17 / 101
新しい世界
14 新生活2
しおりを挟む外の明るさに目を覚ます。
ベッドでむくりと上半身を起こし両手をうーんと伸ばして、背伸びをする。
もぞもぞとベットから降りると部屋を出て階段を降りる。
台所にはジュードさんが立っていた。
「おはようございます。ジュードさん。」
「おはよう。マコト。朝から敬語は寂しいな。」
おれはあっ、て昨日のこと思い出して
「お、お、おはよう。」
とどもりながらあいさつをした。
こっちを見ながら笑うジュードさんは、今日もイケメンだ。
「さ、顔洗っておいで。朝ごはんにしよう。」
そう言われて、洗面台に行く。顔を洗いながら、昨日の事を思い出す。
お風呂出てから?
何してたっけ?
「ジュードさん。おれ昨日どうやって寝たっけ?」
朝食を並べているジュードさんに聞いてみる。少し困ったような顔をしている。
「昨日は風呂で寝てしまったから、俺がベッドまで運んだぞ。」
「え?」
「別に気にしなくていい。仕方ないんだから。」
ジュードさんも、いきなりお風呂で寝落ちたおれに驚いたそうだ。服を着せて、ベッドまで運んでから、例の取扱説明書を開いたらしい。
魔素を身体に取り込み、馴染むまでは急に意識が途切れる。電池が切れたみたいに眠ってしまうそうだ。
そうやって段々と身体がこの世界の空気や瘴気に慣れるらしい。
それまではパタッと眠ってしまう。
ただそれが、おれの意思を伴わないから自分でもどうしようもない。
「えー。何それー。ご迷惑おかけします。」
純粋に申し訳なくて謝ると、頭に手を乗せて、ぐしゃぐしゃってされた。
「気にするな。それで段々と慣れてるんだろう。良い事じゃないかな。」
そうか。良い事なのか。まあジュードさんが良いのなら、いいか。
こうして朝ごはんを食べる。おれはお粥とりんごとみかん。果物の甘さに目を見開いて、一気に食べた。
ジュードさんはパンと何か飲み物飲んでる。
覗き込むと、ん?と中身を見せてくれた。真っ黒い飲み物だ。香ばしい匂いがする。
「コーヒーだ。飲んでみるか?」
そう言われてジュードさんのコーヒーを一口もらう。
「!!うわっ!変な味するー。」
口の中いっぱいにいがいがした変な味が広がる。飲み込むのも一苦労だ。
「マコトには苦かったかもな。大丈夫か?」
ジュードさんが苦笑いしながら、りんごを口に入れてくれる。シャリシャリと食べる食感は好きだ。りんごの味で口の中がマシになった。さっきのイガイガが苦いらしい。
「黒いから苦いのかな?」
「いや、マコトにも飲めるように出来るからちょっと待ってろ。」
そう言って台所に行ってしまう。残ったお粥をゆっくり味わいながら食べる。甘みとしょっぱいのと、食べやすくて好きだ。
「お待たせ。熱いかもしれないから気をつけろよ。」
そう言ってコップを渡される。覗き込むとさっきの黒い飲み物じゃなくて白っぽい茶色の飲み物が入っている。
恐る恐る口をつける。
「あ、甘い?」
「正解。コーヒーに砂糖と牛乳を入れたんだ。カフェオレって言うらしいぞ。」
甘くて飲みやすい飲み物にコクコクと一気に飲んでしまった。
「苦いのは嫌だったけど、これ美味しい。」
「じゃあまた入れてやろう。」
「わーい。やったー。」
おれはまたひとつ経験したぞ。
他にもお茶や色んな飲み物を体験して、驚くのはまた別の話。
それから外に出て薪割りをするジュードさんを眺める。
この家には暖炉がある。まだ秋だけどもうすぐしたら、冬が来るし、朝夕は冷え込むから暖炉に使う薪を準備しているのだ。
手斧を軽く振るだけで、パキッと木材が繊維をさくみたいに薪に変身していく。
「ジュード。すごいねー。」
ぱちぱちと拍手しながら、純粋に感心してたら
「やってみるか?」
と、手斧を差し出してくれた。
おれは喜んでジュードのそばに行くと、手斧を受け取り、細めの丸太を縦において、そこにえいっと手斧を振り下ろした。
ザクッと三分の一くらい斧が刺さって、刺さった丸太ごとトントンと叩きつけると、軽い力なのにパカッと丸太は2つに割れた。
嬉しくて、バッとジュードさんに振り返る。
「上手いじゃないか。」
ジュードさんはニッコリとおれの頭を撫でてくれた。
イケメンのヨシヨシはなんか心臓に悪い。ドキドキして勝手に顔が赤くなっちゃうから。それでもジュードさんに向き直り
「でしょー?」
と笑いながら胸を張った。
本宅横にある小さな小屋に細かく割った丸太を紐でまとめて積み上げた。
