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第97話 寝たきり
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十月も下旬に入り、俺の症状は随分と進んでしまった。
首から上は辛うじて動かせるので、引き戸を開けて貰って外を見ると、大粒の雪が降って、庭は白一色に染まっている。
これは完全に雪女のせいだな。
週に一度、永空が来た時だけは、どうにか体を動かしているものの、それ以外は横になって過ごしている。
ほとんど寝たきりの状態だな。
「寝てるだけってのも退屈だよなぁ」
『弱っているのだから、仕方が無かろう。
無理は出来ない状態なのだからな』
化け狐の言う通り、俺の体の外に心が出て、体と心が離れてしまっていると感じる時間が長い。
それだけでなく、体と心を繋いでいる線が、糸の様に細くなっているのを、明確に理解出来る。
何かの拍子で糸が切れてしまえば、きっと俺の生は、そこで終わりになるだろう。
じゃあ今すぐに死ぬのかと言えば、そんな事も無いかなとは思うんだが。
何にせよ、着々とその時が近付いてるのは感じてるって話だ。
今の状態になって、五人姉妹の有難みを強く感じる。
決して上手ではないが料理を作ってくれるから、飯に困っていないのは五人のお陰だ。
いつも上半身を起こして支えてくれて、料理を口まで運んでくれるのだから感謝しかない。
雪女も外に雪を降らせる事を条件に、洗濯をしてくれている。
戻ってきた洗濯物がカッチカチに凍っているので、火の玉乾燥しないといけないのが玉に瑕だが。
皆を引き連れて外で元気に遊んでいるのも、残念さは際立つが、あんまり気を使われるよりか全然良い。
ついでに言うと俺自身も、髪が無いのが今となっては良い事しか無い。
髪の毛があったら、一々洗って乾かしてって面倒臭くてかなわない。
髪が無ければ、濡らした手拭いで拭いただけでも、頭をきれいきれい出来るってもんだ。
「皆はどうするか、もう決めたと思うか?」
『さてな。気になるのならば、聞いてみたらどうだ』
「まあ、そうなんだけどな」
俺が山に来て一年と少し。
これまでに集まってくれたあやかし達は、見える見えないに関わらず、最早家族みたいな存在だ。
皆ここを家として、別々のあやかしが仲良くしているのを見ていると、離れ離れになってしまうのが、何だか悪い気がしてしまう。
『そのような事、お主の気にする必要は無かろう。
元は別々の場所に存在していたあやかし共よ。
今が特別なのであって、特別な時間が終われば元に戻るだけよ』
「それはそれで、何だか寂しいけどな。
雪女みたいにスッパリと出て行くって決めてくれたら、清々しいんだけどよ」
『あれは集まった中でも知能が高いからな。
あれ以外は、お主の残滓が消えてから徐々に元いた場所に戻るであろう』
「そうか。それは皆にとって幸せなのか?」
『今が格別の幸せなのだ。後の事はお主の気にする事では無い』
「そうか」
化け狐は布団の中に入って、俺の隣で寄り添った。
体で感じているのか、心で感じているのかわからないが、何だかポカポカと温かい。
こいつがいつだって隣にいてくれるから、俺は深い安心を得られるんだ。
あとどれだけ生きられるだろうか。
願わくば、最後は皆に見守られながら逝きたいと、心底思う。
首から上は辛うじて動かせるので、引き戸を開けて貰って外を見ると、大粒の雪が降って、庭は白一色に染まっている。
これは完全に雪女のせいだな。
週に一度、永空が来た時だけは、どうにか体を動かしているものの、それ以外は横になって過ごしている。
ほとんど寝たきりの状態だな。
「寝てるだけってのも退屈だよなぁ」
『弱っているのだから、仕方が無かろう。
無理は出来ない状態なのだからな』
化け狐の言う通り、俺の体の外に心が出て、体と心が離れてしまっていると感じる時間が長い。
それだけでなく、体と心を繋いでいる線が、糸の様に細くなっているのを、明確に理解出来る。
何かの拍子で糸が切れてしまえば、きっと俺の生は、そこで終わりになるだろう。
じゃあ今すぐに死ぬのかと言えば、そんな事も無いかなとは思うんだが。
何にせよ、着々とその時が近付いてるのは感じてるって話だ。
今の状態になって、五人姉妹の有難みを強く感じる。
決して上手ではないが料理を作ってくれるから、飯に困っていないのは五人のお陰だ。
いつも上半身を起こして支えてくれて、料理を口まで運んでくれるのだから感謝しかない。
雪女も外に雪を降らせる事を条件に、洗濯をしてくれている。
戻ってきた洗濯物がカッチカチに凍っているので、火の玉乾燥しないといけないのが玉に瑕だが。
皆を引き連れて外で元気に遊んでいるのも、残念さは際立つが、あんまり気を使われるよりか全然良い。
ついでに言うと俺自身も、髪が無いのが今となっては良い事しか無い。
髪の毛があったら、一々洗って乾かしてって面倒臭くてかなわない。
髪が無ければ、濡らした手拭いで拭いただけでも、頭をきれいきれい出来るってもんだ。
「皆はどうするか、もう決めたと思うか?」
『さてな。気になるのならば、聞いてみたらどうだ』
「まあ、そうなんだけどな」
俺が山に来て一年と少し。
これまでに集まってくれたあやかし達は、見える見えないに関わらず、最早家族みたいな存在だ。
皆ここを家として、別々のあやかしが仲良くしているのを見ていると、離れ離れになってしまうのが、何だか悪い気がしてしまう。
『そのような事、お主の気にする必要は無かろう。
元は別々の場所に存在していたあやかし共よ。
今が特別なのであって、特別な時間が終われば元に戻るだけよ』
「それはそれで、何だか寂しいけどな。
雪女みたいにスッパリと出て行くって決めてくれたら、清々しいんだけどよ」
『あれは集まった中でも知能が高いからな。
あれ以外は、お主の残滓が消えてから徐々に元いた場所に戻るであろう』
「そうか。それは皆にとって幸せなのか?」
『今が格別の幸せなのだ。後の事はお主の気にする事では無い』
「そうか」
化け狐は布団の中に入って、俺の隣で寄り添った。
体で感じているのか、心で感じているのかわからないが、何だかポカポカと温かい。
こいつがいつだって隣にいてくれるから、俺は深い安心を得られるんだ。
あとどれだけ生きられるだろうか。
願わくば、最後は皆に見守られながら逝きたいと、心底思う。
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