと思われかねないし、自分の思想も染まってしまうかもしれない。仰向けのままページを数枚めくり、いや、流石にないなと鼻で笑う。
確かにブライの強さは神に匹敵するように思えるし、できることよりできないことを数える方が楽な奴だとは思う。だが同じ人間だ。人間の範疇を超えない。超人的であっても、物理的に、魔法的に可能なこと以上のことはしていない。
人を『超越』していない。
…死なない俺なら勝ち目はある?俺は起き上がり教本机に置くと、袖を捲りながら右手を前に伸ばす。そのまま左手でゆっくりと右腕を引っ搔いていき、風の魔法陣を描き…発動…しない。
何だったか、魔法陣で魔力放出、だったか?左手で魔力放出をする。一般的に魔力は関節か末端から放出される。中でも扱いやすいのが指先や手のひら、踵といった場所だ。だからビーク監獄では腕輪をしていた。
踵から魔法を放てばよいというかもしれないが、魔力放出の威力など程度が知れており、イメージとして扇風機の強風ぐらいの威力しか出ない。魔法陣を描けばやりようはあるが、聞くが、足で直線を引けるかという話だ。なるほど、必要最低限の拘束ができている。
刺青をしていればまた話は変わってくるが、ビーク監獄には該当する人物はいなかった。まあ刺青をした場合、それ以外の魔法を刺青近くで発動させると干渉しあってしまい魔力が暴走してしまう。暴走とは、魔力が体を高速でめぐってしまい破裂してしまうことだ。相当お気に入りの魔法があるか、専門職で何度も使うでもない限り刺青などしない。
話がそれたな。俺は右手で魔力放出を行う。本来ならば書かれた魔法陣に反応して魔法が発動する。わかりやすく言うなら魔力放出がライトで魔法陣が色のついたビニール。ライトで照らすことで勝手に色のついた光になる。これが魔法。
つまり魔法陣で魔力放出とは魔法を使えと同義なのだが、ベイクはどういう意図でそんなことを?俺は魔法が出ないからと力を入れ過ぎて魔力暴走しかけた右腕を揉み、魔力を分散させる。
わからん。どういう意味だろう。
…。
「なあ、どうすればいいと思うよ。」
俺は壁に向き直り真剣に語りかける。もしかしたら考えの整理が…。なんの変哲もない壁は、返事をしたり、相槌を打ったりしなかった。当然だ。無意味すぎる。
ため息をつき再びベッドに沈み込むと、天井から頭だけを出したレイが目に入る。
見られた。気まずい…。
レイは俺から俺が話しかけた壁に視線を向けるとボソッと提案してきた。
「…暇なら墓参りいかない?」
俺が無事に隠し終わった時、扉がノックされる。
「ルベル。」
レイが誰が来たのかを教えてくれる。起きていることを怪しまれるだろうか?まあベッドに向かって物音立てた方が怪しいか。
「…どうぞ。」
「おはよう、死刑囚君。」
俺が起きていることを特に疑問に思っていないようだ。そんなことより、ルベルの服装がいつもよりもしっかりしていて驚いてしまう。
「ああ、これか。今からこの家を出るつもりなんだ。だからお別れをと思って。」
お別れなど大げさに言うのは、また冗談だろうか?いつも通りの笑顔からは何一つヒントをもらえない。
「そう。」
「短い間だったね。君たちには感謝するよ。それじゃあね。」
君たち?ワンのことであり、レイのことではないよな…?あっさりした挨拶の後、そそくさと部屋を出ていってしまった。それだけを言いに来たのか。
「ああ、また会おう。」
聞こえたとは思うが反応を見せることなく廊下を歩いて行く音だけがする。しばらくルベルが閉めた扉を眺めた後、レイと顔を見合わせる。レイは肩をすくめるとゆっくりと壁を通り抜けて部屋の外へ向かっていった。
そういえばワンはどうしたのだろうか。結局、薪割りの後から顔を合わせていない。ルベルからも何もなかったが、もしかして既にこの家にはいなかったりするのだろうか。あるいは、ルベルと一緒に出掛けていたりするのだろうか。
俺がぼーっとしていると、レイが床からゆっくりと出てきた。
「本棚の本がない。研究室にも入れたけど何もなくなってる。」
「本当にでていったのか。」