「これで当分心配ないだろう。」
「じゃあ次は…。」
ハッと目が覚めた。
「うん?起きたか?」
「え?なんで?」
おれはリビングのソファに寝かされてた。
「ちょっと眠ってただけだ。」
「えー。」
そんなに唐突に倒れるのって、おれもジュードさんも困ると思うんだけど、なんか申し訳ない気持ちになる。
「ごめんなさい。」
しゅんとしながら謝る。
「どうした?なんで謝るんだ?朝も言ったが迷惑だなんて全く思ってないぞ。」
ジュードさんはラグに膝立ちになって、ソファに座るおれの正面で目線を合わせてくれる。おれの両手を握ると軽く持ち上げる。
「ほら、分かるか?最初会った時に比べたら、肌の色が濃くなってる。」
今度は両頬に手を当てて、ぐいっと顔を上げさせられて、じっと眼を見つめられた。
「眼の色も最初は金みたいな明るい色だったのが、だいぶ濃くなってる。マコトは綺麗な琥珀色なんだな。」
翠色の綺麗な眼で見つめられると、こっちの方がドキドキしてしまう。しかもそのままフッと笑うから、なんか脳みそ沸騰したみたいにボンッと熱くなった。
絶対に真っ赤になってると思うんだけど、ジュードさんはさらにニコニコしながら髪の毛もクシャッとしてくる。
「ここも全部濃くなってる。この世界に馴染んでる証拠だ。しばらくしたら落ち着くだろうし、それまで急に寝るくらいは、別に迷惑でもなんでもないぞ。成長を見守れて嬉しいくらいだ。だから、ごめんなんて言ってくれるな。」
眉をハの字にして困ったような顔をしながら、そんなことを言われてしまうと、こちらも困ってしまう。
「でも…。」
ジュードさんがいきなり立ち上がった。高身長なので今度は見上げるかたちになる。
「でもじゃない。マコトは遠慮しすぎだ。ワガママを言えないようなら、こちらにも考えがある。」
「え…。考えって…。」
いつもの優しそうな顔じゃなくて、ニヤッとした悪い笑顔で
「お仕置きだ。」
「お仕置きって…。」
ジュードさんがどうしたいか分からなくて、泣きそうな顔になってたんだと思う。
「お仕置きは怖いだろ?だから黙って俺に世話されたら良い。病気療養中みたいなものだろう?それに甘えられると嬉しいしな。」
目の前に立って、フワリと笑うジュードさんに優しく抱きしめられる。おれはソファに座っているからジュードさんの胸どころかお腹に顔を埋める形になってる。
頭をよしよしされると、そっかー、甘えて良いのかって思えた。
ちなみにお仕置きが何なのかはジュードさんは教えてくれなかった。気になるけど。
33
お気に入りに追加
325
あなたにおすすめの小説
【完結】イケメン高身長オメガな悪役令息を溺愛します。※主人公攻め
りゅの
BL
BL大好き腐男子だった俺は、気がついたらやりこんでいた男しかいない世界のBLゲーム『イケ恋』の攻略対象である、第一王子に転生していた。
中でも特にビジュが好きであった悪役令息がまさかの婚約相手!?
ならそのビッグウェーブに乗るしかねえ!
ってことで婚約者のために尽くしすぎる激甘ストーリーです。
※悪役令息がかなりスパダリ設定ですが、主人公が攻めです。固定
※ゆるいオメガバース設定
⚠️後半にエロ、男性妊娠があります。
感想くださるとモチベに繋がりますし、チョロいんでいっぱい投稿します。
2023/08/11 HOT女性向け33位ありがとうございます。
【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!
O.T.I
ファンタジー
★本編完結しました!
★150万字超の大長編!
何らかの理由により死んでしまったらしい【俺】は、不思議な世界で出会った女神に請われ、生前やり込んでいたゲームに酷似した世界へと転生することになった。
転生先はゲームで使っていたキャラに似た人物との事だったが、しかしそれは【俺】が思い浮かべていた人物ではなく……
結果として転生・転性してしまった彼…改め彼女は、人気旅芸人一座の歌姫、兼冒険者として新たな人生を歩み始めた。
しかし、その暮らしは平穏ばかりではなく……
彼女は自身が転生する原因となった事件をきっかけに、やがて世界中を巻き込む大きな事件に関わることになる。
これは彼女が多くの仲間たちと出会い、共に力を合わせて事件を解決し……やがて英雄に至るまでの物語。
王道展開の異世界TS転生ファンタジー長編!ここに開幕!!
