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19 再召喚と魔王復活

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 パインフィルド帝国の皇城では宮廷魔導士達が、再び勇者召喚する為に魔法陣を起動させようとしていた。

 彼らは、大きなネズミの魔物を召喚してしまった原因を解明出来なかった。
 しかし魔法陣に不具合が見つからなかったので、異世界(地球)側に何か問題があったのだろうと結論付けられた。

 宮廷魔導士7人が、勇者召喚の間で再び魔力を注いで魔法陣を起動すると、魔法陣が魔力を吸って紫色に光りだした。

 ブゥウウウウウウウウウウンッ!

 円筒状に光が上がり人間のシルエットが浮かび上がって来る。
 魔法陣から現れたのは、抱き合ってキスをしている男女の若い高校生だった。


「「「はぁぁ……」」」

 魔導士達から落胆の溜息が出た。


「又、イレギュラーな召喚かもしれぬ……」

 宮廷魔導士長ペリノアがそう呟いた。


「何だなんだ! ここは何処だぁ?」

 魔法陣から現れた若い男が声を荒げる。


「何ジロジロ見てるのよ! エロジジイ!」

 セーラー服姿の女が恥じらいも見せずに魔導士達を罵った。

「「「……!」」」


「ゥオッホン! お主達は異世界に勇者召喚されたのじゃ! 褒章は望み放題じゃ! 訓練をして経験を積み魔王討伐して英雄になってくれい!」

「「はぁあ~!?」」

 その後の展開は、いわゆるラノベのお約束通りだった。

(主人公じゃないので細かい絡みは割愛させていただきます。お決まりのやり取りだと思ってください)



 魔導士長ペリノアは2人のステータスを【鑑定】する。
 鑑定の結果は男の職業が『勇者』で、女の職業が『魔法少女』だった。

「う~む、こういうケースも過去の召喚記録には記載されておらぬ。たぶん初めての事なのだろう……」


「へぇ、俺っち勇者なんだぁ」

「あ~し、魔法少女だって~、うけるぅぅ!」


「はぁ、取り敢えずVIP待遇でオモテナシさせて頂きます。侍女がご案内しますので、どうぞお寛ぎ下さい」

「よろしく~」
「まじうけるんですけどぉぉ」



 △ ▼ △



「宰相、申し訳ありません。又してもイレギュラーな召喚でした」

「うむ。……お主達も聞いてると思うが、実は公爵家にルミナが現われたという噂があるのじゃ」

「はい、その事は宮廷でも噂に成っていました」


「1人娘の次期公爵ジェルソミーナをゾンビから救ったそうだ。その姿は伝え聞いてる姿と全く同じだったと言うことだ」

「それは本当なんでしょうか?」

「うむ、しかし迎えに行った騎士団は彼女を見つける事が出来なかった。もし本当のルミナが現地人として顕現しているのなら、勇者召喚が上手くいかなかったことも納得できる」


「すでに魔法少女勇者がこの地に居るので、異世界勇者召喚の魔法陣が正しく働かなかったと言う事ですね」

「うむ」


「それでは、今回召喚した2人はどうするのですか?」

「ルミナを皇城に迎えるまでの保険だ」


「それで、あの三流騎士を教育係にしたのですね」

「そう言う事だ。奴は旧フランク王国の血筋だと言って、やたら出しゃばりおるからな。 勇者のお守り役を与えると言ったら、名誉な仕事だと言って喜んでおったわ。 いずれ勇者と魔法少女と一緒に魔王のにえにでもしてしまえばよい」

「ははっ」


「それよりも、魔王の方も頼んだぞ」

「はっ、そちらの準備も抜かりありません」



 ☆ ★ ☆



 騎士団訓練所で騎士団長が、集まった団員達に告げる。

「過去の召喚記録と違うが、召喚された2人には共同して魔王討伐をして貰う事に成った」

「「「ははっ」」」


「魔王討伐に相応しい勇者と魔法少女に成長出来る様に協力してやってくれ」

「「「ははっ」」」



 騎士団長は教育担当に選ばれた2人の騎士を連れて、召喚された2人がいる客間に挨拶しに来た。

「こちらは、貴方達を指導するミヤイとタビチだ、一緒に行動して何なりと教えを乞うように」

「よろしくぅ」
「うけるぅ」


 前歯に特徴があるミヤイが1歩前に出る。

「ミィは、おフランクで騎士道を修行した超エリートです。ユゥ達にもエリート修行をして貰うです」

「よろしくです」
「うけるです」


「エリートの言葉遣いで嬉しいです」

「ゥオッホン! ミヤイ騎士はフランク王国出身なので言葉になまりがある。そこは真似しなくていいぞ」

「「は~いです」」


 続いてスキンヘッドで小柄なタビチが挨拶する。

「召喚されたばかりの貴方達はレベル1だから、これから十分に訓練と経験を積んで欲しい。 弱い魔物から倒していけば、経験を詰んでレベルが徐々に上がっていくだろう。 魔王を倒せるように頑張ってくれ」

「「オッケ~です」」



 ◇ ◆ ◇



 宮廷魔導士達は勇者召喚が終わると、今度は秘密裏に元魔王城の廃墟に向かった。

「勇者召喚が取り敢えず終わったので、今度は急いで魔王復活の準備をするぞ! マナポーション、ツユダクダクで魔力を使うからな」

「「ははっ」」

 魔導士達は廃墟地下に潜り、最下層の魔王の寝室に入りダンジョン核で出来た棺を見つけた。
 その中で魔王が眠っている。
 45年前の魔王封印後から、そのダンジョンには魔物が居なかった。

 ダンジョン核は魔王に魔力を注いでるが、まだあまり溜まっていない。

 宮廷魔導士達は棺を囲むように魔法陣を描いて行く。
 そして、【転移門】を起動してカタランヌの山奥に棺を魔王ごと移動させた。
 魔導士達に【浮遊】魔法で運ばれた棺は、採掘坑道の1番奥に設置される。

 ダンジョン核は魔物を生み、その魔物がダンジョンから地上に出て人を襲い、犠牲者の魂と魔力を吸ってダンジョン核を又成長させる。
 核はダンジョンを108階まで成長させると今度は魔王に魔力を充填して魔王を復活させる。
 復活した魔王は魔王城を作り、それが完成すると魔物の大氾濫が始まるのだ。


 一仕事終えた宮廷魔導士筆頭ペリノアが疲労困憊こんぱいの魔導士達に語る。

「人知れずダンジョンが成長しきると魔王が復活して、地上部に魔王城が構築される。
 魔王城が成長しきると魔物の氾濫が始まり、街を次々と壊滅させてこの国に魔物が溢れて行くだろう。
 帝国に逆らう者共を恐怖のどん底に落とすのだ」


 カタランヌの山奥でのダンジョン出現は、最も帝国に逆らう地域に魔王城を築く為の布石だった。
 カタランヌの町があるエスタード王国が反帝国の最右翼と見られていたのだ。

 エスタード王国は帝国に逆らう者や廃王国の王族をかくまって庇護ひごをしていた。
 そして、その事が帝国側に感づかれていたのであった。
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