家を探すとすぐにワンが見つかった。まあ顔を洗いに行く途中で椅子で寝ているのを見つけただけなのだが。結局ルベルはここで何をしていたのだろうか。俺を掘り返した理由も結局うやむやにされてしまった。
「おはよう。」
どうやら起こしてしまったようで、俺が部屋に戻る途中でワンが目をこすりながら声をかけてきた。俺は手を上げて反応し、そのまま部屋に戻る。
途中でルベルの部屋に入りクローゼットを開けると、服が何着か畳んであった。おいて行ってくれたようだ。ありがたい。部屋には他に何もなく、ルベルがいなくなったことを実感させてくる。
俺は部屋に戻りベッドに身を投げると、レイは天井からどこかへ飛んで行ってしまった。
「…。」
今後どうするか。もともとの目的は何だったか。名も知らぬ女を探す旅。もし続けるならば、目撃情報を集めるため聞いて回らなければならない。手近なところだとビークだが、脱獄囚として捕まりかねないな。
リルレットからお願いされたブライの件も何とかしたいな。それにレイ。幽霊について、もう少し理解を深めてこいつが成仏する方法を知っておいてもいいかもしれない。あとはワンの記憶を戻すでもいい。
思ったよりも目的はあるようだが、何をするにしても今からどう行動を起こすべきか全く思い浮かばない。どうせならルベルと行動してもよかったのかもしれないな。
無理矢理渡されて放置していた教本を手に取る。本人が知っているか、そもそも事実なのかすら怪しい内容の本。こんなもの持っていたら信者だと思われかねないし、自分の思想も染まってしまうかもしれない。仰向けのままページを数枚めくり、いや、流石にないなと鼻で笑う。
確かにブライの強さは神に匹敵するように思えるし、できることよりできないことを数える方が楽な奴だとは思う。だが同じ人間だ。人間の範疇を超えない。超人的であっても、物理的に、魔法的に可能なこと以上のことはしていない。
人を『超越』していない。
…死なない俺なら勝ち目はある?俺は起き上がり教本机に置くと、袖を捲りながら右手を前に伸ばす。そのまま左手でゆっくりと右腕を引っ搔いていき、風の魔法陣を描き…発動…しない。
何だったか、魔法陣で魔力放出、だったか?左手で魔力放出をする。一般的に魔力は関節か末端から放出される。中でも扱いやすいのが指先や手のひら、踵といった場所だ。だからビーク監獄では腕輪をしていた。
踵から魔法を放てばよいというかもしれないが、魔力放出の威力など程度が知れており、イメージとして扇風機の強風ぐらいの威力しか出ない。魔法陣を描けばやりようはあるが、聞くが、足で直線を引けるかという話だ。なるほど、必要最低限の拘束ができている。
刺青をしていればまた話は変わってくるが、ビーク監獄には該当する人物はいなかった。まあ刺青をした場合、それ以外の魔法を刺青近くで発動させると干渉しあってしまい魔力が暴走してしまう。暴走とは、魔力が体を高速でめぐってしまい破裂してしまうことだ。相当お気に入りの魔法があるか、専門職で何度も使うでもない限り刺青などしない。
話がそれたな。俺は右手で魔力放出を行う。本来ならば書かれた魔法陣に反応して魔法が発動する。わかりやすく言うなら魔力放出がライトで魔法陣が色のついたビニール。ライトで照らすことで勝手に色のついた光になる。これが魔法。
つまり魔法陣で魔力放出とは魔法を使えと同義なのだが、ベイクはどういう意図でそんなことを?俺は魔法が出ないからと力を入れ過ぎて魔力暴走しかけた右腕を揉み、魔力を分散させる。
わからん。どういう意味だろう。
…。
「なあ、どうすればいいと思うよ。」
俺は壁に向き直り真剣に語りかける。もしかしたら考えの整理が…。なんの変哲もない壁は、返事をしたり、相槌を打ったりしなかった。当然だ。無意味すぎる。
ため息をつき再びベッドに沈み込むと、天井から頭だけを出したレイが目に入る。
見られた。気まずい…。
レイは俺から俺が話しかけた壁に視線を向けるとボソッと提案してきた。
「…暇なら墓参りいかない?」
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