5 / 12
第3話 偉そうな○○
しおりを挟む
華麗なる半目からの復帰。
店長さんはワタシが半目になっている間は黙って待っててくれるので、存外良い人なのかもしれないと思い始めた、イマこの頃。
あやかしカフェは10時オープンの19時クローズでワタシは9時間勤務。
休憩が昼休憩1時間と夕方に15分って、かなりしっかりした勤務形態だった。
家が近いから昼休憩は帰って家で食べるのもありかもしれない。
だって生首がいるんだよ?
他にもいるに決まってるよね?
バックヤードとか特にいそうじゃん!
タブレット端末の契約書を見ながら説明を聞いて、特に問題はなさそうだったので。
人外がいるってどうしようもない事柄以外には、問題がなさそうだったのでサインをして。
「血判にする?針、あるわよ。
うふふふふふふふふふ」
「いえ、結構です」
こっわ!
タブレットに血判意味無いでしょうが!
儀式か!?
何かの儀式が行われているのか!?
血判押したら一生ここから出れられない、みたいな呪いにでも掛かるのか!?
ワタシがまだうら若い少女だったなら、血判を押してしまったかもしれないけれども。
残念ながらワタシは酸いも甘いも知り尽くした大人の女だ。
就職戦線で全敗した酸いを知り尽くしたワタシはノーと言える女なのだ!
「冗談よ。うふふふ」
いや、絶対に冗談のトーンでは無かったけれども。
何にせよ、これでワタシは時給1800円の仕事に。
時給1800円も貰えるのに売り上げノルマがあって、そこのブランドにお金を落として服を買ったりしなくても良い、普通に稼げる職に就けた訳だ。
楽々就職を決めてワタシを嘲笑った者達の初任給を超えていくのだ!
放射線技師よりもよっぽどリスクは高そうだけれども!
「ふはははははは!」
「?」
おっと、思わず高笑いが漏れてしまったぜ。
「しっかりと契約で縛れたって事で、うふふふ。
お店の看板あやかしを紹介するわね」
契約で縛る?
どうしてそこで笑ったの?
気になる部分はあったけれども、それより何より“看板あやかし”って謎のワードのが気になってそれどころではない。
店長が例の招き猫みたいな動きをすると、しれっと壁をすり抜けて、でっかい猫が現れた。
何あの太々しい化け猫。
サバトラ猫を2回りぐらい大きくして、でっぷり太らせたみたいな感じで、顔は不愛想だし威圧感が凄いんだけど、それより何より。
その頭に付けてる“オス です”って書かれた真っ赤な蝶々結びのリボンは何なんだよ!
世界的人気を誇る日本のキャラクター猫ちゃんかよ!
体重がリンゴ3個分のあの子かよ!
いや、頭頂部にあるからどちらかと言うとプリンセス系のコスチュームプレイに近いけれども!
ああ、ツッコミたい。
怖いけどツッコミたいよぉ。
「うふふふ。この子は劇場に足を運ぶぐらいのお笑い好きだからツッコんでも大丈夫よ」
「だから、人の心を読むの止めて貰えます?」
あやかしにお笑い好きっているのか。
壁をすり抜けられるから確実に入場料は払ってないな。
しかし、良い事を聞いた。
店に入ってからツッコミ所しかないから、ワタシも鬱憤が溜まっていたんだ。
ツッコんで良いならば、存分にツッコませて貰うとしよう。
『我は』
「偉そうな猫だな!」
もう一人称の段階でツッコむ。
大体猫って言ったら、吾輩って相場が決まっているだろう。
吾輩も十分偉そうだけれど。
化け猫はワタシの顔を見上げて一瞬思案顔をして。
『わては』
「落語家か!」
『拙者は』
「お侍さんかよ!」
『某は』
「だからお侍さんかよ!」
『拙僧は』
「僧侶じゃないだろ!」
『余は』
「お偉いさんにでもなったつもりか!」
『妾は』
「ぶはっ!雄妾とかいう新ジャンル!」
ワタシと化け猫はしばしの間、一人称ラリーを続け。
『お前、中々やるな人間の娘』
「お前もな、化け猫」
やり切ったとばかりにガッチリと握手を交わした。
名前とかはまだ聞けていない。
第3話 偉そうな化け猫
店長さんはワタシが半目になっている間は黙って待っててくれるので、存外良い人なのかもしれないと思い始めた、イマこの頃。
あやかしカフェは10時オープンの19時クローズでワタシは9時間勤務。
休憩が昼休憩1時間と夕方に15分って、かなりしっかりした勤務形態だった。
家が近いから昼休憩は帰って家で食べるのもありかもしれない。
だって生首がいるんだよ?