※TS(性転換)転生ものです。精神的なBL要素を含みますので、苦手な方はご注意ください。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
お祭 ~エロが常識な世界の人気の祭~
そうな
BL
ある人気のお祭に行った「俺」がとことん「楽しみ」つくす。
備品/見世物扱いされる男性たちと、それを楽しむ客たちの話。
(乳首責め/異物挿入/失禁etc.)
※常識が通じないです
【完結】転生してどエロく嫁をカスタマイズした
そば太郎
BL
BL小説やゲームが大好物な俺が、仕事帰りに神様のミスで死んでしまった。神様からは、補償特典をつけて、異世界に転生させてくれるって。まじか?
俺は、、、俺が願うのは、、、エロい嫁が欲しい!お願い。神様、俺専用の嫁が欲しいです!
ガチムチ、男前、雄っぱいがむちむちな、すっごーいどエロい嫁が欲しいです!ちなみに、どエロい程度は俺基準です!
※主人公攻め 嫁一筋 浮気はしません!
※作者自身が、文章作成スキルを持ち合わせてないので、設定が甘かったり、文章がつたないのは、スルーしてください!すみません。
※キーワードが注意
※最初の方は、嫁不在のため、他CPのHがあります!両親のHもでてくるので。注意
※中盤以降マニアックプレイ気をつけてください!
※ムーンさんでも投稿してます!
運命のαを揶揄う人妻Ωをわからせセックスで種付け♡
山海 光
BL
※オメガバース
【独身α×βの夫を持つ人妻Ω】
βの夫を持つ人妻の亮(りょう)は生粋のΩ。フェロモン制御剤で本能を押えつけ、平凡なβの男と結婚した。
幸せな結婚生活の中、同じマンションに住むαの彰(しょう)を運命の番と知らずからかっていると、彰は我慢の限界に達してしまう。
※前戯なし無理やり性行為からの快楽堕ち
※最初受けが助けてって喘ぐので無理やり表現が苦手な方はオススメしない
【完結】二年間放置された妻がうっかり強力な媚薬を飲んだ堅物な夫からえっち漬けにされてしまう話
なかむ楽
恋愛
ほぼタイトルです。
結婚後二年も放置されていた公爵夫人のフェリス(20)。夫のメルヴィル(30)は、堅物で真面目な領主で仕事熱心。ずっと憧れていたメルヴィルとの結婚生活は触れ合いゼロ。夫婦別室で家庭内別居状態に。
ある日フェリスは養老院を訪問し、お婆さんから媚薬をもらう。
「十日間は欲望がすべて放たれるまでビンビンの媚薬だよ」
その小瓶(媚薬)の中身ををミニボトルウイスキーだと思ったメルヴィルが飲んでしまった!なんといううっかりだ!
それをきっかけに、堅物の夫は人が変わったように甘い言葉を囁き、フェリスと性行為を繰り返す。
「美しく成熟しようとするきみを摘み取るのを楽しみにしていた」
十日間、連続で子作り孕ませセックスで抱き潰されるフェリス。媚薬の効果が切れたら再び放置されてしまうのだろうか?
◆堅物眼鏡年上の夫が理性ぶっ壊れで→うぶで清楚系の年下妻にえっちを教えこみながら孕ませっくすするのが書きたかった作者の欲。
◇フェリス(20):14歳になった時に婚約者になった憧れのお兄さま・メルヴィルを一途に想い続けていた。推しを一生かけて愛する系。清楚で清純。
夫のえっちな命令に従順になってしまう。
金髪青眼(隠れ爆乳)
◇メルヴィル(30):カーク領公爵。24歳の時に14歳のフェリスの婚約者になる。それから結婚までとプラス2年間は右手が夜のお友達になった真面目な眼鏡男。媚薬で理性崩壊系絶倫になってしまう。
黒髪青眼+眼鏡(細マッチョ)
※作品がよかったら、ブクマや★で応援してくださると嬉しく思います!
※誤字報告ありがとうございます。誤字などは適宜修正します。
ムーンライトノベルズからの転載になります
アルファポリスで読みやすいように各話にしていますが、長かったり短かったりしていてすみません汗
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる