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新しい世界
54 それからの話 3
しおりを挟むそれから慎翔は週に三日のペースでギルドに通い、ディネやウルスから魔法の使い方や、武器の使い方、身体の動かし方を教えてもらった。
ギルドマスターの部屋の隣の物置部屋に転移して、ギルマスの部屋に入る。
ギルマスの部屋の奥に、慎翔の空間魔法で部屋を作らせてもらった。
外界と干渉しない、大きな体育館くらいの部屋で、中には何も無い。
この部屋の中ならどれだけ魔法を出しても壊れたりしない。
ここで色んな魔法の使い方や種類を教えてもらった。
机や椅子はアイテムボックスにあるので、座学の時はそれを出して、色々と教えてもらった。
あと、週に二日はメラーニ家に行って、ロリとエリザベス、時にはカミルとカレル、シーラの上級生と一緒に勉強した。マナーなど一般常識よりも上流階級なマナーを教えてくれた。
先生は上級生は難しそうなおじさんだったり、お姉さんだったりしたけど、下の子の時は大抵リオンだ。勉強してる時もあれば、遊んでるだけの時もある。リオンも忙しそうだから、子守りが多いほうがいいみたい。
ロリはリオンを独占できてすごく喜んでいた。いつもはエリザベスもいるもんね。
貴族社会はめんどくさいけど、知っておいて損は無いから、ぜひ習いにおいでとジェレミア父さんに言われて、転移用の部屋も用意してくれた。
メラーニ家の子どもたちは、何も知らないおれの事をバカにしたりしない。本当に良い子達だ。
一緒に勉強するのはとても楽しかった。
そんなこんなで、段々とこの生活にもなれた頃、まあ事件ってほどじゃないけど、あの留守番事件があって。
ちょうどギルドでの勉強もだいぶ進んでいたので、週に二日はギルド、もう二日は商会、あと二日は白い部屋に行って、一日を休日として、ジュードとゆっくり過ごす事にした。
白い部屋には燈翔と心琴がタブレットと携帯用ゲーム機を置いてくれてて、そこからゲーム実況プレイ動画を観たり、某有名RPGを実際にゲームプレイしてみたりした。
漫画や色んな本も持ってきてくれる。あとはアニメでファンタジーの勉強。
なんだっけ?婚約破棄?とか転生無双とか?
参考になるものも多かったから、色々と勉強になった。
一番は魔法のイメージが練れたことだと思う。ここでイメトレして、ギルドで実際にぶっ放しまくる。ギルマスは顔色悪くなって遠い目してたけど。
出かけるときは一人だったりするけど、朝と夜はずっとジュードと一緒にいたよ。
その日あった事をお互い報告したりしてた。でもジュードは何言っても「すごいな。流石だな。」ばっかりなんだよね。甘すぎじゃない?
ジュードは一人で依頼をこなしたり、おれに付き合ってくれたり、白い部屋にも一緒に行ったりした。タブレット端末で動画を流した時のジュード、びっくりしてたな。目ってあんなに大きく開くんだと思って、口も開いてたね。貴重な顔見れたなあ。
燈翔は「文化の違いに驚いてるんだよね?」って笑ってた。
留守番事件で白い部屋から帰った時にジュードから「一緒に寝よう。」と誘われてからは、ずっとジュードのベッドで一緒に寝てる。すっかり当たり前になって、ジュードの腕か、足かお腹が抱きまくら代わりだ。
最近はすっかり寒くなってきたから、お互いにぎゅうぎゅう抱き合って寝てる。本当に暖かい。もう一人で寝れないかもしれない。
合間に何日かかけて、ダンジョンにも行った。
マサには昔からある中級の鍾乳洞のダンジョンと、港から船で渡った小島にあるこちらも中級の島ダンジョンがある。
おれとジュードは洞窟ダンジョンを攻略することにした。
40階に大ボスがいて、10階毎に中ボスがいる。
洞窟なので、土系の魔物が多く出る。ゴブリンを始め、虫系の魔物が出てきた。
おれは体力には自信が無いし、剣も使える気がしなかったから、遠くから魔法で倒す方法で慣らしていったんだ。
まずは氷の魔法で足元を固める。足止めをしたら、風魔法でかまいたちで切り裂いて倒していく。撃ち漏らしはジュードが剣をシュってしたらもう倒されてる事が多かった。
やっぱめちゃ強いの、ジュード。かっこいい。
無理はせず、10階毎の転移陣も利用しながら、少しずつ進めていった。
ボスはサンドワームのデカイ奴だったけど、氷が弱点だったみたいで、案外すんなりやっつけれた。魔石は大きかったよ。やっぱボスだね。
ちなみにダンジョン内で氷魔法使って凍らせ過ぎたせいで洞窟内の気温が下がって、魔物の動きが鈍くなったらしい。
倒しやすくなって低級並に敵が弱いとギルマスが困ってた。
「でも魔物だっていつかは順応しちゃうんじゃない?」
そう聞いたら、「そうかもしれんが…。うーん。」と悩んでいた。
洞窟内の気温は一定なので氷は溶けそうにない。
後日、マサの洞窟ダンジョンは氷の洞窟と呼ばれるようになる。
ダンジョンの討伐依頼や、素材集め等でクエストクリアの数を重ねて、DからC、B、そしてついに、ジュードと同じA級に上がれたのだ。
これらの記録は全てギルドタグに残される。
こうして堂々とギルドに顔を出したのだ。
受付カウンターには面白い展開に、苦笑気味のアスターさんがいる。
「ナカセ。久しぶり。すっかり立派な冒険者になったね。」
「アスターさんもお久しぶりです。
えっと、今日はこの魔物の素材を納品しに来ました。」
おれの中では、さっきの三人とは話は終わったと思ったから、受付に行ったのに、後ろから甲高い声で
「信じられる訳ないじゃない。ありえないわよ。こんな短期間でA級なんて。
どんな卑怯な手を使ったのよ。この糞ガキ。」
などと叫びながら掴みかかろうとするネコ獣人のお姉さんが目の端に見える。リーダーのお兄さんが腕を掴んでたけど、振り払ったみたい。おれに向かってくる。
お姉さんの目は血走って、後ろの二人は絶望の眼差しだ。
「キャアアッ。」
ドンッとお姉さんは見えない壁にぶつかって、跳ね返されて、後ろに転がる。その勢いで後ろの二人も巻き込まれて転んだ。
おれは黙って振り返る。
「防御魔法くらい知ってるでしょ?おれもそんなに弱くないし、もうおれの許可無しには指一本触れられないよ。」
これはイヤーカフに付与してる透明な防御壁が発動したんだけど、たぶんアスターさんも防御魔法かけてくれてる。だから跳ね返ったんだろう。
まあ、あともう一人かけてくれてたけど。
「なんだ騒がしいな。」
ギルマスのウルスさんが受付まで降りてくる。後ろにはディネさんもいる。
ギルマスと副ギルマスの登場に周りはさらにざわついた。
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