他にもいるに決まってるよね?
バックヤードとか特にいそうじゃん!
タブレット端末の契約書を見ながら説明を聞いて、特に問題はなさそうだったので。
人外がいるってどうしようもない事柄以外には、問題がなさそうだったのでサインをして。
「血判にする?針、あるわよ。
うふふふふふふふふふ」
「いえ、結構です」
こっわ!
タブレットに血判意味無いでしょうが!
儀式か!?
何かの儀式が行われているのか!?
血判押したら一生ここから出れられない、みたいな呪いにでも掛かるのか!?
ワタシがまだうら若い少女だったなら、血判を押してしまったかもしれないけれども。
残念ながらワタシは酸いも甘いも知り尽くした大人の女だ。
就職戦線で全敗した酸いを知り尽くしたワタシはノーと言える女なのだ!
「冗談よ。うふふふ」
いや、絶対に冗談のトーンでは無かったけれども。
何にせよ、これでワタシは時給1800円の仕事に。
時給1800円も貰えるのに売り上げノルマがあって、そこのブランドにお金を落として服を買ったりしなくても良い、普通に稼げる職に就けた訳だ。
楽々就職を決めてワタシを嘲笑った者達の初任給を超えていくのだ!
放射線技師よりもよっぽどリスクは高そうだけれども!
「ふはははははは!」
「?」
おっと、思わず高笑いが漏れてしまったぜ。
「しっかりと契約で縛れたって事で、うふふふ。
お店の看板あやかしを紹介するわね」
契約で縛る?
どうしてそこで笑ったの?
気になる部分はあったけれども、それより何より“看板あやかし”って謎のワードのが気になってそれどころではない。
店長が例の招き猫みたいな動きをすると、しれっと壁をすり抜けて、でっかい猫が現れた。
何あの太々しい化け猫。
サバトラ猫を2回りぐらい大きくして、でっぷり太らせたみたいな感じで、顔は不愛想だし威圧感が凄いんだけど、それより何より。
その頭に付けてる“オス です”って書かれた真っ赤な蝶々結びのリボンは何なんだよ!
世界的人気を誇る日本のキャラクター猫ちゃんかよ!
体重がリンゴ3個分のあの子かよ!
いや、頭頂部にあるからどちらかと言うとプリンセス系のコスチュームプレイに近いけれども!
ああ、ツッコミたい。
怖いけどツッコミたいよぉ。
「うふふふ。この子は劇場に足を運ぶぐらいのお笑い好きだからツッコんでも大丈夫よ」
「だから、人の心を読むの止めて貰えます?」
あやかしにお笑い好きっているのか。
壁をすり抜けられるから確実に入場料は払ってないな。
しかし、良い事を聞いた。
店に入ってからツッコミ所しかないから、ワタシも鬱憤が溜まっていたんだ。
ツッコんで良いならば、存分にツッコませて貰うとしよう。
『我は』
「偉そうな猫だな!」
もう一人称の段階でツッコむ。
大体猫って言ったら、吾輩って相場が決まっているだろう。
吾輩も十分偉そうだけれど。
化け猫はワタシの顔を見上げて一瞬思案顔をして。
『わては』
「落語家か!」
『拙者は』
「お侍さんかよ!」
『某は』
「だからお侍さんかよ!」
『拙僧は』
「僧侶じゃないだろ!」
『余は』
「お偉いさんにでもなったつもりか!」
『妾は』
「ぶはっ!雄妾とかいう新ジャンル!」
ワタシと化け猫はしばしの間、一人称ラリーを続け。
『お前、中々やるな人間の娘』
「お前もな、化け猫」
やり切ったとばかりにガッチリと握手を交わした。
名前とかはまだ聞けていない。
第3話 偉そうな化け猫
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
【R18】エリートビジネスマンの裏の顔
白波瀬 綾音
恋愛
御社のエース、危険人物すぎます───。
私、高瀬緋莉(27)は、思いを寄せていた業界最大手の同業他社勤務のエリート営業マン檜垣瑤太(30)に執着され、軟禁されてしまう。
同じチームの後輩、石橋蓮(25)が異変に気付くが……
この生活に果たして救いはあるのか。
※完結済み、手直ししながら随時upしていきます
※サムネにAI生成画像を使用しています
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる