【完結】追放住職の山暮らし～あやかしに愛され過ぎる生臭坊主は隠居して山でスローライフを送る

第26話 クリスマス気分

　十二月二十五日は何の日か知ってるか？
　そうだ、クリスマスだ。
　イエス・キリストの降誕を記念する例の祭りだ。
　日本人の多くは仏教徒なのに、何故か毎年大盛り上がりになる、あの一大イベントだ。

　まあ、はっきりと言っておきたいのは、坊主にとっては少しばかりも関係の無い虚無イベントだ。
　だってそうだろう？
　仏門に入った坊主が釈迦の誕生日を祝うならまだしも、イエス・キリストの誕生日を祝うなんて意味がわからない。

　釈迦の誕生を祝うのは四月八日だ。
　つまり俺達にとってのクリスマスイブは四月七日であると、俺は提唱させて貰おう。
　そういう訳で。

「モミの木ってこの山には生えてねぇの？買わねぇと駄目か？」

『この山には無いのではないか？
　お主が願えばあやかしが気を利かせて運んでくるかもしれないがな』

「いや、流石にそれはなぁ。余所様の家のモミの木を引っこ抜いて持って来そうだから却下だ。
　爺に買っといてくれってメッセージ送っとくか」

『シャンパンも早めに注文しておけ。年末は配達も混み合うのだろう』

「へいへい。飾りは、電飾はいらんな。
　外は毎日がイルミネーションみたいなもんだからな」

　俺は今、クリスマスの準備に追われている。
　何故坊主の俺が宗教上、何の関係も無いクリスマスの準備をしているのかって？

　そんなもん、お姉ちゃんのいる店で遊んでたら毎年恒例の行事なんだから、やらないとどうにも落ち着かない体になってるんだよ！
　これは毎年の習慣なんだから、仕方がないんだ。

　因みに馬鹿息子は普通にクリスマスを楽しみにしている口なので、七面鳥を食ってシャンパンを開けてクリスマスケーキもホールで買う事だろう。
　願わくば、それに付き合ってくれるお姉ちゃんの一人でもいる事を願う。

「料理は買えば良いよな？料理は買えば良いだろ？」

　クリスマス料理なんて手の掛かる物ばかりだ。
　俺みたいなリアル三分クッキングで済ませたい奴にとっては面倒が過ぎるので、出来れば遠慮したい。

『我は別に良いがな。童は何も食えんぞ』

「ぐっ」

「おいしいね！」

「ぐっ！」

　俺がクリスマスイベントを執り行う目的の一つに、普段頑張ってくれてるあやかし達と日本の一大イベントを楽しもうって考えがある。
　クリスマスってアメリカとかの一大イベントであって、日本のイベントじゃねぇけど。

「しゃあねぇ。それっぽいスープぐらいは作るか」

　ブロッコリーとかで良いんだろう？
　冬野菜として既に植えてあるから、うちの土なら直ぐに収穫出来る筈だ。

　大して上手く出来なくても五人姉妹はニコニコしながら食うからな。
　加えて五子は「おいしいね！」だし、何処かの化け狐と違って文句を言わない優しい子達だ。

『不味いものを不味いと言って何が悪い。
　そもそも童共には味覚があるのか？』

「どうだろうな」

　確かに味覚以外の別の基準を持っている気はしないでもない。
　まあ俺からすれば失敗作でもおいしいと言ってくれる方が嬉しい。

　俺は褒められて伸びるタイプだからな。

『爺の癖に気持ちが悪い』

　辛辣。