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24 注文品製作と怪我人治療
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千代はエルレイダから帰った翌日も、いつも通りに朝5時に起きた。
そして、いつものルーチンワークをこなしていく。
ただし冒険者達が沢山いるので、石英の採取には行かなかった。
餌遣り、水遣り、洗濯、掃除等の雑用を終えてから、ガラス釜の前に付いた。
千代は先日受けた『耐熱効果付きグラス』の注文依頼の為に、レベルアップした【耐熱+2】を魔法付与しながら注文品を作っていく。
ガラス窯の前の作業は暑いし、息吹棒も女性には結構重い。
「魔法を使える世界なんだから、もっと効率よく作業が出来ないかなぁ?」
脇に置いてある他の職人達の完成品を眺めていて、ふと思いついた。
「完成品を【鑑定】!」
シュィイイインッ!
それらには、当然だが何も効果が付与されていない。
千代は両手を完成品に向けて【魔法付与】を発動してみる。
「完成品に【耐熱】付与!」
ピッキィイイインッ!
もう一度、改めて【鑑定】してみると【耐熱+2】が付与されていた。
ピンポロリン!
【魔法付与Ⅰ】が【魔法付与Ⅱ】に上がった。
「完成品にも【耐熱+2】が付いちゃった! ここの職人達は誰も【鑑定】スキルを持ってないから、魔法付与には気付かないだろうなぁ……」
千代は注文のあったデザインと同じ、他の職人の完成品に【耐熱】を付与してみる。
もう1回【鑑定】をして【耐熱+2】が付与されてる事を確認してからローリーを呼んだ。
「ローリーさん、ちょっと来てください!」
「な~に、チヨ?」
「これを見て下さい」
千代はローリーに鑑定結果のウインドウの閲覧許可を与えた。
「まぁ、どういう事。他の職人の作った物まで【耐熱+2】が付いてるわ」
「後から【耐熱】効果を付けられる事が分かったんです」
「まぁ凄い。他の物にも付けられるの?」
「はい、工房の完成品全部に付けようと思うのですが?」
「うん、ガラスコップは【耐熱】でもいいけど、水差しは【保冷】で、ポットは【保温】がいいわね」
「そうですね。それじゃあローリーさんの指示通りしますので、効果ごとに仕分けしましょう」
「そうね。……あと作者が分かる様にも仕分けしましょう、売り上げを歩合で払わないといけないから」
「はい」
鑑定できる上級貴族の間でローリー工房の名が徐々に広まっていき、やがて大陸全土に知れ渡る事になるのであった。
△ ▼ △
ザワザワザワザワ……
昼過ぎになると、工房前の街道が何だか騒がしくなってきた。
「姉さん、ダンジョンで魔物の氾濫が起きてるそうですよ」
様子を見に行った職人がそう告げた。
怪我をした冒険者達が、カタランヌの町に引き返して来てるそうだ。
ローリーが救急箱を取り出した。
「大した事はできないけど、せめて出来るかぎりの治療をして上げましょう」
「はい」
ローリーと千代は、救急箱とお湯とタオルを持って街道に出て行った。
2人は手直なところから、すぐに治療を始める。
とは言っても、ローリーは回復スキルを持ってないから、傷口を消毒して包帯を巻くだけだ。
この世界の平民で回復スキルを持っている者は殆どいない。
もし居たとしても、希少な癒し手は神殿や貴族や上級冒険者グループから引く手数多なので、田舎町には残っていない。
「そういえば私、【回復】スキルを持っていたと思います。使ってみますね」
「そう、お願いね」
「怪我人を【回復】!」
シュィイイイイインッ!
目の前の冒険者は、腕に大きな怪我をして血を流していたが、傷ひとつない元の綺麗な腕に治った。
「おぉ! 痛みが消えたぞ、ありがとう」
冒険者は千代の手を取り、押し頂いて感謝した。
「良かったですね」
ピンポロリン!
【回復Ⅰ】が【回復Ⅱ】に上がった。
千代は怪我してる冒険者をドンドン【回復】していく。
「はぁ、あたしはする事が無くなっちまったなぁ」
「いいえ、ローリーさんは一緒に居て下さい。私1人では、沢山の見知らぬ男の人の前に居られませんから」
「そうだったわね、人見知りのチヨを補佐しないとね」
ローリーは怪我を確認して洗ったり、服の汚れを拭ったり、出来る事を千代の隣で始めた。
治療を続ける中で、千代の回復スキルは更に【回復Ⅲ】に上がった。
怪我人が少なくなってきた時、最後尾にドニロとリフィップがカシオに肩を貸して戻って来た。
カシオはガックリと項垂れて意識が無かった。
「ヤダッ! カシオ君、しっかりしてえええっ!」
そう叫んだ途端に千代の体が光り、足元に魔法陣が展開する。
シュィイイイイインッ!
キラキラキラキラッ! ピッカアアアアアンッ!
千代は意識せずに勝手にルミナに変身してしまった。
ブゥウウウウウンッ!
更に、魔法陣が虹色に光りながら回転して、大きく広がっていく。
キラキラと眩しい光がドーム状に広がると、優しく温かい光が全ての怪我人たちを包んでいった。
ピッキィイイイイイイイイイインッ!
光るドームの中の全ての怪我人の傷が、完全に癒されて体力が回復した。
「ダンジョン前に【転移】!」
シュィイイイイインッ!
