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第1章 異世界で生活研修! って、日本に帰れますか?

6 閑話 オログ=ハイの話

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 次代冥王サウロンによって生み出された凶暴なトロルの上位種オログ=ハイ。

 鎧兜や巨大な槌鉾・戦槌で武装して、通常のトロルより大型で力も強く俊敏な上、知能や戦闘技能も向上していて、太陽光を浴びても石化しないなど大幅に強化されている。
 冥王サウロン配下の中でも近接戦闘において最も強く、強力な生物兵器として運用され、前線突破や城壁破壊などに凄まじい威力を発揮した。



 しかし、いつしか争いが終わった。

 冥界の玉座に座る冥王サウロンが、傍らに控えるオログ=ハイに諭すように言う。

「オログよ、冥界には樵は要らぬ、妖精の森できこりとして暮らせ」

「ははぁっ、仰せのままにいたします」


「凶暴なオログ=ハイを厄介払いした。ハァハッハッハァァ……」(冥王後日談)



 平和な世界に成ったが、オログ=ハイはボッチだった。
 神族と巨人族は地上から居なくなっていた。
 獣と魔物以外は、ほとんど地上に見られない。
 妖精族もひっそりと隠れて暮らしている。

 生き残ったわずかなトロール達は知能が低く、汚く臭く獣の様に生きている。
 人族のように文化的な生活をして、話し相手になる友達が欲しい。

 オログ=ハイは毎日1人で食事をし、1人で森の木を伐り、1人で戦の残骸を片付けていた。


 綺麗になった古戦場の空き地に家を建て、畑を耕し家畜を飼った。
 食べた果物の種は、森に投げ捨てた。
 それは勝手に成木に育って実をつけていた。

 ある日、果物のニオイを辿って、ブリュンヒルデ様の愛馬グラーニが、やって来た。
 俺の話を理解してくれる賢い子だ。
 お嬢様は、呪いにより異界の森の中で、永遠の眠りに着いていると言う。
 灼熱の火の壁に遮られて、グラーニも近づけないらしい。

 家畜小屋の隣に、グラーニの厩舎を建ててやった。



 またある日、森の中から狼の遠吠えを聞いた。

 人族の家を窓から覗くと、お腹が大きく膨らんだ大狼が、ベッドに寝ている。
 俺の家のそばで悪さしてるだか?

 斧で首を切り落とし大きな腹を裂くと、なんと中からお婆さんと孫が出てきた。
 俺は人族を驚かさないように分体して小さくなり、荷馬車に乗せて町に連れて行った。


 町の広場に着くと、沢山の人族が集まっていた。
 これから大狼狩に行く所だったそうだ。

 俺は皆にとても感謝された。

「「「何かお礼を」」」
 と、言われたので

「俺ぁ樵だぁ、薪を買ってくれねえだかぁ?」
 と、頼んだ。


「それなら週に1回町に来て、広場で薪を売っておくれ。
 薪が売れ残ったら町で買い取るから、荷馬車一杯に積んで来てくれ。
 ただし値段は他の者と同じにしてくれ、それが町の決まりだから」

 町長が皆と相談してから、そう言った。

「わかっただぁ」


「いやぁ、薪は重くて運ぶのも伐るのも大変だから、ちょうど良かったなぁ」
 と、中年男が言った。

「戦で男手も少なく成ってるしねぇ」
 と、中年女が言った。

「重労働が少なく成って助かるなぁ」

 町民達は喜んだ。
 が、俺と距離を保ち、近づこうとはしなかった……。



 人族ともっと仲良くするには、どうすれば良いかなぁ。
 帰る途中で湖の精霊に聞いてみた。

「やさしく親切にする事、素直に話しを聞く事、否定しない事、我慢する事」

 はあぁ、湖の精霊は樵に親切なんだなぁ。
 この前も、湖に斧を落とした樵を助けてたしなぁ。
 今日は良い日だったなぁ。


 しかし、それからも人族の友達は出来なかった。

 1人で食事をして、1人で畑を耕して、1人で家畜の世話をして、1人で木を伐った。
 そして週に1度、町に薪を売りに行った。

 町で人族と話が出来るのが、とても嬉しかった。
 たまに材木の注文も受けた。
 重い材木や薪を家まで運んでやると、とても喜ばれた。
 町の者も少しづつ打解けて来たが、まだ友達としての会話は出来なかった。



 そんなある日、

 ドドオオオォォォンッ

 と、爆発音が聞こえて眩しくなり、空に2本の光の線が走る。
 そして、その光を追い駆けて行く、大きな獣が飛んで行くのが見えた。

 そちらへ向かって走って行くと、少し開けた所に若い男が倒れていた。
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