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第2章 ジュード
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しおりを挟むガヤガヤと朝のギルド内は賑やかだ。
依頼を受けようという冒険者達が集まっている。
同じ敷地内に食堂兼酒場もあり、朝から酒飲んだりしている冒険者がいたり、依頼人と打ち合わせしていたり、冒険者達の待ち合わせ場所となっている。
「ジュードさん。おはようございます!今日はよろしくお願いします。」
「ああ。今日はどこだ?」
声をかけてきたのはダン。年若いパーティのリーダーだ。
ジュードはA級の冒険者である。
剣も魔法も扱える魔法剣士。素早さを求めるので、鎧はつけていない。両腰に剣を下げているので、双剣士と間違われがちだが、両利きなだけで普段は片手剣だ。
この世界では珍しい漆黒の髪は腰まであり、まっすぐなストレート。これは髪に魔力を貯められる。という、この世界の常識のためだ。瞳は翡翠のような緑。ジュードグリーンと呼ばれ、そこから名付けられた。
マサの街のギルドを拠点に様々な依頼をこなしながら生活している。
その中に迷宮案内人の仕事がある。
マサの街の近辺には{真実の迷宮}の他に2箇所の迷宮があり、ジュードはそれらの迷宮の案内をしている。
迷宮は変わらない。これが今までの常識だった。
{真実の迷宮}がその常識をぶち破ってしまったのだが、迷宮案内人はその名の通り、案内をして、ボスを倒すか、希望のアイテムをドロップするなど様々である。
護衛として迷宮に入ることもある。
「今回は{真実の迷宮}ボスアタックしたいです!」
「じゃあ51階からラストまでか、期間は5日でいいか?」
「はい!よろしくお願いします!」
新ダンジョンは変わる。
全く同じだったことは無い。
レベルで敵も変わる。
なので新迷宮の案内人の役目は主にレベル調整になる。
もう少し強い敵と戦いたい、今日から参加するパーティのように血気盛んな奴らの子守りのような仕事もある。
死なないダンジョンとして有名になった新ダンジョンは何度でもアタック出来るので、期間が決められている。
1日、3日、5日、10日。
期間内であれば、ダンジョンから追い出されても(死んでも)何度でもやり直せる。
ただ、あんまり酷い追い出され方(死に方)をすると、精神的ダメージが大きすぎて、途中で諦める者も少なくない。
俺は他の人間と比べて、身体能力や魔力に恵まれていたのか、レベルよりも強い。
今のレベルは78と表示されるが周りから言わせると、100いってないとかおかしい!とか。A級なのもありえない。とか
何故かレベルが上がりにくくなくなってここ数年ほとんど上がっていない。
おかげで、ギルドからかなり詳しく調べられたり、周りから詐欺師呼ばわりされたり、散々な目にあった。
まあ結果は経過観察、現状維持となった。
この街に拠点を置いていたのが幸いした。
{真実の迷宮}のレベルで敵の強さが変わるなんていう、とんでもない仕様が、俺に幸運をもたらした。
同じレベル帯のメンバーであれば、用心棒の役割ができる。自分よりレベルが下だと敵も強くなる訳だが、俺はそれ以上に強いらしく、子守りのような役割になる。
今回の様にボスに挑みたい時などは、俺は特に役立つらしい。
なんにせよ、俺は迷宮案内人の仕事がひっきりなしに入るので、かなり忙しい。
自分以外にも何人かレベルと強さが合わない冒険者が出てきて、俺と同じように案内人の仕事をしている。
レベルが変動しにくくなった俺たちは、何かしらの迷宮の影響を受けたのだろうということになった。
なので経過観察、現状維持なわけだ。
で、今日も仕事だ。まあ自分で選んだ仕事なのでこんな事は言いたくないが、あまり人あたりの良い方では無いと思っている。
多くを語るのは苦手だ。
しかし、この街の人間は人が良いのか、こんな自分にも明るく接してくれる。
ダンもそんな人間の1人だ。
「いやー。本当にジュードさんが来てくれるなんて、奇跡みたいですよ。
今大人気なの自覚してますか?」
「まさか。」
実際そういう風に言われても、ピンとこなかったが、確かにずっと休みなく仕事している気がする。
「みんな言ってるんですよ。ジュードさんは強いし、かっこいいし。案内人の指名が出来たら、俺らみたいな下っ端冒険者のお供なんか、絶対回ってこないっす!」
「………ああ。」
返事に困っていたら、ダンはそのまま続ける。
「だいたいジュードさんが帰ってくるってなると、ギルドやばい事になるんですよ!案内人カウンターいっぱいに人で溢れるんですからね。
昨日だってジュードさん争奪戦で、くじ引きで俺たちが引き当てたんです!」
「……そうか。」
俺が知らない間に、大変な事になっているらしい。
ダンは話を聞いていたらしい別の冒険者に後ろから締められている。
「コノヤロウ。上手いこと当てやがって。てめえに新ダンジョンのボスなんざ10万年早え。
ジュード。今からでも断って来いよ。」
「やめてくれよ!せっかくのチャンスなんだよ。」
ダンが後ろから羽交い締めにされながら、涙目で必死に訴えている。
俺はダンを引き剥がした。
「あんまり揶揄ってやるな。行くぞ。
また機会があれば、あんたのパーティの案内するから。」
「ははは。分かってるって。ダン、気をつけて行ってこいよ。
帰ってきたら、また争奪戦だな。
人気者は辛いねー。」
俺まで揶揄われてるのは困るので、ダンのパーティを伴いギルドを出た。
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