「あっ、チヨ待ちなさい、1人で行かないでっ! ……はぁ」
千代はたった1人で、ダンジョンに【転移】していってしまった。
そして、いつものルーチンワークをこなしていく。
ただし冒険者達が沢山いるので、石英の採取には行かなかった。
餌遣り、水遣り、洗濯、掃除等の雑用を終えてから、ガラス釜の前に付いた。
千代は先日受けた『耐熱効果付きグラス』の注文依頼の為に、レベルアップした【耐熱+2】を魔法付与しながら注文品を作っていく。
ガラス窯の前の作業は暑いし、息吹棒も女性には結構重い。
「魔法を使える世界なんだから、もっと効率よく作業が出来ないかなぁ?」
脇に置いてある他の職人達の完成品を眺めていて、ふと思いついた。
「完成品を【鑑定】!」
シュィイイインッ!
それらには、当然だが何も効果が付与されていない。
千代は両手を完成品に向けて【魔法付与】を発動してみる。
「完成品に【耐熱】付与!」
ピッキィイイインッ!
もう一度、改めて【鑑定】してみると【耐熱+2】が付与されていた。
ピンポロリン!
【魔法付与Ⅰ】が【魔法付与Ⅱ】に上がった。
「完成品にも【耐熱+2】が付いちゃった! ここの職人達は誰も【鑑定】スキルを持ってないから、魔法付与には気付かないだろうなぁ……」
千代は注文のあったデザインと同じ、他の職人の完成品に【耐熱】を付与してみる。
もう1回【鑑定】をして【耐熱+2】が付与されてる事を確認してからローリーを呼んだ。
「ローリーさん、ちょっと来てください!」
「な~に、チヨ?」
「これを見て下さい」
千代はローリーに鑑定結果のウインドウの閲覧許可を与えた。
「まぁ、どういう事。他の職人の作った物まで【耐熱+2】が付いてるわ」
「後から【耐熱】効果を付けられる事が分かったんです」
「まぁ凄い。他の物にも付けられるの?」
「はい、工房の完成品全部に付けようと思うのですが?」
「うん、ガラスコップは【耐熱】でもいいけど、水差しは【保冷】で、ポットは【保温】がいいわね」
「そうですね。それじゃあローリーさんの指示通りしますので、効果ごとに仕分けしましょう」
「そうね。……あと作者が分かる様にも仕分けしましょう、売り上げを歩合で払わないといけないから」
「はい」
鑑定できる上級貴族の間でローリー工房の名が徐々に広まっていき、やがて大陸全土に知れ渡る事になるのであった。
△ ▼ △
ザワザワザワザワ……
昼過ぎになると、工房前の街道が何だか騒がしくなってきた。
「姉さん、ダンジョンで魔物の氾濫が起きてるそうですよ」
様子を見に行った職人がそう告げた。
怪我をした冒険者達が、カタランヌの町に引き返して来てるそうだ。
ローリーが救急箱を取り出した。
「大した事はできないけど、せめて出来るかぎりの治療をして上げましょう」
「はい」
ローリーと千代は、救急箱とお湯とタオルを持って街道に出て行った。
2人は手直なところから、すぐに治療を始める。
とは言っても、ローリーは回復スキルを持ってないから、傷口を消毒して包帯を巻くだけだ。
この世界の平民で回復スキルを持っている者は殆どいない。
もし居たとしても、希少な癒し手は神殿や貴族や上級冒険者グループから引く手数多なので、田舎町には残っていない。
「そういえば私、【回復】スキルを持っていたと思います。使ってみますね」
「そう、お願いね」
「怪我人を【回復】!」
シュィイイイイインッ!
目の前の冒険者は、腕に大きな怪我をして血を流していたが、傷ひとつない元の綺麗な腕に治った。
「おぉ! 痛みが消えたぞ、ありがとう」
冒険者は千代の手を取り、押し頂いて感謝した。
「良かったですね」
ピンポロリン!
【回復Ⅰ】が【回復Ⅱ】に上がった。
千代は怪我してる冒険者をドンドン【回復】していく。
「はぁ、あたしはする事が無くなっちまったなぁ」
「いいえ、ローリーさんは一緒に居て下さい。私1人では、沢山の見知らぬ男の人の前に居られませんから」
「そうだったわね、人見知りのチヨを補佐しないとね」
ローリーは怪我を確認して洗ったり、服の汚れを拭ったり、出来る事を千代の隣で始めた。
治療を続ける中で、千代の回復スキルは更に【回復Ⅲ】に上がった。
怪我人が少なくなってきた時、最後尾にドニロとリフィップがカシオに肩を貸して戻って来た。
カシオはガックリと項垂れて意識が無かった。
「ヤダッ! カシオ君、しっかりしてえええっ!」
そう叫んだ途端に千代の体が光り、足元に魔法陣が展開する。
シュィイイイイインッ!
キラキラキラキラッ! ピッカアアアアアンッ!
千代は意識せずに勝手にルミナに変身してしまった。
ブゥウウウウウンッ!
更に、魔法陣が虹色に光りながら回転して、大きく広がっていく。
キラキラと眩しい光がドーム状に広がると、優しく温かい光が全ての怪我人たちを包んでいった。
ピッキィイイイイイイイイイインッ!
光るドームの中の全ての怪我人の傷が、完全に癒されて体力が回復した。
「ダンジョン前に【転移】!」
シュィイイイイインッ!
「あっ、チヨ待ちなさい、1人で行かないでっ! ……はぁ」
千代はたった1人で、ダンジョンに【転移】していってしまった。
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