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第40話 再びの親子漫才

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 久々に寺に帰って来たら、馬鹿息子と知らないお姉ちゃんと、今にも唇を重ねようとしている場面に出くわした。

「帰ったぞ」

 馬鹿息子はお姉ちゃんから顔を放してこっちを見た。

「これ、爺の所で貰ったBODIVA。土産な」

 俺は気遣いの出来る大人だからな。
 土産を置いた後は、何も見なかった事にして。

 仕事の時に座っていたゲーミングチェアに、どっかりと腰を下ろした。

「おい。義理の父親が久々に帰って来たんだから茶でも用意しろよ」

『全く、意地の悪い顔をしおって』

 化け狐から指摘された通り、今の俺は頬が緩んでしまって仕方がない。
 何てオイシイ場面に出くわしたのだろうか。

 俺は馬鹿息子が次にどう出てくるかと、ニヤニヤしながらじっくりと待つ。
 馬鹿息子は焦った様子で俺の顔と、お姉ちゃんの顔を交互に見比べて。

「出てってくれるぅぅ!?」

 ようやく俺にツッコミを入れた。
 まあ言葉はシンプルだが、悪くは無いな。

「生き生きとした若葉が芽吹く頃。
 馬鹿息子さんにおきましては如何お過ごしでしょうか」

「その手紙の書き出しみたいなの今必要!?」

 寧ろ今しか使いどころねぇよ。

「ところでな。最近俺は空気が読めるようになったって評判なんだよ」

「だったら空気読んでくれないぃぃ!?」

 え、普通に嫌だけど。

「どうして俺の家で俺が空気を読まなきゃいけないんだよ」

「出てった人がそれ言うぅぅ!?」

 俺が六十五まではいるっつったのに、追放したのはお前だろ。

 そこまでツッコんで馬鹿息子は諦めたのか、ようやくお姉ちゃんを紹介する気になったらしい。

「えっと、親父には今度行く時に紹介しようと思ってたんだけど、生駒美香さん」

「生駒です。よろしくお願いします」

 ふむ、黒髪をクリップでまとめてる眼鏡を掛けた知的な感じだな。
 年の頃は三十ぐらいか?
 薄化粧で華のある美人では無いが、それなりに綺麗ではある。

「こいつの父親の永海だ。よろしく。
 二人はどこの店で知り合ったんだ?プロだろ?」

「プロじゃねぇよ!プロだとしても親に話す事じゃねぇだろ!」

 何故だか強めの抗議を受けてしまったが、馬鹿息子はプロじゃない事を照明する為に馴れ初めを話す気らしい。
 見た目は地味に見えるが、実際どこの店のお姉ちゃんなのかは気になる所だ。

「親父の所に遊びに行った後にさ、首筋が涼しくなる事があってさ」

 そりゃお前、震々が憑いてっからな。
 やっぱり馬鹿息子に憑いて行ってて爆笑もんだ。

「マッサージを頼んで来てくれたのが彼女だったんだよ」

 早速自白しやがったな。

「マッサージってそりゃお前。プロじゃねぇか」

「プロじゃねぇわ!大人のマッサージじゃねぇわ!」

 いやいや、家まで来てマッサージしてくれるって、どう考えてもプロだろ?
 馬鹿息子は言い訳を並べて、彼女がプロでない事を懸命に訴える。
 あまりにも真剣に訴えるので、仕方が無いから信じてやることにした。

「何だよそれなら初めから整体師って言えよ紛らわしいな」

「普通はそっちのプロだと思わねぇんだよ!
 確かに整体師って言わなかったのはこっちの過ちだったよ!」

 馬鹿息子は非を認めて謝罪をした後で、ゆっくり話がしたいと言って、俺と彼女を居間に連れて行く。
 そして少し待っててくれと言って、台所に茶を淹れに行った。
 別にポットの湯で淹れた茶でも良かったんだがな。

 折角二人きりになれた事だし、息子の彼女を口説いてやるとするか。
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